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【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・1

 僕がかっちゃんの家に行くのは、雨の日が多かった。雨の日は友達がまっすぐに家に帰るので遊べないし、僕の両親は共働きで製糸工場を経営していて、家にいてもつまらないからだった。

「悠馬はいつでも来てええよ。いつでも来んでもええよ」
 と、かっちゃんは言ってくれていたし、僕もそれに甘えて、寂しいときだけかっちゃんの家に行っていた。

 かっちゃんの家は、普通の家とはちょっと違う。家は広い一部屋で、土間敷、つまり床が土なんだ。屋根はトタンで、雨が降るとすごい音がする。ばらばらばらばらって。

 倉庫に小さいキッチンとトイレがついているようなもので、ひとの住む部屋にはちょっと見えない。それでもかっちゃんは、その部屋をとてもきれいにしていた。物がなかったのかもしれない。

 一畳の畳を敷いて、そこに布団と枕を置いて、そこで寝起きしているようだった。

 雨が降ると、かっちゃんは割れた茶碗なんかをそこそこに置いた。トタンに落ちる雨の轟音を割って、茶碗に落ちる雨漏りの水がいろいろ愉快な音色を立てて、それが楽しかった。

 ころりん、からりん、からころりん。

 かっちゃんは僕が生まれる前から居て、物心つくころには大人だった。三十歳は悠に超えていたと思う。僕が知る限り、かっちゃんは仕事をしていなかった。テレビもない、本もない部屋だったけど、ラジオだけはあった。

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