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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 第82回

大人の流儀

 伊集院 静氏の『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院氏はこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

『大人の流儀3 別れる力』をご紹介します。

 ご存知のように、伊集院氏は小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。



大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 第82回

第3章 正義っぽいのを振りかざすな

「正義っぽいのを振りかざすな」から

伊集院 静の言葉 1 (243)

 どこの社会でも普段から顔も気持ちもよく知っている相手が窮地に立たされていたら、手を差しのべてやるのが人間でしょう。情というものでしょう。
「そりゃ伊集院さん、マズイでしょう。勝負の世界なんですから」
 おや、勝負の世界とおっしゃった?
 勝負の世界をご存知ですか。本当に?
 じゃ申し上げましょう。勝負の世界で一番美しいのは、そりゃ人間の、戦う者の情念、情愛です。
 なぜわざわざ本気の時に、勝負に徹する、、、、、、と断るのかおわかりですか。
 勝負というのは徹しない時もあるからです。それをふくめて勝負の世界と言うのです。   

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                



「正義っぽいのを振りかざすな」から

伊集院 静の言葉 2 (244)

 歴代の横綱と、歴代の総理大臣を比べてみると、横綱の方があきらかにまともだわな。
 どこの母親が自分の赤ん坊を将来、健康で立派な人に育って欲しいと願って総理大臣に抱きかかえてもらいたいと思うかね。
 嘘つきの大人に育ってしまうものな。
 日本人の悪い癖だね。すぐに不正だ、正義だって口にするのは。マスコミも相撲くらいは大目に見てやればいいじゃないか。
 相撲ジャーナリストってのは何なんだ?
 それだけ長く相撲とつき合っていて相撲の本質がわかっちゃいないのか。   

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                               



「奇人と偏屈が国を変える」から

伊集院 静の言葉 3 (245)

 日本の国家予算、九十三兆円のうち公債という名の下に借金した金が四十四兆円という。
 総額千兆円を越える借金をかかえた国家が成り立つのか。成り立つはずがない。
 日本人には預金がそれ以上にあるって? よりゃ他人の金だろう。
 なのに子ども手当が約束通り入ってこないとか、高速道路の料金がタダにならないとか日本人は言う。子供は本来、家の収入の中で育てるべきものではないのか。高速道路を走ったことがある人なら、これほどの道路がタダで通れる方がおかしいと考えるのがまともではないか。
 マニフェストが実現しなかったと大半の人が言うが、初めっから、そんなものは都合が良すぎたと思わないのか。
 金融が、金融に関わる者たちの生きる姿勢が、この悪循環の元凶である。さらに言えば役人の天下りをおかしいと言うが、彼等にすれば皆がしてきたこと、していることにならっているだけなのである。これを制止するには牢獄に入れるしかない。金融業者も役人も元凶を断つには罪人にするしかない。 

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                               


⭐出典元

『大人の流儀 3 別れる力』
2012年12月10日第1刷発行
講談社

表紙カバーに書かれている言葉です。

人は別れる。
そして本物の大人になる。


✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。
伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。
伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます


🔷「勝負というのは徹しない時もあるからです。それをふくめて勝負の世界と言うのです」

う~んと唸ってしまいました。
私は「勝負の世界」とは縁遠いところで人生を過ごしてきましたので、「勝負」とはそのようなところなのか、と深く考える時間を与えられました。

もちろん、私にしてもそれなりに人生を懸けた世界はありましたよ。
でも、伊集院さんが言っている「勝負の世界」とはまったく異質なものです。

「勝負の世界」はプロの世界であり、私の「人生を懸けた世界」はアマの世界くらい違います。

あなたは「勝負の世界」で生きてきましたか? それとも私と同じような「人生を懸けた世界」で生きてきましたか?



🔶『大人の流儀3 別れる力』について『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』の中で言及しています。

伊集院静と城山三郎
『別れる力 大人の流儀3』
私が伊集院静さんに興味を持ったのは、彼の先妻が女優の夏目雅子さんであったこともありますが、『いねむり先生』という題名の小説を読み、不思議な感覚を味わい、また『大人の流儀』という辛口のエッセーを読んだからです。 

由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い p.212


夏目雅子さんのプロフィール



🔶伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。


⭐ 原典のご紹介



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藤巻 隆
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