戦う取締役会 プロ経営者を育てる「社外の目」 2014.08.25 2/2 2014-08-30 19:34:13
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
戦う取締役会 プロ経営者を育てる「社外の目」 2014.08.25 2/2 2014-08-30 19:34:13
CONTENTS
PROLOGUE 経営者の提言 社外取締役 攻めの時代へ サントリー次期社長・新浪氏が語る
PART 1 ソニーが落ちた「形だけ」の罠
PART 2 脱「お飾り」の条件
DATA 2014年版 役員報酬ランキング
第2回は、
PART 2 脱「お飾り」の条件
DATA 2014年版 役員報酬ランキング
を取り上げます。
今週の特集記事のテーマは
従来、ガバナンス(企業統治 註:藤巻)改革は
不祥事を防ぐ経営の透明性向上が主目的だった。
今回の本丸は「成長」の2文字だ。
社外取締役を巡る議論は「導入すべきか否か」
のステージから、「どう機能させるか」に移った。
社外の声を聞き、時に意見をぶつけながらも
前に進む「戦う取締役会」へ脱皮できるかどうか。
今、その岐路に立っている
です。
PART 2 脱「お飾り」の条件
条件1 「大物主義」を捨て人材の選び方見直す
来年(2015年)4月、改正会社法が施行されます。
その中心となるのは、社外取締役を置かなくてはならないというものです。
もし、社外取締役を置かない場合には、その理由を株主総会で示さなくては
ならなくなります。
問題は、社外取締役に相応しい、優れた人物はあまりいないという現実です。
その理由は、「社外取締役としてトレーニングされている人が少ないのは事実」(p. 036)だからです。
伊藤邦雄・一橋大学大学院教授は7社の社外取締役を兼務しています。一番多いとみなされています。
「3社限界説」があるそうですが、驚くべきことです。
ただ、利益相反になりはしないか、と危惧されますが、「全く問題ないですよ」との答え(p. 035)。
そのわけを、伊藤さんの口から出てきた言葉が示しています。
●複数企業を兼任する主な社外取締役
社外取締役に相応しい人材が不足し、一部の人気がある人物に偏っているが、根本から見直す必要がある、と『日経ビジネス』取材班は指摘しています。
では、具体的にどうしたらよいのでしょうか?
社外取締役とはどんな人なのか、『日経ビジネス』は調査結果を公表しています。
○上場企業役員経験者は 38.1%
○平均在任期間は
4年
○平均報酬は 1200万円
(売上高1兆円以上の企業)
○女性は
159人
(全体の6.5%)
○外国人は
70人
(全体の2.9%)
○月間活動時間
10~11時間
(取締役会出席、資料確認など)
出典:プロネッド
条件2 事業報告だけはNG まず取締役会変える
トヨタ自動車は、2013年6月に3人の社外取締役を初めて任命したそうです。
社外取締役の導入に先立ち、2011年に取締役を27人から11人へ大幅に減らしていたのです。
条件3 社長を切り次を選ぶ その覚悟はあるか
同じ社外取締役と言っても、欧米と日本を比較すると、日本は「経営監視機能が十分に発揮される環境ではない」、と指摘する外資系企業の経営者がいます。
社外取締役の役割は社長をクビにすることだ、という意見を述べる人もいます。
さらに、「『お友達取締役』を排除する仕組みを徹底しているのがエーザイ」(p. 039)だそうです。
エーザイでは、フルカラーで176ページに及ぶ株主総会の招集通知を用意したそうです。
その中には、「取締役候補者1人につき見開き2ページで、会社提案の選任理由、経歴、社外取締役自身の抱負などを紹介している」(p. 039)そうです。
通常、招集通知は10ページ前後ということなので、いかにエーザイが本腰を入れて、株主に対応しているかが分かるエピソードです。
ここまでやらなくてはならないのは、取締役には強い権限と大きな責任があるからです。
下の図表をご覧ください。
日本と米国、英国、フランス、ドイツのコーポレートガバナンスを比較した表です。
日本がここに上げた他国と比較し、独立取締役(社外取締役)が極めて少ないことが分かります。
日本は1人以上となっていますが、英米は過半数が条件になっています。
オムロンの北川尚・取締役室長の「社外取締役の役割は社長をクビにすることです」という言葉で思い出したことがあります。
松本大(まつもと・おおき)マネックスグループ株式会社代表取締役社長CEOが自著の中で語っていたことです。
松本大氏の概要をご紹介します。
松本氏は、世界最強と言われる投資銀行、米ゴールドマン・サックスで、最年少でしかもアジア人として初めてパートナー(共同経営者)となった後、マネックス証券を立ち上げました。
松本氏が、出資してくれたゴールドマン・サックスの関係者に「私に望むことは?」と尋ねたところ返ってきた答えが驚くべきことでした。
「あなたをクビにできる人物をそばに置きなさい」
CEO (最高経営責任者)は強大な権限を持ち、独裁者になりかねない危険性があるので、そうならないための仕組みが必要だ、と言ったのです。
この話がきっかけとなったかどうかは定かではありませんが、松本氏は、『私の仕事術』(松本大 講談社+α文庫 2006年8月20日 第1刷発行)の中で、こう書いています。
周囲にイエスマンばかりを配置していたら、『はだかの王様』になってしまいます。
松本氏には、『はだかの王様』が教訓となっているのでしょう。
あなたがもし、経営者の立場なら『はだかの王様』にならない自信はありますか?
私は、ならない自信があるというよりも、ならないように常に意識化しますが、いつの間にか、結果として『はだかの王様』になってしまうかもしれません(笑)。
DATA 2014年版 役員報酬ランキング
この個所はアメブロでは掲載しませんでした。書下ろしということになります。
三菱電機
1億円以上が18人へ急増
これらの図表を見てどのような感想を抱きましたか?
2014年ですから今から9年前のことです。
すでに退任したり、他社の役員になられた人たちもいます。
🔷編集後記
この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-08-30 19:34:13)のことでした。
最近ではその存在感が薄れてしまっている監査役があります。昔は、監査役は暇な役職なので揶揄して「かんさんやく」と言われたりしました。
監査役は会計監査が主たる業務です。大企業であれば監査法人に会計業務一切を依頼し、決算に関わる手続きを行ないます。
一方、社外取締役は業務監査が主たる業務です。例えば、企業がM&Aを行なった際、買収価格は適切なものか(高すぎないか)、あるいはROE(自己資本比率)やROA(総資産利益率)などの数値を見て、業界や世界の企業と比較して劣っていないか、劣っているとしたらなぜかなどを経営者に質問することになります。
つまり、アクティビスト(物言う株主)と同様に、社外取締役は株主を代表して経営者に物申す立場です。
ポイントは主に2つあります。
1 社外取締役の数は過半数以上であること。つまり、取締役が10名いたとしたら、そのうちの6名以上が社外取締役で、4名以下が社内取締役で構成されていること。
2 社外取締役は、その企業からだけ報酬を得る人物は除外する。なぜなら、企業の言いなりになってしまう恐れがあるからです。
コーポレートガバナンス・コード
2021年8月2日現在、東証一部(当時、現・東証プライム)の72.8%が3分の1以上の社外取締役を選任していることが分かります。
⭐参考データ
2023年3月期決算 上場企業 「役員報酬 1億円以上開示企業」調査 ~ 集計開始以降で最多の316社・717人 ~
【2023年6月30日17:00 現在】
開示人数は717人で最多を記録
開示社数が初めて300社を突破
調査機関が異なったり、調査方法に違いがあるかもしれませんが、9年前と比較すると役員報酬は一桁(!)違いますね。