『お金の流れが変わった!』(7)
『お金の流れが変わった!』(7)
新興国が動かす世界経済の新ルール
PHP研究所 2011年1月5日 第1版第1刷
<目次>
第1章 超大国「G2」の黄昏
Ⅰアメリカ-「唯一の大国」はいかにして崩壊したか
Ⅱ中国-バブル崩壊はいつやってくるか
第2章 お金の流れが変わった!
Ⅰ「ホームレス・マネー」に翻弄される世界
ⅡEU-帝国拡大から防衛のシナリオ
Ⅲ新興国ー21世紀の世界経済の寵児
第3章 21世紀の新パラダイムと日本
Ⅰマクロ経済政策はもう効かない
Ⅱ市場が日本を見限る日
第4章 新興国市場とホームレス・マネー活用戦略
Ⅰ新興国で成功するための発想
Ⅱ日本経済再成長の処方箋
Ⅱ市場が日本を見限る日
日本というのは、たとえ内向きであっても、ある程度はビジネスが成り立つ巨大で安定した経済圏をもっている国なのだ
世界でも日本ほど国債を発行している国はほかにない
現実をきちんと国民に説明し、借金の先送りでは問題は解決できないといわなければならなかったのだ
日本の金融機関は、ふたを開ければ国債しか買っていないのである
2012年12月に衆議院議員選挙と都知事選挙が実施され、衆議院議員選挙で野党自民党が記録的大勝利を収め、与党民主党は壊滅的な敗北を喫しました。
第三極と注目された、橋下徹大阪市長率いる日本維新の会に、選挙直前に石原慎太郎前都知事が合流し、注目を集めました。
だが、結果は、国民の期待ほどには当選者が増えなかった、というのが実態でした。
安倍晋三氏が自民党総裁選挙に勝利し、安倍政権は「デフレ脱却」を旗頭に公共投資に力点を移し、物価2%上昇を目指し、日銀に協力を要請しました。
安倍首相が組閣後、外国為替や日経平均の流れが変わりました。
長期間の円高が一転して、対ドル、対ユーロで円安が進み、この傾向を好感し、自動車産業をはじめとする輸出企業の株価が軒並み上昇し、連日、日経平均を押し上げ、なかなか超えられなかった1万円の壁をあっさり超え、10,800円(2013年1月11日終値)に達しました。
円高から円安への転換は、多方面に大きな影響を及ぼします。
輸出産業は業績好調になり、収益を改善します。
一方で、輸入製品は高くなります。
例えば、原油価格が今後数カ月後には値上がりし、ガソリン価格や石油製品の高騰を引き起こす恐れがあります。
この1年は、日本そして世界はどのように変わり、私たちはどのように生活を変えていかなけばならないのか、一人ひとりが真剣に考え、行動しなければならない年になる、と思います。
賃金格差、情報格差(デジタル・デバイド)など、いくつもの格差が解消するのではなく、いっそう拡大する時代に入った、と考えています。
以上の記事は、2013年1月12日に投稿したものです。
日本維新の会について言及していますが、私は橋下徹代表と石原慎太郎元都知事が合流した時点で、日本維新の会はダメになる、と確信しました。
なぜなら、橋下さんは護憲派で、石原さんは改憲派だからです。
言わば、水と油のような関係で、混じりあうことはありません。
憲法第9条を巡って、譲歩することはありえません。
案の定、日本維新の会は空中分解しました。
先日、橋下さんが提起した「大阪都構想」の住民投票が行われましたが、僅差とはいえ、否決されましたね。
橋下さんはこの敗北を機に、政界を引退することを表明しました。
この流れは、日本維新の会の崩壊と無縁ではない、と考えています。
さらに、橋下さんへの信任が否決された証左でもある、と考えています。
余談になりますが、橋下さんは日本維新の会を立ち上げる前に、大前氏にお伺いを立てています。
大前氏は、現在はない「平成維新の会」を立ち上げていたからです。大前氏は過去、都知事選に出馬し、青島幸男さんに敗北し、以後、政界への道を断念しました。
結果的に、私は良かったと思っています。
その後、執筆や、起業したビジネススクールを通じて、社会に貢献しています。
都知事選敗戦の経緯は、
大前研一 敗戦記 大前 研一
に詳細に書かれています。
➳ 編集後記
『お金の流れが変わった!』という本について
『お金の流れが変わった!』 は世界と日本の金融を考えると、以前とは全く異なる状況になってきたことを大前氏が、理路整然と具体的に、かつ分かりやすく解説している本です。
時の流れは急速で、昨日までの常識が今日には非常識になることは珍しくありません。
経営資源
経営資源として言われているのは、ヒト・モノ・カネ・情報・時間です。
他にシステム等が加わることもありますね。
はじめの5つに共通点がありますが、何でしょうか?
それは「流れ」です。
人流 (入社・退社・異動・昇進・降格)
物流 (売買・配送・輸出入)
金流 (売買に伴うお金の移動・給与・ボーナス)
情報流(情報を収集し、発信)
時間は、刻一刻と流れています。
時間の流れは、過去→現在→未来ではなく、「未来→現在→過去」です。
現在は一瞬のうちに過去になってしまいます。未来と思っていたことが
現在になり、過去になります。
私たちは、「流れ」にコントロールされているとも考えられます。
✅ 安倍晋三政権の始まりが自民党の腐敗政治の始まりだった
時計の針を10年前の2012年12月に戻してみましょう。
安倍晋三氏が率いる自民党が、時の与党民主党を大差で打ち破り、安倍政権がスタートした時期です。
このときにはすでに安倍氏は旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との深い関係が続いていました。
祖父の岸信介元首相、自民党幹事長等を歴任した晋三氏の父親・安倍晋太郎氏そして晋三氏と継承されてきた旧統一教会との関係は半世紀以上にもなります。
2022年7月8日午前11時半ころ、旧統一教会の信者で、教会から巨額な献金を強要されたことが原因で自己破産した、母親を持つ息子による銃撃で命を落とすまで、その関係は続きました。
安倍氏は通算8年8ヶ月という歴代首相として在任期間が最長となりました。
銃撃事件が起こらなければ、旧統一教会と安倍氏さらに自民党安倍派との黒い関係が明るみに出ることはありませんでした。
実は、メディアも一部のジャーナリストも旧統一教会と安倍氏の関係については以前から把握していました。
しかし、忖度したり、ジャーナリストがその関係を指摘し記事にしても無視されたり、記事の投稿を差し止められたりしたため、国民の目に触れることは殆どありませんでした。
銃撃事件をきっかけに一気に重い蓋が取り払われ、臭いものが噴出した形です。
『権力必腐』(経済小説の第一人者・高杉良氏のノンフィクション作品)を読むと、30年近く前のバブル期の金融機関の腐敗がテーマですが、政官財(政界・官界・財界)のトライアングルによる癒着が原因でもあったことが判ります。
権力を持つと必ず腐敗するのは、古今東西で繰り返されてきたことです。
権力・カネ・名誉を恣にしたい人間が必ず現れます。
余談ですが、「心」が「次」の下にありますから下心(悪だくみ、かねてからのたくらみ=Oxford Languagesの定義)があるという意味なのかと思ってしまいます。
その関係にさらに宗教法人格を隠れ蓑にした反社会的団体の旧統一教会が絡んでいたわけですから、問題を複雑化していたのです。
私が考える大前研一氏の考え方
🔶 大前氏は自分で考え出したことを自ら実践し、検証しています。仮説と検証を繰り返す行動の人です。
Think before you leap.(翔ぶ前に考えよ)という諺がありますが、Leap before you think.(考える前に翔べ)もあります。
あれこれ考えて、難しそうだからとか面倒くさそうだからやめようでは成長しません。
まず、やってみるという姿勢が大切です。
大前研一氏は、常に物事の本質を述べています。洞察力が素晴らしいと思います。
私は、ハウツーものは、その内容がすぐに陳腐化するので読みません。
➔ 大前氏の言葉は、いつでも私たちが忘れがちな重要なことに気づかせてくれます。
🔶 大前研一氏と私は年齢がちょうど一回り(12歳)離れています。
しかし、その年齢以上に遥かに頭の中身と行動力に差がある、と大前氏の著作を読むたびに痛感します。
構想力、コンサルタント力、提案力、実行力……。
どれをとっても私が及ぶようなものは何一つありません。
それでも、いや、だからこそ大前氏の著作やメルマガを通じ、大前氏の考え方を素直に受け入れることにしているのです。
時には、かなり過激な表現も見受けられますが、それは大前氏がそれだけ真剣に物事を考え、モノマネではなくオリジナルな提案をし、自ら実行しているからです。
そうした姿勢をいつも背中から見ていて、頼もしく感じ、(勝手に)この人に師事し、グル(思想的指導者)と仰いでいるのです。
⭐ 関連書籍
🔶 大前研一氏と私とは年齢が一回り違います。大前氏は1943年2月21日生まれで、私は1955年6月30日生まれです。
大前氏は、私にとってはメンター(師匠)です。もちろん私が勝手にそう思っているだけです。
🔶 大前氏は評論家ではありません。言うだけで自分では何もしない人ではありません。大前氏は行動する人です。だから大前氏の提言は説得力があるのです。
大前研一オフィシャルウェブ
このウェブサイトを見ると、大前氏の出版物一覧を見ることができます。
私は、大前氏の全出版物の半分も読んでいませんが、今後も読んでいくつもりです。
⭐ 出典元: 大前研一 オフィシャルウェブ
大前氏は1995年の都知事選に敗戦後、『大前研一 敗戦記』を上梓しました。
🖊 大前氏の著作を読むと、いつも知的刺激を受けます。
数十年前に出版された本であっても、大前氏の先見の明や慧眼に驚かされます。
『企業参謀』(1985/10/8 講談社)という本に出会ったとき、日本にもこんなに凄い人がいるのか、と驚嘆、感嘆したものです。
それ以降、大前氏の著作を数多く読みました。
『企業参謀』が好評であったため、『続・企業参謀』( 1986/2/7 講談社)が出版され、その後合本版『企業参謀―戦略的思考とはなにか』(1999/11/9 プレジデント社)も出版されました。
🔶 大前氏は経営コンサルタントとしても超一流でしたが、アドバイスするだけの人ではありませんでした。自ら実践する人です。有言実行の人です。起業し、東京証券取引所に上場しています。現在は代表取締役会長です。
大前氏の本には、ものの見方、考え方を理解する上で重要な部分が多くあります。大前氏の真意を深く考えなくてはなりませんね。
この元記事は7年前にAmebaブログで書きました(2015-06-15 15:10:39)。
「新・大前研一名言集(改)」はかなりの量になりました。
私にとっては、いわばレガシィです。
その記事を再編集しました。
✑ 大前研一氏の略歴
大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本の経営コンサルタント、起業家。マサチューセッツ工科大学博士。マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授、高麗大学名誉客員教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長等を務める。 (Wikipedia から)
大前研一氏の略歴補足
大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。
その後、世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。
都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。
大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。
⭐ 今までにご紹介してきた書籍です。