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短編小説

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一話完結から、三話くらいまでの短めの小説を集めています。
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#創作大賞2024

【短編小説】命ある限り踊り続ける勇気と希望

 さっきまでうっとうしいぐらいに強い日差しが降り注いでいたのに、急に暗い雲が立ち込めてき…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
23

【(やや)短編小説】マリッジブルー・後編

 この場で連絡先を交換し、ふたりは急速に仲良くなった。そしてある冬の日、みちるはいろいろ…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
18

【(やや)短編小説】マリッジブルー・前編

 五月の曇りなき空に、色とりどりの花が舞う。ここは瀬戸内のガーデンフレンチレストラン。「…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
15

【短編小説】お詫び

 おしゃれな洋服や雑貨がひしめく巨大ショッピングモール。その片隅のカフェに座ってコーヒー…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
53

【短編小説】仮装

 星祭りの日の午後は、ジゼルは支度に忙しい。首から上と手首から先を真っ白に塗り、右目の周…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
17

【短編小説】クロール

 幼い頃、クロールはサメに襲われたときに逃げるために覚えるのだと教わった。平泳ぎは遭難し…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
26

【短編小説】夏の終わり、道の始まり

 心地よい夢をみていた。  胸につかえていたなにかが、すっきりと洗い流されるような、ほっと、こころの底に灯がともったような、そんな夢だった。  ふと目を覚ましたとき、健吉は列車のボックス席に、ひとりで座っていた。  開襟の半そでシャツに半ズボン、裸足の足には下駄を履いて、尋常小学校の紋章の入った黒い帽子をかぶり、布製の鞄をたすき掛けにして座っていた。  いつもの通り。いつもの通りの恰好。  むしろ想定外なのは、列車に乗っていることのほうだった。健吉は、そもそも列車に乗ったと

【短編小説】 窓

 私の母は、私がまだ小学校にあがらないうちに亡くなってしまったから、母との記憶は数えるほ…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
4

【短編小説】永遠に夕暮れの星

 酔っぱらってとっ散らかって、地面と空が入れ違えるようなそんな夜に、私は初めて灯里に出会…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
15

【短編小説】 鯉

 横瀬はもう小一時間も松本の話を聞いている。金色のヘリの畳の敷かれた、料亭のごとき日本家…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
11

【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・6(最終話)

 かっちゃんが死んだのは、それから二週間と経たない頃だった。かっちゃんは土間にうつ伏せに…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
21

【短編小説】 耳

高校生のとき初めてできた彼氏は、横顔が綺麗だねと言ってくれた。私たちは誰もいない教室の窓…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
42

【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・5

 事件が起こったのはそのあとだった。かっちゃんより少し前に男湯を出た僕は、フルーツ牛乳を…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
23

【短編小説】ハーモニー

 和江お姉さんは相対音感というやつをもっているようだ。 お姉さんはどんな音階に対しても、瞬時にハモることができるのだ。 だから私は毎日でたらめな歌を歌っている。 でたらめなメロディーを何回か歌っていると、和江お姉さんがそこにハモってくることになる。 そんな遊びを、もう10年以上もやっている気がする。 いつも、ホテルの部屋のなかで。 黒いワンピースに白いエプロンという揃いの衣装で。 ふたりでベッドカバーを替えながら、掃除機をかけたり、拭き掃除をしたり、タオルを替えたり、アメニ