存在しないシャニマスのコミュを書く
私はたまに、シャニマスの存在しないコミュを書いています。
………
わかるように言うと、「コミュと同じ体裁のテキストで二次創作をやっている」ということです。
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実際やってみての感想としては、地の文が使えないという制約がかなりツラい。これは世にあるスマホゲーの多くが抱えている縛りだとは思いますが。
まあ、単に二次創作をやるだけなら「コミュと同じ形式にする」という制約を捨てればいいのだけど、あえてそうしないでいる。制約をかけることで気づくこと、考えることがあるからだ。
実際のシャニマスには立ち絵や場面転換のコントロールがあるし、なによりフルボイスなので表現の幅はむしろ広い。演出的には非常にリッチなゲームだ。
ただ、開発現場でもテキストのみでお話を組むプロセスがあるはずで、そこではかなり細かくト書きをやっているんだろうな……と思う。
それか直でスクリプト打ってるかですが、監修とリテイク考えると現実的ではないな~。
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私が「ないコミュ」を書くときは、もう一つ制約を課している。コミュの登場人物とお題を生成する診断メーカーを使うことだ。というか、このメーカーを知ったことがそもそも書き始めたきっかけである。
これを使うとこのようなお題が出る。
甘奈と咲耶!? それで「レポート」!?
こういったまったくランダムなお題は面白い。頭の中でシチュエーションを考えてみるだけでも楽しいし、新しい発見がある。実際にアウトプットするのはかなり大変ですが。
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ここからは、実際にやってみた事例を紹介しよう。
【お題】
・幽谷霧子
・和泉愛依
・樋口円香
から2人選んで
「宇宙」
の要素があるコミュを書きます。
少し考えて、霧子さんと樋口さんで書こうと思った。樋口さんを書いてみることに挑戦したかったのと、霧子さんに相対したときの彼女の心情を想像することが楽しかったので。
「宇宙」というお題の処理は「UFO」にしようと思った。霧子さんは非常にミステリアスな人物で、「宇宙人」的である、というのを最初に思いついたからだ。283プロの面々からすればノクチルの4人が宇宙人のようなものである、というのもある。
が、先日、浅倉透のsSSR【ハウ・アー・UFO】が出てしまった。このカード名でUFOが関係ないわけがない。いや~~~!
当時はまだまだ書いている途中だったので、かなり焦った。引き当ててコミュを読んでそれをもとに書き直すべきか悩んだが、開き直って慌てて書き上げた。どうせ引けないし。なので、そこと矛盾がある可能性は大いにある。
一番の難題だったのは霧子さんの口調だ。彼女がどういった話し方をするのか漠然としたイメージはあったが、それが樋口さんと相対したときどうなるのか、そうでなくても普段どう喋っていたか…………考えると案外イメージがまとまらない。そもそもこの思い出している記憶は本編のものだったか、Twitterで見た漫画だったか…………そうした混乱があって、具体的に形にするのはかなり難しかった。霧子さんの掴みどころのなさは重々承知していたつもりでしたが、それを再認させられた心地…………。
また、樋口さんを書くにあたってどうしても導入で浅倉さんの力を借りたく、浅倉さんを出すという若干のルール違反もしている。天塵とアジェンダを受けて、ノクチルの他のメンバーを出さずにノクチルの空気感を出すのがどうしても難しく感じたからだ。
二次創作は、自分がこのキャラのこういうシチュエーションを見たいのだ、とするものを出力するものだと思っていた。しかし、私の場合はこうした思考を巡らせることに「二次創作の楽しさ」を感じているところが大きい。二次創作には好きなコンテンツを自分の中で反芻する楽しみもあるのだなと知った。
自分はあんまりこのキャラのことわかってないんだな、とか、このキャラはこういう描写のされ方をしていたんだな、とか、そういうことを考えるのが楽しい。みんなもぜひやってみてください。
以下は実際に書いたものになります。暇な方は読んでみてくださいね。それでは。
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『アブダクション』
[回想]
透:
宇宙人って、ほんとうにいるのかな
円香:
知らない
見たことないし
透:
じゃあ、UFOは?
円香:
知らない
同じようなものでしょ
透:
そっか。
UFOってさ、なんか……さらっていくじゃん。
牛とか、人とか。あと……小麦?
円香:
……まあ、聞いたことはあるけど
透:
樋口はUFOにさらわれたら、どうする?
円香:
は?
……どうしようもないんじゃない
透:
どうしようもあるとして
円香:
逃げられたら逃げる
透:
ふーん……
円香:
そういう浅倉は?
透:
うーん……わからん。
でも、1回さらわれてみたいかも
円香:
なんで?
透:
会ってみたいし、宇宙人
あと、宇宙とか見れるし、多分
円香:
……じゃあ、浅倉がさらわれても置いてくから
透:
えー。
◆
[事務所・昼]
円香:
………………
テレビの音:
『昨晩未明、各地の空で謎の光る物体が様子が目撃されました』
円香:
(この事務所には、いろいろな人がいる)
テレビの音:
『SNS上では目撃者による投稿と、それに対する様々な意見が相次いでいます』
円香:
(まっすぐに努力して、きらきら光っている人とか)
(他にない魅力を発揮して、その姿を焼き付ける人とか)
(見る人の心を暖かくするような、優しさを見せる人とか)
テレビの音:
『SNS上では、目撃者による投稿に対し、様々な意見が寄せられています』
円香:
(誰も彼もが──私たちとは違う世界の人に見えてきて)
(……わからない)
テレビの音:
『隕石? 人工衛星? はたまたUFO? この物体が何かは未だ明らかになっておりません──』
円香:
──……
…………宇宙人にさらわれた、みたいな気分
[事務所前・昼]
円香:
あっつ……
円香:
……スムースウォーターでいいか
[ドラッグストア・店内]
<霧子の姿が見える>
円香:
──…………
円香:
(アンティーカの……)
(……声をかけないのも、変かな)
霧子:
……あっ
円香:
あ……
……どうも、お疲れさまです
霧子:
こ、こんにちは……円香ちゃん
円香:
それ、包帯?
霧子:
あ……うん。ちょうど、切らしちゃってたから……
円香:
……。
……その包帯って、いつも巻いてるやつ?
霧子:
う、うん……
その……ケガしてるわけじゃないんだけど……
円香:
ふうん……
霧子:
え、えっと……
……円香ちゃんも……巻いてみる……?
円香:
えっ?
霧子:
あ……う、ううん……!
包帯……巻くと安心する……から……
円香:
お守りみたいな?
霧子:
うん……お守り……みたいなもの……かな……?
円香:
……そう
大丈夫、間に合ってるから。
ありがとう
円香:
(なんで笑ってるの、私)
(……なにを、感謝してるの)
霧子:
うん……どういたしまして……
樋口さんは……今から事務所……?
円香:
うん、打ち合わせの後レッスン。
霧子:
そっか……ふぁいとー……ですっ……♪
ふふっ……
それじゃあ……またね……?
円香:
はい、また。
……お疲れさまです。
<霧子が去る>
円香:
……どこ行くんだろ、あの子。
円香:
(何を考えているかわからない)
(まるで、私とは違う星から来た人みたいで)
(それでも、言葉は通じていて)
円香:
はぁ……。
円香:
(……でも、何か届かない感じ)
《スマホのタップ音》
円香:
「包帯 巻き方」……
《スマホのタップ音》
<目を閉じて、首を振る>
円香:
…………
円香:
……わからなくてもいいか。
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