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盛田昭夫 『21世紀へ』(017)




盛田昭夫 『21世紀へ』(017)

「試験」について、盛田さんが力説している個所があります。

京セラの創業者で名経営者の稲盛和夫さんが、編み出した「成功の方程式」に共通する点があります。

成功の方程式 = 考え方 × 能力 × 熱意

能力と熱意は、0~+100まであります。
ところが、考え方には-100から+100まであります。

3つの項目は掛け算ですから、考え方が間違っていると、全体はマイナスになってしまいます。

しかも、厄介なことに能力も熱意も大いにあるが、考え方が間違っている人は、全体では大きなマイナスになってしまうのです。

この方程式を常に、考えていないといけません。

『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック

目次

はじめに

第1章 経営の原則

第2章 人材の条件

第3章 マーケットの創造

第4章 国際化への試練

第5章 経済活性化の原理

第6章 日米関係への提言

第7章 変革への勇気

第8章 日本国家への期待

第9章 新世界経済秩序の構築

あとがき




第2章 人材の条件

「新入社員への手紙」(1967年)から


何をやったら会社にいちばん役立つか—―これをいつでも考え、それを実行することが、会社のために本当に戦力として役立つことになるのだ

 社員の一人一人が、その得意の分野で最大限に能力を活かしてこそ、その会社が競争に勝ち抜けるのだ。

 だから、会社自体が得意の分野を自ら知らねばならぬと同じように、社員の一人一人も、自分の得意の分野を知らねばならない。何をやったら会社にいちばん役立つか—―これをいつでも考え、それを実行することが、会社のために本当に戦力として役立つことになるのだ。君はいま一度、何がやれるのか自分で考えてみるべきだろう。

21世紀へ 盛田昭夫 049 p. 83 



会社では毎日毎日が試験の連続なんだ。競争会社との「競争」ほど、厳しい採点者はいないものだ。これから毎日毎日、君はそういう試験に直面して、競争相手の非常に厳しい採点を受けていかねばならない

 会社の生活といままでの学校生活との大きな違いを君にいいたい。学校を出て、もう試験はないとホッとしているかもしれないが、とんでもない。会社では毎日毎日が試験の連続なんだ。そのうえ、学校の試験では、いくらできなくても――たとえ白紙で出しても零点であり、逆にいくらできても満点である。満点が100点であれば、100点以上の点数はくれない。

 ところが会社の試験はそうではない。できが悪いとマイナス点になる。ときにそれはマイナス1000点、マイナス1万点にもなるだろう。

 この試験の採点者は誰だろう。課長だろうか、それとも社長だろうか。いや、それは競争会社なのである。競争会社との「競争」ほど、厳しい採点者はいないものだ。これから毎日毎日、君はそういう試験に直面して、競争相手の非常に厳しい採点を受けていかねばならない。君ばかりではない。君の会社の社長をはじめとして、全社員が毎日試験を受けているのである。われわれ会社で働く者は、本当に一分、一秒もおろそかにできないことを自覚してもらいたい。

21世紀へ 盛田昭夫 050 pp. 83-84 



こういうものをつくりなさい、ああいうものをつくってほしいと、いろいろいってくれる人がいたとしても、聞いた後でその人のいうものをやったのでは競争に勝てない

 私たちが会社を始めたとき、うちの会社をどうしてやっていくべきか、教えてくれた人は全然いなかった。私たち一人一人が毎日毎日、われわれの会社をどうやっていくか、必死になって考えてきた。いまも私たちに、この会社の今後はこうあるべきだ、こういうものをつくりなさいと教えてくれる人は誰もいない。

 こういうものをつくりなさい、ああいうものをつくってほしいと、いろいろいってくれる人がいたとしても、聞いた後でその人のいうものをやったのでは競争に勝てない。来年何をつくるか、その次には何をつくるかということは、われわれ自身の知恵で考えていかねばならないのである。

21世紀へ 盛田昭夫 051 p. 84 



盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田さんが、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという悲痛な気持ちが伝わってくる本です。

盛田さんの「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることの多くが当たっています。
盛田さんの慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

本書をアマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられることでしょう。


🔴「会社では毎日毎日が試験の連続なんだ。競争会社との「競争」ほど、厳しい採点者はいないものだ。これから毎日毎日、君はそういう試験に直面して、競争相手の非常に厳しい採点を受けていかねばならない」

この言葉は当たり前のことを指摘しているに過ぎないと思われがちですが、社員は周囲の同僚や上司、部署内といった限られた範囲でしか考えなくなる傾向があります。

ちなみに、競争会社とは、競合他社のことです。

部署同士の競争にしてもそれは社内での話です。真の競争者は社外に、もっと視野を広げれば海外にもいます。

そこまで考えて仕事をしている人たちがどれだけいるでしょうか?
もしいたとすれば、その人たちは会社を移っても堂々とやっていける、と私は確信しています。



盛田さんは、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンでもありました。表現がダサい? 古い?



⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。

ここ数十年で業態を変えてきたことは、世の中の変化に素早く対応できることを示しています。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで9年前(2014-07-21 22:32:45)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1  



ソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元



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藤巻 隆
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