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短編小説

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一話完結から、三話くらいまでの短めの小説を集めています。
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2024年7月の記事一覧

【短編小説】カルチャーセンター

 弁蔵のやつは、丘の上のカルチャーセンターとやらに行き出してから、妙に色気づいて癪に障る…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
24

【短編小説・二話完結】橘めるるの憂鬱・2

 今日は週に一度の本社当番の日である。本社に提出する書類を持って車で向かい、持って帰るも…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
20

【短編小説・二話完結】橘めるるの憂鬱・1

 橘めるるは憂鬱である。朝六時半に目覚ましで起きると、いつものように男友達からラインが入…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
27

【短編小説】命ある限り踊り続ける勇気と希望

 さっきまでうっとうしいぐらいに強い日差しが降り注いでいたのに、急に暗い雲が立ち込めてき…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
23

【(やや)短編小説】マリッジブルー・後編

 この場で連絡先を交換し、ふたりは急速に仲良くなった。そしてある冬の日、みちるはいろいろ…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
18

【(やや)短編小説】マリッジブルー・前編

 五月の曇りなき空に、色とりどりの花が舞う。ここは瀬戸内のガーデンフレンチレストラン。「…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
15

【短編小説】お詫び

 おしゃれな洋服や雑貨がひしめく巨大ショッピングモール。その片隅のカフェに座ってコーヒーをすすりながら、飯尾健次郎は十回目くらいのあくびをした。  こんなにつまらない場所もほかにないと、健次郎は思う。妻と娘が購入した商品たちを、椅子に乗せて見張りながら、男と女の間には深くて長い川が流れていると思う。すべての店に目を通したわけではないが、このショッピングモールに健次郎の欲しいものがあるとも思えない。  なのにどうやら妻と娘にとっては、いくら見ても見飽きない、宝の山のような場

【短編小説】仮装

 星祭りの日の午後は、ジゼルは支度に忙しい。首から上と手首から先を真っ白に塗り、右目の周…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
17

【短編小説】クロール

 幼い頃、クロールはサメに襲われたときに逃げるために覚えるのだと教わった。平泳ぎは遭難し…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
26

【短編小説】夏の終わり、道の始まり

 心地よい夢をみていた。  胸につかえていたなにかが、すっきりと洗い流されるような、ほっ…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
13

【短編小説】 窓

 私の母は、私がまだ小学校にあがらないうちに亡くなってしまったから、母との記憶は数えるほ…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
4

【短編小説】永遠に夕暮れの星

 酔っぱらってとっ散らかって、地面と空が入れ違えるようなそんな夜に、私は初めて灯里に出会…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
15

【短編小説】 鯉

 横瀬はもう小一時間も松本の話を聞いている。金色のヘリの畳の敷かれた、料亭のごとき日本家…

秋ノ宮 陽菜
7か月前
11

【(わりと)短編小説】ほらふきかっちゃん・6(最終話)

 かっちゃんが死んだのは、それから二週間と経たない頃だった。かっちゃんは土間にうつ伏せになったまま、ひとり静かに死んでいた。死後、三日ぐらい経っていたという。訪ねていった母ちゃんが見つけた。苦しんだあともなく、安らかな寝顔のようで、死んでいるのに初めは気が付かなかった、と母ちゃんは言った。 「おそらく心臓でしょう」  と医者は言った。 「勝治は心臓が悪かったからね。あんたのせいじゃないよ、悠馬。そんなに泣かんでいい」  と母ちゃんは言い 「こんだけ悠馬に泣いてもらったら、