なぜ既存企業は失墜する?『イノベーターのジレンマ』を読み解いてみた
スタートアップ立ち上げ中、
東工大修士1年の滝本です。
今回は、ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセンによって書かれた「顧客の力、戦略的投資、そして大手企業の失敗」(1993)という論文から『イノベーターのジレンマ』について読み解きます。
偉大な企業がイノベーションを起こせずに没落する理由とそれが起こる状況について述べられたことで有名です。
この論文は、当時の社会に大きなインパクトを残し、今なお関心が続いており、議論が行われているきっかけとなったものです。
一方で、沢山の批判を浴びてきた事実もあります。
ですが、この基礎的発想はとても面白く、
企業や生活に示唆を与えてくれるでしょう。
企業や個人は、このメカニズムを理解することでジレンマから逃れる手を模索することができるという選択肢を手に入れることができます。
この記事では、重要なファクターを抜粋して、読み解いていこうと思います。最後まで読んでいただけたら光栄です。
イノベーターのジレンマとは?
強固な財政基盤を持ち、顧客の声に敏感で、
技術的能力に優れ、合理的に運営されている企業が、重要な新技術の採用や重要な市場への参入において、失敗する例が沢山あります。
つまりかつての偉大な企業がイノベーションを起こせずに没落することがイノベーターのジレンマです。
しかし、完璧であると思われる偉大な企業が、
なぜ、イノベーションを起こせないのでしょうか。
失敗の原因はどこにある?
技術の変化によってイノベーションが起きる場合もありますが、
結論、技術そのものとイノベーションはほとんど無関係です。
つまり、企業の持つスキルや経験と比較して、
企業がイノベーションを起こせるかという点において、
その技術がどれほど目新しくディープな技術であるかということとはほとんど関係がないと言うことです。
むしろ、
と述べられています。
これは、顧客の声に耳を傾けろと言われがちの
現代においても衝撃的ですね。
基本的に大企業がイノベーションに成功または失敗するかは、
その企業の資源配分の仕組みに大きく影響されます。
ほとんどの新しい試みは、人的資源と資金を必要とするので、
資源配分の影響が強いんです。
こうしたことから、大企業の新規事業は、
社内の競合するイノベーション提案の間で資源が配分され、
その動向によって、実行する事業が決まっているのです。
この意思決定プロセスこそが、失敗の原因である
「顧客の声に忠実に耳を傾けすぎること」
に密接に関係してくるのです。
つまり、すでに成功している企業の資源配分のプロセスは、
既存市場の現在の顧客が確実に求めるとわかっている投資を行うようになっていることが、失墜の原因となってきます。
ここで、企業が資源配分する技術変化の種類には、
の2種類があります。
「持続的」と「破壊的」な技術変化
持続的な技術変化とは?
持続的な技術変化とは、業界における従来の製品の性能向上を維持するための技術変化のことです。
例えば、appleがiphoneの性能を良くするとかがわかりやすいですね。
iphone13から14などがとても想像しやすいですね笑
破壊的な技術変化とは?
破壊的な技術変化とは、従来の性能向上曲線(持続的な技術変化)を破壊する、または性能を再定義するような技術変化のことです。
有線イヤホンが無線イヤホンになったこととかが例としてイメージしやすいですね。
持続的vs破壊的
上の図でもあるように、以前からある市場で製品の持続的開発は進み、性能を良くしていく技術変化が起きていきます。
しかし、顧客が求めているニーズをある時から超えていき、過剰品質となっていきます(言い方は悪いが、無駄)
そこで、ある時、品質は低いものの破壊的技術が発生し、技術変化とともに、より多くの顧客のニーズを捉えた市場へと変化していきます。
これが市場破壊であり、イノベーションとなります。
なぜ、大企業は破壊的なイノベーションを起こせない?
ですが、ここで大きな矛盾が発生します!
「性能が低いのなら、既存企業が作れるじゃん!」
という矛盾です。
この点は、その通りです。
大企業からすれば、技術力的に言うと簡単に作れてしまいます。
だから、大企業が失墜する理由は、技術力の課題によるものではないんです。
大企業の内部では、マーケットがまだ大きくない破壊的技術に対しての提案はあるものの、
「そんな小さいマーケットで何ができるんだ」
と却下され、戦略に落とし込まれないことが多々あります。
今あるリソースにどうしても依存してしまいます。
主要な問題は、企業の戦略であり、テクノロジーではないのです。
それでは、大企業が失墜の道を歩まないようにするためには、
どうすればいいのでしょうか。
この点について考えていきます。
イノベーターの生存戦略
筆者は、イノベーターが失墜しないようにするための戦略として、
ということを述べています。
つまり、既存のリソース・顧客のニーズに引っ張られないため、
組織ごと分けてしまうということです。
こうすることで、持続的イノベーションと破壊的イノベーションを区別し、
リソースへの強力な依存から、独立した組織を逃がす役割があります。
スピンオフ・スピンアウトですね。
このように、イノベーターのジレンマのメカニズムを理解し、
スピンオフ・スピンアウト(組織の分割)を行うことが、
イノベーターの生存戦略となっていくでしょう。
終わりに
長くなりましたが、お読みいただいた方、ありがとうございました。
今回述べた内容はあくまで私個人の見解ですので、「ここは違うんじゃない?」というご意見などあれば、コメントつけていただけたら嬉しいです。
企業経営の最大のテーマの1つが自己革新できるのかどうか?だと思います。
自己変革をするためには、メカニズムを理解することが必要不可欠です。
メカニズムを理解することで、自社と照らし合わせて、ここに課題があるんじゃないかとか、客観的に判断できる仕組みを取れることができると思います。
また、破壊的技術に対して、市場を感知し、社内に情報を流通させ捕捉、そして、脅威や機会を管理して変革していく。この一連の流れができる企業が、目まぐるしい早さで変化する現代において、持続可能な価値を保ち続ける方法だと私は考えます。(先日説明したダイナミック・ケイパビリティ)
重ねて、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。他の投稿でも起業、アントレプレナーシップについて学んだことを発信していますので、ご覧ください!