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堀 紘一 名言集 『コンサルティングとは何か』(8)



堀 紘一 名言集 『コンサルティングとは何か』(8)


『コンサルティングとは何か』(2011年5月10日 第1版第1刷発行 PHP研究所)は、堀紘一氏が戦略コンサルティングの第一人者として、コンサルティングについて余すところなく書き綴った、優れた書籍です。

略歴は著者紹介に譲るとして、堀 紘一氏はボストンコンサルティンググループ日本法人代表、ドリームインキュベータ(DI)創業者となり東京証券取引所に上場させました。単なる戦略コンサルタントではありません。

DIは現在電通グループ(電通G)の傘下にあり(電通GがDIの株式を219万株(20.95%)保有しています。筆頭株主です。2023年9月15日現在 SBI証券のアプリから)、堀氏は代表取締役を退任されています。

著名な経営者と「経営の本質」を議論し、獲得した知見は類まれなものです。

優れたビジネス書を数多く執筆しています。難しい言葉は極力排除し、エピソードを交え、誰にでもわかるように解説しています。

本当に優秀な人は、難しい内容を平易な言葉を用い、誰にでもわかるように説明できる人です。堀紘一氏はまさにそんな人です。

*<>は堀紘一氏の書籍で、このコーナーで紹介した書籍の中の名言の通し番号です。1冊の中の通し番号ではありません。



¶ コンサルティング・ファームを雇う意義には大きく分けて四つある。! 意義① 企業は往々にして、顧客を把握できていない

 企業の戦略立案部門の負担を減らしつつ、より大きな付加価値を生み出すことこそ、コンサルティング・ファームの神髄だ。
 ではなぜ、コンサルティング・ファームは企業戦略に大きな付加価値をつけることができるのか? コンサルティング・ファームを雇う意義には大きく分けて四つある。
 ! 意義① 企業は往々にして、顧客を把握できていない
 まず一つ目は、コンサルタントは買う側の視点を提供できるということだ。
 確かに企業にもマーケティング部門があって、市場のニーズや動向を調査してはいるだろう。だが多くの場合、企業はユーザーのことをわかっているようでわかっていない。特に、市場が急激に変化しているときが顕著で、企業は、ユーザーの変化にまったく気づいていないことが多い。
 それはなぜかと言えば、企業とエンドユーザーの間には、問屋や卸、あるいは小売店が入っているのが通例だからだ。つまり企業はユーザーと直接の接点を持っていないわけで、企業が思うユーザー像と、実体としてのユーザー像の間には大きな開きが出る。ユーザーの変化をつかめなくても当然だ。 

『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言1<175>
 


¶ ! 意義② 「過去の成功体験」が発展を阻害する
二つ目のポイントは、企業は往々にして「プロの常識」に縛られてしまっているということが挙げられる

 ! 意義② 「過去の成功体験」が発展を阻害する
 二つ目のポイントは、企業は往々にして「プロの常識」に縛られてしまっているということが挙げられる。それは業界慣習といったものや、過去の成功体験といったものだ。
 長年続く成功体験は、ときに新しい発想が生まれるのを阻害する要因にもなる。特に変化が激しい状況において、常識はむしろマイナスに作用する。昨日の正解が今日の正解とは限らないのが現代という時代なのだ。
 これをその昔、私は「成功の復讐」と名付けた。ビジネスでも人生でも、初体験で決定的につまずく人がいれば、それは単に軽率だという話だ。しかし、立派な人が大失敗するというのは、過去の成功に復讐されるときだ。その理由は明快。環境変化の一語に尽きる。その点、我々コンサルタントは、こうした企業の常識から自由な立場で物事を見ることができる。  

『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言2<176> 


¶ ! 意義③ 「因果関係」を徹底的に追求できる
三つ目の理由は、コンサルタントは物事を徹底して因果関係で捉える、ということにある

 ! 意義③ 「因果関係」を徹底的に追求できる
 三つ目の理由は、コンサルタントは物事を徹底して因果関係で捉える、ということにある
。この視点が、企業にとって非常に重要なのだ。
 例えば、過去に売れた商品と売れなかった商品をリストアップして、そこから売れた理由、売れなかった理由を分析したり、グラフを描いてアンケートの結果の相関関係を捉えたり、というようなことは、企業の忙しい日常の中で、まず行われることはない。
 だから私はある企業のコンサルティングに入ったら、「売れている商品〇〇個と、逆に売れていない商品〇〇個を見せてください」「トップセールスとダメセールスを各二人紹介してください」などとお願いすることが多い。そして、その因果関係を分析し、「売れる商品の共通点」「売れない商品の共通点」「売れるセールスの共通点」「売れないセールスの共通点」を分析するだけで、企業の人は目からウロコが落ちたような顔をする。だが、これは魔法でもなんでもなく、因果関係を徹底して考えれば誰にでも簡単に導き出せる結論なのだ。  

    『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言3<177> 


¶ ! 意義④ 戦略立案には技術と経験が必要
四つ目は、戦略を設計するにも技術と経験が必要なことだ。そして、戦略コンサルティング・ファームはそのための豊富な経験と人材を持つ、戦略立案のプロである

 ! 意義④ 戦略立案には技術と経験が必要
 四つ目は、戦略を設計するにも技術と経験が必要なことだ。そして、戦略コンサルティング・ファームはそのための豊富な経験と人材を持つ、戦略立案のプロである。
 
技術と経験がない人が戦略を立てようとすると、往々にして陥ってしまうワナがある。それは、過去の延長で未来を見てしまうということだ。未来を予測することは本当に難しいが、一つだけ言えることがあるとすれば、「未来は過去の延長線上にはない」ということ。テン、テン、テンの上には未来はないのである。
 戦略とは、未来に向けたものでなければ意味がない。そして、未来は変化する。だから、未来の変化を見越して戦略を立てる必要がある。  

    『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言4<178> 


✔ 出典元

『コンサルティングとは何か』
2011年5月10日 第1版第1刷発行 PHP研究所


✍ 編集後記

🔶  『コンサルティングとは何か』は堀氏の経歴に違わない内容の本です。堀紘一氏が執筆したすべての書籍の底流に流れているのは、まさに「本質」です。

すぐに廃れてしまうハウツーものとは根本的に違います。

私たちは新奇さに目を奪われることなく、常に「本質」とは何かに着目する姿勢を貫きたいですね。

勉強は一生続けることが大切です。世の中は常に進歩しているのですから。劇的な変化にも必ず「予兆」はあります。感度の良いアンテナを張り、見逃し、聞き逃ししないようにしましょう!

「まだ若いし時間があるからまだいいや」とか「高齢だからもう勉強はしなくていい」という考え方は改めた方が良いです。

勉強は一生を通じて行なうことです。もちろん、読書だけが勉強ではありません。いろいろなことを経験するのも勉強です。

失敗から学ぶことはたくさんあります。失敗は経験したからです。チャレンジしたから失敗したのです。失敗したくなければ何もしないことです。
しかし、それでは何事もなしえません。

書籍は手許に置いておけば、いつでも何度でも参照することができます。
自分で「ここは重要だな」と思った個所に色鉛筆で線を引くとか、付箋を貼るとかしておけば、後で読み返した時、「当時はこんな個所に着目したのだな」と思い出すことができます。

逆に、見落としていた個所や、当時は重要と思っていなかった事柄が重要なポイントだったと気づくこともあります。

「この本は良書だ」と思ったらその本を何度も読み返すことが重要です。

一度読んだくらいですぐに理解できたという著書は、中身は大したことはないと判断するべきでしょう。「韋編三絶」という言葉がありますね。

私がnoteに「名言集」を投稿する際に、ごく一部を切り取って紹介するのではなく、その言葉はどのような文脈で発せられたのかが重要だと考えています。そのため、関連した前後もできるだけ紹介するようにしています。

そして、投稿する際に、堀紘一氏をはじめ、数多の著名な人物の書籍を再読する機会を得ることが私にとってかけがえのないことだと考えています。

なぜなら、最初に読んだ当時と、年を取ってから再読した時を比較すると、「気づき=重要な点」が異なると思ったことが何度もあったからです。

速読ですぐに読めてしまうような本は中身が薄いと思っています。
例えば、哲学書が速読で理解できますか? じっくり考えながら読まなければ理解のための手がかりさえ見つけることはできないでしょう。

つまり、速読できる本とできない本があると考えています。


🔷「戦略とは、未来に向けたものでなければ意味がない。そして、未来は変化する。だから、未来の変化を見越して戦略を立てる必要がある」

堀氏がここまで言い切れるのは、豊富な経験を積み、多くの実績を残してきたからです。

戦略は現状の問題解決をするためだけのツールではないということです。
つまり、点ではなく線で考えなくてはならないということを堀氏は教えています。

さらに、シナリオプランニングなどのツールを用い、シミュレーションを繰り返し行い、未来に先回りし、戦略を立てることが必要になると私は考えています。とても難しいことではありますが、やりがいのあることです。



⭐参考データ

戦略系コンサルティングファーム一覧【日系・外資系 厳選25社】


1 マッキンゼー・アンド・カンパニー出身者で著名な人物は、大前研一氏
2 ボストン・コンサルティング・グループ出身者で著名な人物は、堀紘一氏
9 ドリームインキュベータの創業者は、堀紘一氏



経営コンサルタントの費用相場と料金体系

上記ウェブサイトによれば、以下のようなポイントがあるそうです。
(2019年05月10日(金))
1 主に3つの契約形態 
 ・
顧問契約型 月に1~2回程度の訪問で月額20万円~50万円程度
 ・時間契約型 1時間あたり5000円~10万円
 ・成果報酬型 内容によりばらつきがあるため、一概には言えません。

2 契約費用の2つの変動要素
 ・
経営コンサルタントの経験・実績
 ・会社の規模

3 顧問契約期間
 ・
年間契約(1年~)
 ・短期契約(4~6か月)
 ・スポット契約(1か月)

4 経営コンサルタントの選び方 5つのポイント
 ・
経営改善の実績が豊富な実力あるコンサルタントか
 ・自社が掲げる経営ビジョンをしっかり理解し、実現のためのアイデアを
  提供してくれるコンサルタントか
 ・現状のキャッシュフローを的確に整理し、将来予想されるキャッシュフ
  ローの把握もしたうえで、的確な経営助言ができるコンサルタントか
 ・ひざを突き合わせて、親身に相談に応じてくれるコンサルタントか
 ・目先の利益を優先せず、中長期的な視点に立ってアドバイスしてくれる
  コンサルタントか

自明のことですが、経営コンサルタントも人間ですから、自社との相性も考慮する必要があるでしょう。


🔶「はじめに」にこんなエピソードが記されていました。

 私は、ハーバード在学中の二年間、それこそ毎日休みなく勉強に励んだ。その努力が、ハーバード三〇〇年の歴史の中で、日本人初の金バッジの栄誉へとつながったかと思うと、感慨もひとしおだった。
 ちなみに、ベイカー・スカラーの名は、ハーバードに多額の寄付をしているベイカー氏への謝意を表している。図書館もベイカー・ライブラリーと呼ばれている。東大に多額の寄付をした安田財閥の名を取って、安田講堂と呼ばれているようなものだ。
 晩餐会のさなか、私は二年前に言われたビショップ教授の言葉を噛み締めるように思い出していた。教授は、私をからかったわけでも何でもなかった。「君は最高の学問をしている」という言葉の意味が、「何が問題か」を定義することがビジネスの世界では最も重要な問題であるということが、今の私にははっきりとわかる。そして、教授を訪ねたまさにあのとき、私は深い学びの場にいたということも……。

 『コンサルティングとは何か』堀紘一 
pp. 6-7 

✒ 堀 紘一氏の略歴

ドリームインキュベータ代表取締役会長。
1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、1973年から三菱商事に勤務。

ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction (Baker Scholar)を取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。

1989年より同社代表取締役社長。

2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行なうドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。

同社を2005年9月、東証1部(現・東証プライム:注 藤巻隆)に上場させる。

2006年6月、同社会長に就任。

主な著者に、『世界連鎖恐慌の犯人』(PHP研究所)、『突破力』『「真のリーダー」になる条件』(以上、PHPビジネス新書)、『人と違うことをやれ!』『30代から大きく伸びる人の勉強法』(以上、PHP文庫)、『一流の人は空気を読まない』(角川 one テーマ21)、『新版 リーダーシップの本質』(ダイヤモンド社)、『ホワイトカラー改造計画』『「心の時代」の企業革新』『21世紀の企業システム』(以上、朝日文庫)、『一番いいのはサラリーマン』(扶桑社文庫)など多数。
(『コンサルティングとは何か』の著者紹介から)


✒ 堀 紘一氏の略歴補足

2020年に堀氏はDIの取締役を退任し、DIは電通の傘下となりました。
近況は下記をご覧ください。
「セカンドライフ」を謳歌しているようです。



⭐出典元: 『コンサルティングとは何か』



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