顔のない絵描き 4
この場所、絵描きがテントを張っている丘は、
少し星のにおいがする。
今日も少女ーーニコは、絵描きの元へと来た。ただ、なんとなく。
「ねえ、絵描きさん」
夕食の準備をしていた絵描きは手を止めて、振り返る。
「なんだい?ニコ」
「ーーーふつう、ってなんだろう」
それは少女の口から出た素朴な疑問だった。
おそらく、相手がこの絵描き、だから言えること。
「なんだ。今日は少し難しいことを聞くね、ニコ」
ふ、と顔のない絵描きは笑う。
「ぼくの考えだけど・・・」
絵描きは、文字をつづるように、そっと切り出す。
「人間も、鳥も、草花も、
皆、ふつうに生まれ、
ふつうに生きていくよ。
差なんて大して無い。
例えば人間でも、
計算や暗記がとびぬけて上手いひとも、
そういうことが下手でも、歌手として
美しい歌でみんなを共感させられる人もいる。
ひとりひとりが、なにかの、
できること できないことをもってる。
それだけなのさ。
それがーーーーふつう、だと思うな」
賢いニコはうんうんとうなづくこともせず、
絵描きの顔をじいっと見て、ただ、聞いていた。
それが、彼女の、できること。
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