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盛田昭夫 『21世紀へ』(018)



盛田昭夫 『21世紀へ』(018)

盛田さんは「競争」という言葉を何度も使っています。
世の中は競争がなければ、良くなっていきません。

こんなことを考えてみました。
ある町にスーパーマーケットが1つしかなかったとします。

周囲にはその他には店がなく、住民はそのスーパーを利用するしかありません。

そうすると、どういうことが起きるかといいますと、お分かりのようにスーパーは価格を自由に決められます。

競争相手がいないのですから、やりたい放題も可能です。
住民はそのような状況でも従わざるを得ません。

そうした状況を変えるには、競合他社が進出することです。
お互いに切磋琢磨して、より良いサービスを提供しようとすれば、住民にとって大いにプラスになります。

今、小学校や幼稚園では、徒競走などで順位を付けないそうです。
同時にスタート(機会の平等)して、ゴールする順位は1位、2位、3位・・・(結果の不平等)となるはずが、全員同着(結果の平等=不公平)はおかしいですよね。

つまり、一所懸命にやって成果を上げても、適当にやって成果が上がらなくても同じ評価を受けるということです。

世の中はすべてランク付けされます。

小さいうちだから「結果の平等=不公平」が許されるというのは、モンスター・ペアレンツのエゴでしかありません。

世の中には、もっとおかしなことがあります。
チャンスを平等に与えないことです。門前払いです。
これは不公平極まりないことですが、官公庁や業界の慣習やしきたりでそうなっていることがあります。

最終的に、割りを食うのは「生活者」であることを忘れてはなりません。

健全な競争は、社会の発展のため、人の向上のために欠かすことができない大切なものです。


『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック


目次

はじめに

第1章 経営の原則

第2章 人材の条件

第3章 マーケットの創造

第4章 国際化への試練

第5章 経済活性化の原理

第6章 日米関係への提言

第7章 変革への勇気

第8章 日本国家への期待

第9章 新世界経済秩序の構築

あとがき




第2章 人材の条件

「新入社員への手紙」(1967年)から


他人の教えを受けても、その上に自分の知恵を加えて、自分の道を切り拓らかねばならない。それには、君は自分の力をいつでも磨く努力をしていなければならない

 会社がいつも前進するためには、他人の踏んでいない道を進まなければならない。

 他人の踏んでいない道を進むためには、他人の教えをそのままやっていたのでは間に合わない。他人の教えを受けても、その上に自分の知恵を加えて、自分の道を切り拓らかねばならない。それには、君は自分の力をいつでも磨く努力をしていなければならない。自分の特徴を活かし、その特徴を毎日磨き、向上させる努力を続けなければならないのである。 

21世紀へ 盛田昭夫 052 p. 85



自分の力は自分自身で磨かなければならない。そのためには、いつでも競争には必ず勝つというファイトを持っていることが大切だと思う

 自分の力は自分自身で磨かなければならない。そのためには、いつでも競争には必ず勝つというファイトを持っていることが大切だと思う。競争がいやなら、「会社に入ったのが間違いなのだ」と考えねばならない。

21世紀へ 盛田昭夫 053 p. 86



社員の一人一人がもっとも効果的に働くということがいちばん大事だ

会社は競争をしている。競争に勝つためには、やはり最小限の努力で最大の効果をあげること、つまり、社員の一人一人がもっとも効果的に働くということがいちばん大事だ。君が一〇〇の力を出せるなら、その一〇〇の力を本当に前向きに、会社の戦力になるように使ってもらいたい。それによって、君の実力は一〇〇パーセント仕事のうえに活かされ、会社を前進させる力になる。

21世紀へ 盛田昭夫 054 pp. 86-87  



盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田さんが、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという悲痛な気持ちが伝わってくる本です。

盛田さんの「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることの多くが当たっています。
盛田さんの慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

本書をアマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられることでしょう。


🔴「社員の一人一人がもっとも効果的に働くということがいちばん大事だ」

企業や組織はチームプレーが基本です。個人が好き勝手にやっていては、船頭多くして船山に上るとなってしまいます。

企業や組織が目指す方向へ全員が力を合わせて取り組む必要があります。

しかし、企業や組織は個人が集まってできたものです。個人個人の力が弱ければチーム力は向上しません。弱点を補いあっていくという相互補完という考え方がありますが、能力の高い者が弱い者に足を引っ張られる恐れがあります。そうなるとチーム力は弱体化します。

野球やサッカーはチーム力が強い方が勝ちます。当然です。
野球で言えば、4番打者ばかりかき集めても、勝てません。なぜなら、打順によって必要とされる技術や状況判断力が異なるからです。

全員がホームランを打てるわけではありません。状況に応じて、送りバントや進塁打が求められることがあります。その場面できちんと仕事ができることが要求されます。

打撃だけでなく、守備でも同様なことが言えます。
守備力が弱いと、多くの失点をする可能性が高いです。ピッチャーが打ち取ったと思ったら、野手がエラーして傷口を広げ、大量失点につながるケースはよくあります。ゲームの流れが支配します。

総合力とはそういうことです。

サッカーでも同様のことが言えます。
ピッチに立っている11人はそのポジションにおいて要求される能力は異なります。ベンチ入りの選手もいつ交代で出場することになってもよいように十分な準備をしています。

基本的に次のことが言えます。
FWは得点すること。MFは得点に絡んだり、ゲームメイクすること。そしてDFは失点しないように相手の攻撃を封じること。GKは最後の砦です。相手のシュートをパンチングやキャッチして得点を許さないこと。

もちろん、現代のサッカーはFWも前線での守備も求められます。DFが攻撃参加することは珍しいことではありません。

何が言いたいかと言いますと、チーム力は個の力が強くならないと全体として強くならないということです。

個人が弱いと、相手チームはその弱点を突いてきて倒そうとします。ほかの選手がカバーしようとしますが、負担が大きくなって失点する機会が増えてしまいます。

私は、盛田さんの「社員の一人一人がもっとも効果的に働くということがいちばん大事だ」という言葉は、上記のように解釈しています。



盛田さんは、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンでもありました。表現がダサい? 古い?



⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。

ここ数十年で業態を変えてきたことは、世の中の変化に素早く対応できることを示しています。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで9年前(2014-07-21 22:32:45)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1  


ソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元



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藤巻 隆
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