伊藤雅俊の商いのこころ 第10回
ヨーカ堂は上場し、大企業になってから、世間の厳しい目に晒されることになりました。
総会屋対策は上場企業にとって、頭痛の種でした。
そんな折、ヨーカ堂は、総会屋に利益供与商法違反の容疑で、逮捕者を出しました。
狙い撃ちされたというべきでしょう。
伊藤さんは回想しています。
「大企業になったヨーカ堂を見る世間の目と、中小企業経営者の意識が抜けない私自身の間にズレが生じて、問題意識と対応を鈍らせた面もあるだろうと思います」
1992年(平成4年)10月、総会屋に利益供与した商法違反の容疑でヨーカ堂の監査役と幹部社員が逮捕されたのです
大企業になったヨーカ堂を見る世間の目と、中小企業経営者の意識が抜けない私自身の間にズレが生じて、問題意識と対応を鈍らせた面もあるだろうと思います
うわべだけの、いいことだけしか書かない社史というものが、私は嫌いなのです
⭐出典元 『伊藤雅俊の商いのこころ』
➳ 編集後記
この記事を最初にアメブロに投稿したのは、10年前(2014-04-30 23:37:23)のことです。
伊藤雅俊さんは2023年3月10日に逝去しました。享年98歳でした。
ご冥福をお祈りします。
伊藤さんは自分のことを評して「ペシミスト」と語っていますが、経営者は最悪のことを頭に入れてじっくり考え、決断出来たら速やかに実行するという責任があります。それができなければ経営者になるべきではありません。
日本株ストラテジストのピーター・タスカ氏の「賢者は最善を望みながら、最悪を覚悟する」という言葉が蘇ってきました。
🔴「1992年(平成4年)10月、総会屋に利益供与した商法違反の容疑でヨーカ堂の監査役と幹部社員が逮捕されたのです」
当時は、総会屋が幅を利かせていて、株主総会の席上で、無茶な要求をすることがありました。総会屋が総会の席で騒ぎを起こすことを防ぐために利益供与(お金を渡し、黙らせる)していたことが、発覚したのです。
現在では、総会屋は表立ってはいません。いないというよりも締め出されたため、総会に出席することは出来なくなりました。
総会屋に取って代わったのは、アクティビスト(物言う株主)です。
彼らは、「ある事業が本業の足を引っ張っているので、分社化するか、売却せよ」と要求します。収益性を向上させ、株価を上昇させるためです。
日本の現状の株式保有に関するルールに、「5%ルール」というものがあります。発行済み株式の5%を超えて保有したら、内閣総理大臣等に届けなければならないというルールです。
5%を超える株式を保有すると大株主として、会社四季報等の株主蘭に掲載されます。
5%ルール
伊藤雅敏さんの話に戻しますと、総会屋への利益供与事件が発覚後、伊藤さんは社長を辞任し、相談役に退きました。
ただし、伊藤氏は創業家ですから、イトーヨーカドーから完全に手を引いた訳ではありませんでした。
次の記事をご覧ください。その後の経緯が書かれています。
創業家としての気概を感じさせるエピソードでしたね。
(2,995 文字)
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