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女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 2023.03.13 3/3



日経ビジネスの特集記事 81

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 2023.03.13 3/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

CONTENTS

PART 1 賃金格差解消で消費13兆円増 非正規にも賃上げドミノ 女性なくして成長なし 

PART 2 女性の収入増を阻む昭和モデル 103万円の壁はいらない 性別役割分業と決別を

PART 3 コロナ禍が広げた雇用均等の地平 崩れる「出社=出世」女は実力主義で輝く

RANKING 商社・外資系が年収上位独占

PART 4 スタートアップも男性優位社会 資金調達に「出産の壁」 突き破れ、女性起業家



第3回は

RANKING 商社・外資系が年収上位独占

PART 4 スタートアップも男性優位社会 資金調達に「出産の壁」 突き破れ、女性起業家


を取り上げます。


今週の特集記事のテーマは

人手不足や物価高で、じり貧だった日本の賃金が上向いてきた。賃上げのうねりを起こすカギを握るのは女性だ。日本では男女間に歴然たる賃金格差が存在し、女性は“安い労働力”となってきた。だが、政府はその元凶とされる「年収の壁」の見直しに動く。柔軟な働き方で女性の昇進を促す企業も増えてきた。優秀な女性起業家を支援する輪も広がる。女性が日本を再成長に導く日も近い。
(『日経ビジネス』 2023.03.13 号 P. 010)

です。


RANKING 商社・外資系が年収上位独占


女性の年収をランキングしたところ、総合商社や外資系企業が上位を占めた。男女賃金格差の開示も迫り、日本企業は一段とシビアな目線にさらされそうだ。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 

2023.03.13 p. 028 


「2023年3月期からの有価証券報告書に「男女の賃金格差」についての開示が義務付けられ」(p. 28)ることになり、自社の経営を見直す機会となってきました。

次の図表をご覧ください。これは女性の年収ランキングです。
5大商社の内、伊藤忠商事を除く4商社が上位にランクインしていることが分かります。

ただし、年齢に応じた年収推移のランキングを見ますと様変わりします。
外資系企業が上位を占めています。

注:社員口コミサイト「OpenWork」に
投稿された正社員による
会社評価レポート
のうち、女性について一定数の
年収データを
持つ約520社、約3万3000人を
対象データとして調査した。
データは2023年2月時点。
平均値ではなく独自のアルゴリズム
で各年齢時の年収を推定。
年収推移ランキングは
25歳/30歳/35歳/40歳の
全ての年齢で推定が可能だった
企業からランキングを作成した
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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13


女性の年収ランキングと年齢に応じた年収推移を見比べてみて、どちらにもトップ3までにランクインしているのは、日本マイクロソフトだけです。

日本マイクロソフトは年収ランキングでは3位で、年齢に応じた年収推移では1位です。

もう少し順位を広げて見ると、どちらにもトップ10までにランクインしているのは、野村総合研究所と電通、P&Gジャパン、デロイトトーマツコンサルティングの4社です。

🔴日本マイクロソフトのケース

1位の日本マイクロソフトは2月に初の女性トップとして津坂美樹社長が就任。常務や執行役員などの経営執行チームの3割程度が女性だ。給与が20代から高く、その後も安定して昇給するようだ。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 

2023.03.13 p. 029 

課題

オープンワークによれば、25歳から40歳にかけて公平に評価され続けたとしても、「一部の生命保険会社の営業職などでは年収がダウンするケースもある」という。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 029


🔴海外の事例 米アドビのケース

海外では米アドビが性別だけでなく人種も含めた賃金の平等に動く。日本は主要7カ国(G7)で男女の賃金格差が最大で、この是正に取り組まない限り、優秀な女性がどんどん海外に流出しかねない。日本企業は、女性が「力を発揮できそうだ」と思える制度設計や風土の醸成にもっと力を入れる必要がありそうだ。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 029


PART 4 スタートアップも男性優位社会 資金調達に「出産の壁」 突き破れ、女性起業家


スタートアップの世界にも、性別を成長の妨げにされてしまう「ガラスの天井」がある。成長資金の出し手は男社会で、妊娠・出産を投資リスクと捉えるケースも残っている。優秀な女性経営者を埋もれさせない──。支援の輪が広がり始めた。

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2023.03.13 p. 030


🔴SHEのケース

女性のキャリア支援を手掛けるSHE(東京・港)の福田恵里CEO(最高経営責任者)は、直近5年で約25億円の資金を調達した経緯を振り返る。スタートアップは創業後の成長ステージとして「シード」から「アーリー」「ミドル」へと向かう。いかに自社の経営状況と将来性を伝えてVCを巻き込み、投資マネーを確保できるかが勝負の分かれ目となる。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 030


資金調達には、大きく分けて3つあります。
①銀行借り入れ、②ベンチャーキャピタルおよびエンジェル投資家からの出資(投資)、③IPO(新規株式公開)つまり上場し、資金を得る、です。


女性のリスキリングを促す
SHEの福田恵里CEOは、
エンジェル投資家、CVC、VC
との流れで資金調達先を拡大。
成長の壁を乗り越えてきた
(写真=伊藤 菜々子)
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年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


リクルートから独立し、17年に26歳で創業。女性向けのリスキリング教室やオンライン講座は人気を博し、世界50カ国以上から受講してもらえるようになった。身につけたスキルでウェブデザイナーなどに転身する人も増え、確かな手応えがあった。

エンジェル投資家が創業期の資金繰りを支え、18年には化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングスを筆頭に、第三者割当増資で2億円を調達した。ポーラにとっては、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)での投資1号案件。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 030



●成長ステージと投資ラウンド 
注:投資ラウンドはあくまで目安、
必要金額は業種・業態により
大きく異なる
(写真=Ryouchin/Getty Images)
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年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


スケール拡大の壁

女性起業家の資金調達を男性と比較すると「悲劇的に困難な状況」と、強烈な危機感を示している。
(中略)
スタートアップによる資金調達額について上位50社を見ると、女性起業家が手にした金額は2%しかない。仮に女性の方が小規模な事業を選ぶ傾向があったとしても、それとは逆に国内外で規模拡大を追う女性もいる。そして事業展開する分野や地域を広げたい時、女性というだけで資金獲得に難儀した複数の実例がある。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 031


SHEに出資したANRI

ANRIは、12年に創業してから10年超で630億円相当の投資規模へ拡大してきた、やり手のVCだ。20年11月、同社の4号ファンドで「女性が代表を務める企業への投資比率を20%以上にする」と宣言。これを1年半で達成し、現在の5号ファンドでも同じ目標を掲げている。佐俣アンリ代表パートナーは「アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)として数値を出すことに意味がある」という。かつてANRIでも、女性起業家への投資は5%程度にとどまっていた。

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2023.03.13 p. 031


(写真=伊藤 菜々子)
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年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


起業した女性にスケール拡大の壁

●起業数と資金調達での男女比 
注:金融庁政策オープンラボ資料
から作成。
独立・起業は2017年
「就業構造基本調査」
に基づく。
資金調達は19年、金額上位
50社のうち創業者か社長に
女性を含む企業が
手にした額の比率
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年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


女性も独立・起業の意欲が旺盛であるが、次の段階であるスタートアップへ進むと資金調達が困難になるということです。


ジェンダーギャップ

起業家のジェンダーギャップは、情報の非対称も大きな課題だ。佐俣代表は、男性のキャピタリストや起業家同士のボーイズクラブについて、「タバコ部屋のような、近い属性の人による情報のキャッチボール」と表現する。この何気なくも重要な情報交換の輪から女性が外れやすく、資金調達で困る一因になる。

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2023.03.13 p. 032


ハードシングス

起業家が直面する苦難は「ハードシングス」と呼ばれる。宇井CEOは「突然誰かが辞めたり研究開発費が急膨張したりといった事象に比べると、妊娠は後の見通しが立つ」と語る。そして出産の痛みに耐える胆力が経営にも生きるという。

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2023.03.13 pp. 032-033


🔴ビースボークのケース

多言語対応の人工知能(AI)チャットボットを手掛けるビースポーク(東京・渋谷)の綱川明美社長は7年前、出資先のVCを探していた際に驚きの言葉を投げかけられた。「30歳前後の女性には投資したくない」──。その理由を聞くと、出産が今後ありそうな人を避けているようだった。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を卒業して投資銀行マッコーリー・キャピタルに入り、外資系金融を渡り歩いた後に起業した矢先だった。

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2023.03.13 p. 033 


男女差別が甚だしい話ですね。しかし、それが当時の現実だったのです。
こうした体験を通じ、「綱川社長は資金を主に金融機関からの借り入れで賄っている」(p. 033)そうです。


ビースポークは羽田空港
第3ターミナルでも
AIチャットボットの実証実験
をしている
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年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


ただし、課題がありました。

政府系金融機関からの借入れ

自治体は予算執行の関係で支払いが4~5月に集中しやすい。同社はその前に運転資金が足りなくなりがちだ。だが、この売掛金の信頼性は高いので「主に政府系金融から個人保証なしで借りられている」という。

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2023.03.13 p. 033 


政府のスタートアップ育成5カ年計画とは?

●2027年度の目標 
(写真=kazuma seki/Getty Images)
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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13


これらの数字を見て、率直な感想を述べると、果たして計画通りに実現可能だろうか、と疑問に感じました。計画倒れではなかったか、ときちんと検証することができるか、ということです。

「絵に描いた餅」に終わらないことを切に願っています。

女性起業家を増やすため、まず「シード期の壁」を破らねばならない。成長ステージがミドルやレイターになると予算・実績を管理しやすくなるが、「シード期は事業計画通りにいかないほうが圧倒的に多い」。リスクが山積みのため、シード特化型のVCは少しでも安全策を取ろうと男性同士で意思疎通するボーイズクラブ内に投資先を求めてしまう面もある。

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2023.03.13 p. 034


成長ステージに応じた出資が続けられるか

実はシード、アーリー、ミドルといった成長ステージに応じて出資者が変わりやすいのは日本特有という。例えばシード期のVCがアーリーのVCへと持ち株を売却するという流れだと、長期的な視点に立って成長を促しにくい。特に女性起業家に対し、出資して2~3年で次のVCに株式を売却するとなると、妊娠・出産で1年ほど事業速度を緩めることさえ、待つ余裕は持てないかもしれない。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 034


大きな課題

金融庁の池田賢志チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーは「VCに資金を出す投資家が、より長期の投資期間を受容できないと、VCが早期回収のプレッシャーにさらされたままになる」と指摘する。優秀な女性起業家の支援ではアンコンシャス・バイアスとともに、長期のリスクマネー供給が根本的な課題だ。社会全体で、よりリスクを許容できる構造に転換する必要がある。

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2023.03.13 p. 034


少子化の要因

少子化の要因について、様々なアンケートで常に上位となるのは「子育ての費用を賄えない」という理由だ。小学生でも大手の塾は年間100万円程度かかるといわれ、大きな負担。相対的に低い女性の賃金を上げないと、子どもを増やす余裕は生まれない。現状では、女性は20代後半をピークに正規雇用が減少し、出産を機に非正規に移る傾向も根強い。

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2023.03.13 p. 035


男女を問わず、企業が社員に対して毎年5%の賃金上昇を確約しなければ、少子化問題は解決しないのではないか、と考えています。

それができない企業から社員は出て行き、新たな企業へ転職することになる社会に変貌していくのではないか、と思っています。


22年に生まれたのは前年比5.1%減の79万9728人と、明治時代に統計を開始してから初の「80万人割れ」。同年の死亡数は158万人なので人口減に拍車がかかる。昨年、米起業家のイーロン・マスク氏が日本の出生率に着目して「日本は消滅する」と警鐘を鳴らしたが、今のままでは本当にそうなってしまう。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 035


日経ビジネスは次のように結論を述べています。

政府は、より多くの収入を得ようとする女性のキャリアアップをこれまで以上に後押しし、出産の有無にかかわらず正社員のまま働き続けたり、起業家として飛躍すべく円滑に資金調達できたりする仕組みづくりを急ぐべきだ。女性が年収・昇進・起業の壁を突き破れば、日本は消滅を免れ、再成長への道を歩き出す。

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年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 035



🔷編集後記

今回の特集は、賃金面での男女格差を是正するための企業の最前線と、法律や制度の改正が施行されている現状をご紹介しました。

改革には必ず痛みが伴います。その痛みを分かちあいながら前に進むことが大切で、決して歩みを止めてはいけません。

「この辺で終わりにしよう」といった中途半端な気持ちは現場に諦観を漂わせ、以前より状況を悪化させることになりかねません。

画竜点睛を欠くということにならないことを切に願っています。

日本でもようやく政府や企業も重い腰を上げ、男女賃金の格差や女性リーダーの数や比率を高めていこうとする動きが本格化してきました。

まだ緒に就いたばかりですから、法律や制度の改正や改革が必ず必要になってきます。そして、各企業内で「我々はこうした制度を採用し、実行に移し、継続していく。もし途中で不具合が生じた時には、直ちに改正する」という覚悟が要ります。

課題は、それが実際にできるか否かです。

日本は課題が山積していますが、先送りせず、解決していかなければ、世界の三流国に堕してしまうという危機感を国民全体でシェアしなければ、本当にそのようになってしまいます。

未来の子供たちが希望を持てる国にしたいですね。私たちにはその責任があります。


🔴情報源はできるだけ多く持つ

海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。まず信頼性の高い文献に当たってみることが必要になります。

日本の国立国会図書館のウェブサイトや米国の議会図書館のウェブサイトに当たってみるのも良いかもしれません。

もちろん、ロイターブルームバーグなどの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。

あるいは『日経ビジネス』『東洋経済』『ダイヤモンド』『プレジデント』などの雑誌やウェブ版から情報収集することもできます。これらの雑誌やウェブ版の購読をお勧めします。

あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPTBardに質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。

ロイター

ブルームバーグ

moomoo


(7,062文字)


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