深夜のボロネーゼ
ボロネーゼは、深夜に一人で、ラーメンみたいにすすって食べるのが好きだ。誰も知らなくて、何も残らないような時間を過ごしている気がするから。そして毎回、食べたらすぐに布団に潜って眠る。次の日にはこんなこと、ほとんど忘れている。
今日は沢山働いた。こんなに働いた日を、この1年では思い出せない。きっと3年ぶりくらいか。いや、100万年ぶりかもしれない。恐らくそうだ。
にんにくの香りは、疲れた身体を労ってくれる。身体のどこか奥の方に、静かに火を灯してくれているような感じだ。明日自分に必要なエンジンを作るために。ひどい生理痛で、だるくて、気持ち悪くて、布団にくっついていないといられないような身体でも、炒めている時に広がるにんにくの香りは、体を起こしてくれるんだって。昔の彼女が言っていた。
その子のことも元気かなあなんてもう思わなくなっちゃったよな。名前はなんだったっけ。でも、にんにくを炒める時、いつも思い出すんだよなあ。ボロネーゼも、彼女と一緒に食べたんだろうか。
今日のトマトは、あんまり調子がよくないようだ。時期じゃないからか。何故かは知らないけど、俺はホールトマトを買ったことがない。一人で静かに食べていると、野菜の声を聞いてやりたくなるのかもしれない。もう、今の時期に無理して作んなって、今日のトマトは言っている。そうか、そうか。でもこの夜をありがとう。
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