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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.33
大人の流儀
伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。
時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。
帯には「あなたのこころの奥にある勇気と覚悟に出会える。『本物の大人』になりたいあなたへ、」(『続・大人の流儀』)と書かれています。
ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。
「若い修業の身がなぜ休む?」から
伊集院 静の言葉 1 (97)
どうしてこう旗日(祝日)が多いのか。
日本人はこんなに休んでいちゃ、国が滅ぶんじゃないか。
”体育の日”がからむ三連休をずっと東京のホテルで仕事をする破目になった。その折、何が困るかと言って、飯を喰う店が当たり前のように休んでしまう。
東京の繁華街(銀座なのだが)の鮨屋、焼鳥屋、小料理屋が平然と三日間休む。
猫や杓子までが、いっちょ前に休みをとって、そういう身分かおまえたちは? 客が懸命に働いている時にまさか家族旅行なんて行ってるんじゃあるまいな。
「若い修業の身がなぜ休む?」から
伊集院 静の言葉 2 (98)
さきゆきのない老夫婦なら仕方あるまいが、若い修業の身までが休むから”日本の味”が落ちるのだ。若いうちは休んでいては何ひとつ身に付かない。人の何倍も働かねば、最後にエリートに、どうよ人生は、頭だけじゃ、タカが知れているだろう、と言えないぜ。
「若い修業の身がなぜ休む?」から
伊集院 静の言葉 3 (99)
今はタラコみたいになった指で原稿を書いている。週刊誌の連載は締切りギリギリで書く。雑誌は生きているから書き溜めはできない。どうして? と読者は訊かれようが、今年の春に私が海外へ出かけゴルフを愉しもうかと原稿を書き溜めして遊んでいて、震災のあった海岸の街々を美しくて幸福そうだと文章に書いていたら、私はもの書きとして失格になるからだ。同じ日に皆書くのは日を置くと同じことを他の雑誌に平気で書くからだ。
出典元
『大人の流儀 2』(書籍の表紙は「続・大人の流儀」)
2011年12月12日第1刷発行
講談社
✒ 編集後記
『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。
伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。
伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。
🔷 「今年の春に私が海外へ出かけゴルフを愉しもうかと原稿を書き溜めして遊んでいて、震災のあった海岸の街々を美しくて幸福そうだと文章に書いていたら、私はもの書きとして失格になるからだ」
この文章を読んで、同業のもの書きの中に原稿を書き溜めしている人がいる、と暗に言っているように感じました。
もちろん、伊集院氏に訊ねてみても(現実には不可能ですが)、正直には答えてくれないでしょうが。
同様なことではありませんが、もの書きが手抜きしたな、と感じたことはあります。
ただし、私の主観ですから証拠なんてありませんが😁
今回、伊集院氏は、若い料理人に対して厳しい言葉を発していましたが、一理あります。本当のプロを目指すなら、修業を怠っていては本当のプロにはなれません。
手を抜けば、すぐに見抜かれます。分かる人には分かるのです。
楽したいなら、楽に生きられる道があります。その道を選べばよいのです。
🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。
<著者略歴 『大人の流儀』から>
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。
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![藤巻 隆](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71125230/profile_41e0fc7128adbeae646dbc6dcf9ce0c0.jpg?width=600&crop=1:1,smart)