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愛憎芸 #16 『磯丸水産の付き出し小魚を生で食べる人たち』

 世界の終末を餃子を焼きながら迎える人もいるかもしれないという話をするカップルの短編小説を書けかけてやめた。その人にとっての終末を、戦争によってほんとうに一瞬で迎える場合があるご時世にそんな平和ボケしたこと書けない。SFのつもりで書いていたが自らの平和ボケを自覚し自己嫌悪に陥った。ラジオやMCバトル、そして今回の草稿のように、頭の中から最初に出てきた言葉というのは今その人がおかれている状況を晒し出してしまう。毎朝新聞を読むようになり情勢に心を傷めている、それでも根本では平和ボケしている、他人事だと思ってしまっている。大豆田とわ子の「戦争より嫌い!」を思い出す。2021年だから書けたセリフ。本当にそうだろうか。考えることをやめない。

 わたしの日常。今年も花粉の季節がやってきて、耳鼻科医に強めの薬が欲しい旨をきちんと伝えることができた。噴霧薬であるアラミストを鼻に通すとステロイドに対する反応なのか、しばらくクシャミが出たり鼻水が垂れてきたりする。そして1時間ほど経つとそれらがピタリと止み、飲み薬と一緒に作用してくれる。花粉症、まことに病気である。今年の冬はひたすら味噌汁を食べたからひょっとすると腸内環境が良くなってマシになるのではないかと思った(※大学受験を控えた冬、我が家の晩飯は何故か毎晩何かしらの鍋になり、意せずとも腸内環境が整いその年だけ花粉症を発症しなかったということがあったのだ)。しかしながら今年は全くそんなことはなく、容赦なく花粉シーズンが私を襲っている。春を楽しめた試しがないが親知らずを抜いた時にロキソニンを飲みまくった結果、薬の効果というものを多少なりとも信じられるようになったので、用法・用量を守れば少し気が楽だ。

Laura day romanceとスカートの2マン。

 この愛憎芸でも何度も推しているLaura day romanceのライブに行ってきた。今回も2マンで、しかも昨年夏に行われる予定だった公演の振替ということで当時予定していたであろうセットリストだった。当時リリースしてから3ヶ月ほど経っていたアルバム曲+当時出たばかりの新曲『tender icecream』。なんてクールなんだろう。ローラは学年が被っていて、とても魅了されているけれど創作者として足元に及ばないことを毎度思い知らされ唇を噛む。今回は『winona rider』が特に良かった。それと、下北沢ベースメントバーの音響、小さいハコでは過去最高に良かった。ローラは歌詞が良いのだけれど小さい箱ではどうしても声が演奏に潰されてしまう、しかし花月さんの歌声がきちんと響いているのだ!これなら小さいハコに通うのもいいな。そもそも人生で初めて下北沢でライブを観たということを書いている今気づいた。ローラがこの規模でライブをやってくれるうちにたくさん足を運んでおきたい。

 京都から大好きな友達がやってきていて、友達の夜行バスが秋葉原発だったのでオシャレは諦めて磯丸水産に入った。磯丸水産では付き出しで煮干しやせんべいなどが出てくる。煮干しをそのまま食べるとシャリッとした感覚があり、そうか冷凍なんだあと2人でボリボリ食う。後から来た店員さんがさらりと「火つけますね」と言ってコンロに火をかける。私たちは炙るタイプの付き出しを直喰いしていた。ツッコミの不在である。彼女と会うといつも、何かしらアホなことを2人で一緒にやっていてボケとボケをしている気がする。

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 コーヒーが2杯飲みたいのならば2回コーヒーを淹れればいい。コーヒーを飲み干すことを恐れていつの間にかそれが冷えてしまうことを繰り返していた時期があったが、そんなことをするくらいならとっとと飲んでしまって、もう一度たてなおせばいい。たった3分半を推しみたくなくなった。今はそんな気分。

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