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盛田昭夫 『21世紀へ』(016)




盛田昭夫 『21世紀へ』(016)

先月(2014年2月)、ロシアのソチで開催された、冬季オリンピックで、男子フィギュアスケートの羽生結弦選手が、日本男子初の金メダリストとなりました。

さらに、スケボーハーフパイプで最年少(15歳)の平野歩夢選手が銀メダル、スキージャンプでベテラン葛西紀明選手も銀メダルを獲得するなど、
全メダル数8個という成果を収めました。

メダル取得者には、「プロフェッショナリズム」があった、と思っています。

たとえアマチュア選手であっても(平野歩夢選手はプロ)、プロ意識が最後まで持続したのです。

プロ意識とは、勝つために努力するのは当然のことで、結果が全てという意味です。

アマチュアは努力したことが讃えられ、結果が思わしくなくても、評価されます。

そうした両者の違いは、プロフェッショナリズムの有無にある、と考えています。

ビジネスにおいても全く同様で、成果を出せなければプロではないのです。

「成果は出せなかったが、よく頑張ったな」と言われているうちは、アマチュアである、と自覚しなくてはなりません。

そのようなことを教えているのが、盛田さんの言葉だ、確信しています。

『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック

目次

はじめに

第1章 経営の原則

第2章 人材の条件

第3章 マーケットの創造

第4章 国際化への試練

第5章 経済活性化の原理

第6章 日米関係への提言

第7章 変革への勇気

第8章 日本国家への期待

第9章 新世界経済秩序の構築

あとがき




第2章 人材の条件

「新入社員への手紙」(1967年)から


参加する以上は、そのオリンピックで勝たなければならないのだ――これが第一なのである

 スポーツのオリンピックには、よくいわれる有名な言葉がある。「オリンピックは、参加することに意義がある。勝敗は二の次である」というクーベルタンの言葉だ。しかし、われわれのビジネス・オリンピックでは、参加することに意義がある、というような悠長なことはいっておれない。参加することだけでは全然意味はない。参加する以上は、そのオリンピックで勝たなければならないのだ――これが第一なのである。 

21世紀へ 盛田昭夫 046 pp. 79-80 



結論は、われわれのいちばん得意な、電子工学の技術を活かす以外に勝つ方法はないということだった。だから、われわれはこの技術を活かして、なんとかして新しいものを開発していこうという決心をした

 井深社長と一緒に、われわれ少数の者がうちの会社を始めたとき、われわれの会社が生き延びるためには何をしたらよかろうと、いろいろ考えた。結論は、われわれのいちばん得意な、電子工学の技術を活かす以外に勝つ方法はないということだった。だから、われわれはこの技術を活かして、なんとかして新しいものを開発していこうという決心をした。それ以来私たちは、日本で最初のテープレコーダーとか、世界で最初のトランジスタ・テレビというように、日本で最初、世界で最初のものをたくさん開発してきた。

21世紀へ 盛田昭夫 047 pp. 80-81 



得意なことだけ一生懸命やることによってのみ、競争に勝てる――これは簡単明瞭な原則である

 いつまでも勝ち抜くためには、われわれの貴重な戦力を本当に得意な専門的なものに集中しなければならないのだ。オリンピックで、いろいろな種目で勝つようなことは、われわれにはできることではない。やはり、自分の得意なことで勝つ以外にないんだということを、よく知らねばならない。得意なことだけ一生懸命やることによってのみ、競争に勝てる――これは簡単明瞭な原則である。
 狭い専門分野でとことんまで努力をしたならば、そこでは誰にも負けない実力がつけられるものだと、私たちは考えている。われわれの得意の分野では誰にも負けないぞ、という自信が持てるものなのだ。

21世紀へ 盛田昭夫 048 pp. 81-82 



盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田さんが、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという悲痛な気持ちが伝わってくる本です。

盛田さんの「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることの多くが当たっています。
盛田さんの慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

本書をアマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられることでしょう。


🔴「得意なことだけ一生懸命やることによってのみ、競争に勝てる――これは簡単明瞭な原則である」

この一文には賛否両論があるでしょう。1つは強みをさらに強化するという考え方です。もう1つは弱点を補強するという考え方です。

どちらが良いとは一概に言えませんが、苦手な分野を努力するよりも、自分の得意な分野に重点を置いて努力するほうがやりがいはあるでしょう。

つまり、突出した分野で勝負するか、あるいは平均点を良くすることを重視するか、ということです。

「好きこそものの上手なれ」という諺があり、「下手の横好き」という諺があるように常に両面があるということでしょう。

私は、自分が得意と考えていることで勝負したほうが良いと考えています。
一点突破することです。

その結果、負けても諦めがつきます。努力が足りなかったということです。
捲土重来。いっそう努力すれば良いのです。

一見すると矛盾していると思われるかもしれませんが、他人の評価を気にしすぎないことが大切です。客観的な評価はできません。結局はみな主観的評価なんです。

他人は他人、自分は自分です。



盛田さんは、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンでもありました。表現がダサい? 古い?



⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。

ここ数十年で業態を変えてきたことは、世の中の変化に素早く対応できることを示しています。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで9年前(2014-07-18 22:22:07)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1  



ソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元



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藤巻 隆
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