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愛憎芸 #11『味噌汁、Laura day romance、強めのパーマ』

 年末の帰省、その新幹線の車窓からの光景も3回目となった。窓から見えるゆりかもめも首都高速道路も、もう他人事ではなくなって仕事で当たり前に使う手段となっていた。タワーマンションを見るだけで麻生競馬場が思い浮かび、そこにも憂鬱があるということで、どこまでも人間は意思と感情の生き物であるということ、そしてそれこそが社会を形作り担保しているものだと再確認する。東京の好きなところn番目、日本社会の縮図であるところ。日本社会なんてほとんどクソですがクソはクソなりに煌めきますので、その輝きを最も近くで見ていたいから自分は東京にいるのではないか?京浜東北線に夕日が当たって綺麗だった。少なくとも今の景色は関西でどうやっても見ることはできなくて、その偶然すらも噛みしめて自分の日々を愛している。急速にバッドに入り、年末に急速に回復した情緒を象徴するように、今はあまりにも切り撮りたい景色が多い。

 「星野源のオールナイトニッポン」に料理研究家の土井善晴さんが出ていた。正直「なんか怖い人」という印象しかなかったのだけれどもとてつもなく惹かれてしまった。上品な大阪ことばから繰り出される生活の最も素朴な部分の革命。「自分の中にある秩序を守るために」毎日料理をすること。その料理も、味噌汁だけでいいということ。人生が通り過ぎる感覚に身を裂かれるような思いをしていたところに「人生の中でくさびを打っていく」行為。話すこと一つ一つが自分の中で革新的であり、自分の中で星野源、清水依与吏に肩を並べるくらいの存在になるかもしれない。

 そのラジオを聴いた日、帰って味噌汁を作った。いつもみたいに最初に顆粒だしを振って乾物を入れてからお湯を注いで味噌をとく、ではなくさきに野菜を切ってしまい、豚肉と一緒に鍋で炒める。そこに水を注いでから味噌をとくというやり方。つまるところすべて素材の味なのである。だいこん、しいたけ、もやし、あと何が入っていたか。すでにいい匂いがしてきていてこれは…と思っていて、いざ食べるととてつもなくおいしい。そしてなぜか電撃が走るような感覚。ああそうか、これは実家の味だ。母はほんだしを遣わなかったし、常に自分は素材の味を食べていた。それを一人暮らしを始めてからおおよそ2年、失い続けていたのである。その裏返しとして、たった今それを取り戻した――今年一番の感動が訪れたのである。味噌汁でビールが飲める、思わず母親に電話をする…今年一年ずっと自分を覆っていたバッドから真の意味で脱出したのはこのタイミングである。この日からなぜか夜ご飯のおともにビールを添えることが増えた。普通逆じゃないか?

 今年もクリスマスの時期にHomecomingsのイベントが開催され、渋谷クラブクアトロに初めて足を運んだ。ステージが近い!今年はデカいライブ(Mr.Childrenで日産スタジアム、TWICEとKing Gnuで東京ドームなど)が多かったのでウキウキ。来年はもっとライブハウスに行きたい。
 c/w Laura Day Romance。『happy end』を今年聴いて、ボーカルの井上花月さんがやっているPodcast番組『Call me if you need me』も聴いていたのでずっと観たかったバンド。そしてホムカミとの相性も満点!解釈一致!小説のような映画のような、情景が明らかにあるバンド。今一番いいですマジで。

 ホムカミの福富さんのMC。いつもにまして噛み噛みだったが、いつもにまして「恋人の有無、友人の有無」や「生き方は何を選んだっていいのだ」という話をしていた。次のアルバムはそういうテーマが軸になるらしい。前作が「環境の変化」という比較的牧歌的なテーマであったように思え、一方で「Cakes」や「Here」で歌われたのは前述したような価値観だった。優しさに関するメッセージをより強く発信しようとするHomecomingsに感謝。ずっと信じていたいバンドである。

 その日、いつもより強くとリクエストしてパーマを当てた。そしたらめちゃくちゃカールが強い。でも今までで一番、自分がしたい髪型だった。大学生のときもパーマを当てていたけれど、それともまた違う。もう会社員も3年目になり、いろいろ結果も出している。自分の好きに生きよう。誰かを傷つけることを厭わずに…過剰になるのはやめよう。置きに行った1年を学びにして、来年はより自分の思いを率直にかなえられる1年にしたいなと思います。

※年末なのもあって月曜更新を飛ばしました。B'zにならって年末年始は休みます。次回は1/11更新を予定してます。

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