教科書が決まらない皆様に(憲法、民法、刑法)
滝川沙希です。
今日は、新学期にもかかわらず、教科書が決まらない方のために、あまり知られていないテキストを紹介します。
司法協会とは
裁判所が職員の方に向けて行なう研修があるのですが、研修のテキストが出版されています。発行しているのが司法協会という団体です。
テキストは「裁判所職委員総合研修所監修」となっており、執筆者は明らかにされていませんが、裁判官と言われています。
基本的に判例通説に基づいた明瞭な文体が特徴となっています。
他方、すべての科目を網羅していません。また、出版されていてもかなり昔のものとなっていて、法改正に対応していない科目もあります。
今入手できるものは?
ネットで検索すれば分かることですが、せっかくですので入手するときの注意点と思われることをお示しします。
一つの科目に複数の本科出版されていることがあります。
★は、比較的薄い方の本、☆は厚い本を指します。
憲法
★憲法概説(再訂版):全132ページですべての範囲を網羅している。
すごく薄い本ですが、内容は高度です。一度勉強した方がおさらいに使用するとよいです。
この本だけでの理解も、まあできますが、高校の社会の教科書のようです。他にサブテキストがないと記述の意味をつかめないという・・・。
憲法の教科書として定番の芦部憲法を参考にして書かれているようです。
民法
★<新訂>民法概説(四訂版):全315ページで財産法を記述説明しています。民法は財産法だけでも4冊くらいになるのがザラですから、すごく薄い本です。事例で説明し、条文を頻繁に引用していて非常に教育的配慮があるようにおもいます。しかし、民法改正に対応していません。皆さんがこれから使用するのには、全くお勧めできません。改訂されるのを待ちましょう。
☆親族相続法講義案(七訂版):全372ページで家族法を記述説明しています。薄い本ではありますが、家族法としては厚いので☆としました。
家族法も改正されていますが、財産法に比べれば改正の対象も限定的です。ネットを使いながら改正点を調べておけば、十分使用に耐えられます。
各種届け出の様式(「出生届」などの見本のこと)が添付されています。
刑法
★刑法総論講義案(八訂版):全424ページで刑法総論を記述説明しています。やばいです。最新の議論は紹介されていませんが、司法試験にも耐えられます。団藤刑法を下敷きに執筆されているようです。
各論は載っていませんのでそこは別の書籍を使用する必要があります。司法協会は各論の本を単著としては出版していません。
☆刑法概説 (八訂版):全169ページで総論及び各論を記述説明しています。薄いですので、さすがに司法試験には不向きです。学部でも苦しいです。予習と復習にざっと読むという使い方があると思います。私は旅のお供にしていました。
まとめ
刑法総論は、学者本に劣らない分量で、内容も正確です。特にお勧めです。
なお、今回紹介した本については、すべて所有して目を通しています。