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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 Vol.14】
大人の流儀
伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。
時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。
帯に自筆で「ちゃんとした大人になりたければこの本を読みなさい」と記しています。
ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。
出典元
『大人の流儀 1』
2011年3月18日第1刷発行
2011年7月14日第11刷発行
講談社
「大人の仲間入りをする君たちへ」から
伊集院 静の言葉 1 (40)
毎年、新成人を迎える若者が全国で百数十万人いる。
新成人おめでとう、と言っても、彼等にはおそらくピンとこないだろう。
そりゃそうだ。カレンダーの日付けで、今日から大人と言われても、ハイ、大人です、と納得する若者はいまい。
しかし君たち、人生は長いようで短く、短いようで長い。短いことを例に挙げるなら、君だって、もう二十年生きてしまったのか、と半分驚いているはずだ。かつて人生は六十年そこそこと言われていた。それを基準に考えると、すでに三分の一を生きてきたことになる。皿に載ったショートケーキでいうなら、あと三分の二しかない。
これを三分の二しか、三分の二も、のどちらで考えるかは別の話である。
ともかく現実の時間はそうであり、時間とは残酷で容赦のないものだ(これも見方ですが)。
伊集院 静の言葉 2 (41)
私にも経験があるが、二十歳の前に不幸にも亡くなった友もいる。十七歳で海の遭難事故で弟を亡くした。
母が言うには、「その友だちの分も、弟の分も、おまえがしっかり生きることです」となるのだが、日々の暮らしは、目の前にあるもので一喜一憂し、楽な方に身を置こうとするのが若者であり、人間だ。
伊集院 静の言葉 3 (42)
人生というものは総じて割に合わないものだ。そういうことを平然と受け入れて生きるのが大人の男というものだ。
じゃ周囲を見回して、大人の男たちがきちんと生きているか。
-----だろう……。
まともなのは十人に一人か二人だ。
この頃は世の中がおかしいから? そうじゃない。昔からまともな大人というものはごくわずかしかいないのが世の中なのだ。
大半の大人の男は、こう思っている。
-----私はいつ大人になったんだろうか。ただ生きてきたらいつの間にか周囲が大人扱いをしていた。
これがおそらく本音だろう。
しかしいつまでも、そんな甘い考えではいけない。馴れ合いで生きてはいけない。
✒ 編集後記
『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。
伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。
伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。
🔷 自分が新成人になった頃(半世紀近く前になります)を思い出しても、その日を境にして大人になったと実感した記憶がありません。
その理由は、たぶん、当時まだ大学生であり、社会人ではなかったという事情があったからだろうと思っています。
学生と社会人はやはり違うと思います。
私見ですが、学生は自分のやるべきことだけを一所懸命やっていればよいのですが、社会人は自分だけでなく、組織の中で自分は何をしなくてはならないのか、を考えながら行動しなければなりません。
自分のやりたいことはなかなかできず、やりたくないことをしなくてはなりません。それをしなければ、いつまで経ってもうだつが上がらず、不満を持ち続け、ストレスを溜めことになり、最悪の場合にはうつ病を患うこともあります。
心の健康を保つことは大切です。
🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。
<著者略歴 『大人の流儀』から>
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。
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