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出直し観光立国 「訪日客6000万人」の罠 2022.09.19 2/3

【『日経ビジネス』の特集記事 】 #5

✅はじめに

⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。

Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。

⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。

「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
プロフィールから)


日経ビジネス電子版セット(雑誌+電子版)「らくらく購読コース」で、2022年9月12日号から定期購読を開始しました。



日経ビジネスの特集記事 #5

出直し観光立国 「訪日客6000万人」の罠 2022.09.19 2/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>


PART 2 稼げる観光を実現するミッション

「数」の罠から脱却し「質」で客を魅了せよ


稼げる観光を実現するために、日経ビジネスは3つのミッションを提示しています。

Mission 1 客単価を引き上げろ!
Mission 2 滞在日数を引き延ばせ!
Mission 3 魅力を深掘りせよ!


順を追って見ていくことにしましょう。

Mission 1 客単価を引き上げろ!


運営するオリエンタルランドは、「数より質」を追求する方針へ転換し始めた。
観光業界の「強者」であるオリエンタルランドもコロナ禍を受けて、密を避けるべく入園者数に上限を設けた。すると収益に奇妙な変化が生まれた。売上高は減少したが、客1人当たりの販売収入が高まったのだ。混雑が緩和され、顧客満足度が向上。来園者がグッズや飲食にお金を使うようになったとみられる

日経ビジネス 出直し観光立国 「訪日客6000万人」の罠 p.018          


✅私の考え(1)

オリエンタルランド(ディズニーランド・ディズニーシー)の場合


売上高①=来園者数 ✕ 客単価
売上高②=来園者数の内のグッズや飲食に費やす人数 ✕ 客単価
全売上高③=①+②

来園者数に上限を設ければ人数は減りますが、①と②の客単価を上げることができれば③を拡大することが可能になります。

客単価を上げることができたのは質を向上させたからです。価格に見合うあるいは価格以上の価値(質)を提供できたと考えることができます。


オリエンタルランドは強者だからできたのだろうと考えがちですが、決してそうではなかった事例がありました。

既存ホテルに“魔法”をかける

阪急京都線の京都河原町駅(京都市下京区)から徒歩10分。鴨川近くのエリアに21年、フランス高級食料品ブランドの名を冠した「フォションホテル京都」が開業した。
(中略)
ここはかつて、修学旅行生も泊まる安価な宿泊施設だった。17年に不動産投資などを手掛けるウェルス・マネジメントが買収し、日本へのホテル進出を模索していたフォションと手を組み、内装や間取りを大幅に改修。パリに次ぐ世界で2軒目の「フォションホテル」が誕生した。
高級感を演出する“魔法”の一つが客室面積の拡大。客室数は144から59に減ったが、5000円ほどだった客室単価は約6万~13万円に高まった。食事も一級だ。フォションの朝食やアフタヌーンティーは、1人およそ3000~6000円と比較的高価だが、女性を中心に多くの客を魅了する。

日経ビジネス 出直し観光立国 「訪日客6000万人」の罠 p.019          


ホテル業界も新コロナ禍で空室率が拡大し、疲弊していたことでしょう。
そのようなホテル業界からも、いち早く「量から質」への転換を図り、成果を出しているホテルがあるという好例です。


✅私の考え(2)

販売戦略には大別して2つあると考えています。

1つは周辺地域で最低価格を提示し、顧客を囲い込み、同業他社を追いやった後で適正価格あるいは高価格で販売する戦略(強者の戦略)。

もう1つは、量を追わず質の向上による高価格帯で販売する戦略(弱者でも勝てる戦略)。

どちらを選択するかは、自社の業界の位置づけによって決まります。

観光業界は季節による変動が大きい(シーズナリティ)ので、1年を通じて需要の平準化が不可欠です。
しかし、実現には時間がかかります。

つまり、リピーターをいかにして確保するかが課題と言えます。


星野リゾート・星野佳路代表はインタビューで次のように答えています。

実情は観光客の「数」を追うことに終始していました。その結果、売り上げは増えたものの利益はあまり出ず、理想にはほど遠かったと言えます。
では、根本的な解決策は何か。それは需要の平準化です。大型連休には需要過多、平日は供給過多といったように波が大きいと、安定的な雇用を実現するのは難しい。実際、観光業従事者のうち、正規雇用は3分の1以下なのです。
(中略)
都市と地方間における需要の平準化も必要です。19年まではインバウンドが都市部に集中し、地方との間で「インバウンド格差」が起きていました。
(中略)
ただ、事業者側で平準化を図るのは非常に難しい。私たちは沖縄の離島のリゾートでも年間で平準化を達成しましたが、その土台となるスケールメリットを出すのに30年かかりました。それを全国の観光事業者がそろって取り組むのは難しいと思います。あくまで国が音頭を取り、需要の平準化とフェアな市場環境をつくることが必要でしょう。それこそが、本来の「観光立国」を目指す上での第一歩なのではないでしょうか。

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日経ビジネスは次のように指摘しています。

客数の増加で収益を上げる。その考えは苦境の観光事業者を陥れる「罠(わな)」だ。大小様々な施策で「質」を磨き、客単価を向上する大胆に発想転換する勇気が必要だ。

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Mission 2 滞在日数を引き延ばせ!


「柳川藩主立花邸 御花」のケース

福岡県柳川市は、詩人・北原白秋の出身地として知られているそうです。
その柳川市にある料亭旅館が「柳川藩主立花邸 御花」です。
料亭旅館もコロナ禍による影響は甚大だったのです。

コロナ禍で状況は一変する。客足が途絶え、2020年4~5月は全館休業を余儀なくされた。ぽっかり空いた余白の時間。経営危機ではあったが、立花(千月香:注 藤巻)社長は「課題に向き合う好機」と捉えた。「一見さんばかり追いかけて、100年後にも御花は存続しているだろうか……」。考え抜いた末に、思い切った決断を下す。従業員を半減し、団体客向けの食事処を閉鎖。食事客の受け入れを従来の3分の1に減らして、個々の客と向き合える体制づくりを始めたのだ
 受け継がれた遺産の価値を客に正しく伝える取り組みにも着手した。マーケティング担当とデザイン担当をそれぞれ1人起用して、SNS(交流サイト)で御花の魅力を発信した。

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ゆっくり滞在してもらうにはどうしたらよいか思案に暮れていた立花社長は、あることをきっかけにして方針を転換したそうです。
問題解決法は意外にも身近なところにあったのです。

インバウンド華やかなりし頃、立花社長は客からかけられる「もったいない」という言葉に胸を痛めた。これほど立派な歴史を持つ旅館を運営しながら、その遺産を生かしきれていない。そう、聞こえたのだ。今ではその一言を従業員が観光客に向けて発する。「ゆっくり滞在する時間が取れないのでしたら、もったいないですよ」──。
御花では夏には花火、秋には月見と季節に応じて楽しめる舟下りプランを準備している。従業員それぞれが御花の価値を再発見したからこそ、自分の言葉でその魅力を語り始めた。もう安売りはしない。旅行会社が求める値引きに応じるのもやめた。

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✅私の考え(3)

やはり、顧客の言葉に耳を傾ける姿勢が大切です
厳しいことを指摘してくれる顧客を大事にすることは、リピーターを維持し、増加させるために不可欠です。



Mission 3 魅力を深掘りせよ!


聞き慣れない用語が見つかりました。
体験型観光「アドベンチャートラベル(AT)」です。

客の滞在期間を延ばすには「泊まりたい」と思わせる魅力ある地域づくりが不可欠だ。そのもう一つの解が体験型観光「アドベンチャートラベル(AT)」ATは「アクティビティー」「自然」「異文化体験」の3要素のうち2つ以上を含む旅行スタイルの総称を指す


北海道内で13の宿泊施設を運営する鶴雅HDのケース

高単価のコンテンツを提供でき、ノウハウを蓄積していけば、高収益が可能になります。

例えば、湧き水の出る場所などを案内する「阿寒の森の水巡り」は約2時間半で9240円。「阿寒湖・阿寒川フィッシング」は1人1日、3万3000円。雌阿寒岳の登山は安価なコースでも5万5000円(2人まで)となる。
強気な価格設定だが、鶴雅HD傘下の鶴雅リゾートの高田茂取締役は「海外ATでは5万円以上のツアーも珍しくない」と語る。当初はインバウンドを主要客と予想していたが、蓋を開けてみれば国内客が7割。「料理」「温泉」「ホスピタリティー」「空間」の備えで盤石だった温泉旅館の集客に、「冒険」という潜在需要を発見したのだ。

✅私の考え(4)

発想の転換と気づきが重要であることが分かります。


東洋文化研究家、アレックス・カー氏はこう語っています。

私は初来日から60年弱になります。今、一番懸念しているのは変わりゆく日本の景観です。街や山、川、森の美しさが損なわれれば国土の魅力は減衰する。そして、多くの日本人は失われゆくものに鈍感すぎる。昔から身の回りに存在した文化や自然が、今後も継続すると現状にあぐらをかいているのです。残念ながらその間に大切なものはみるみる失われているのに……。ニコニコしてもてなす精神だけが残ればいいのではありません

日経ビジネス 出直し観光立国 「訪日客6000万人」の罠 p.026          


かなり耳の痛い指摘ですね。60年弱も日本に滞在している外国人だからこと言えるエッジの効いた忠告です。



🔷 編集後記

日本には観光資源が各地に多く点在しています。
世界遺産に登録されている自然や構築物などもあります。

しかし、「観光は夢を売る産業」と指摘している、初来日から60年弱になる東洋文化研究家のアレックス・カー氏によれば(再掲)、

既に訪日を諦めタイやインドネシア、欧州など違う国・地域を行き先に選んだ観光客は少なくありません。経済を再起動するチャンスなのに自分で自分の首を絞めている。その状況を理解して、早く“開国”すべきです。

日経ビジネス 出直し観光立国 「訪日客6000万人」の罠 p.026         

という言葉に耳を傾ける必要があります。

次回は、
PART 3  “観光長者”シンガポールに学ぶ
小国ゆえに磨き上げた未来志向の「企画力」と
PART 4 沖縄が映す日本観光の弱点
観光立国へ残る課題 唯一無二の価値育め
をご紹介します。




⭐ 私の回想録


⭐ 私のマガジン (2022.09.25現在)






















   

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