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【シリーズ 半導体 1】 半導体は社会システムの「心臓」「神経」「頭脳」

🔷 企業だけでなく、国にとっても半導体はきわめて重要な戦略製品ですが、30年間日本が負け続けた理由を、当時の半導体業界と関わりのあった元経産省のキャリア官僚が証言しています。

半導体

 半導体が主役

 先にお断りしておきますが、私は専門家ではありません。その代わり素人が素人なりに自分で調べ、自分で考えた末、将来の日本が産業「再」立国をするためには、半導体が主役にならなければいけない、と強く感じています。

  そして、最後に書きましたが、今回の記事を書くきっかけとなったのは、ある「証言」がたまたま見つかったからでした。

 

そもそも半導体って何?

 『半導体とは何か』と問われると、読んで字のごとく、半分導体という意味である。つまり電気をよく通す金属などの導体と、電気を通さないガラスなどの絶縁体との中間の物質が半導体である(「半導体とは何かー基礎材料から回路、システムまで」 津田建二)

 これでは分かったような、分からないような定義です。

  別の見方をすれば、「今は社会システムの『心臓』、『神経』、『頭脳』とも呼ばれている」(同上)

 こちらのほうが抽象的かもしれませんが、より重要度がイメージしやすいかもしれません。

  では、本題に入っていくことにしましょう。

 証言したのは、元キャリア官僚の宇佐美典也氏です。

 

🔷 宇佐美氏の半導体業界との関わり

  宇佐美氏の証言を抜粋します。担当者でなければ知り得ないエピソードが続出します。

 ・宇佐美氏の半導体業界との関わり

 「私は2005年4月から2012年10月まで7年半ほど経産省で働いていたのだが、偶然にもその間半導体業界との関わりが大変深かった。

(中略)

 地域経済産業グループで工場立地支援策を担当することになったのが半導体業界との関係の始まりだった」

  「台湾や韓国の半導体業界の支援措置は大胆な税額控除―電気料金の大幅な割引といった具合で、日本とは比較にならないほど大規模なものだったので「こりゃ勝てんわ」と目を丸くした記憶がある。(私は下っ端だったので事後に共有された議事メモを見ただけである)」

  「次に異動した産業技術環境局では、国家研究開発プロジェクトの知財(「バイ・ドール制度」と呼ぶ)の取り扱いの見直しなどを担当することになり、知財の側面から半導体業界と関わることになった

 「『制度を作るだけではなく、こうした研究開発の現場を見てみたい』という思いが高まり人事に希望を出したところ、実際に国家プロジェクトのマネジメントをする立場としてNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ※現・国立研究開発法人)の電子・情報技術開発部に出向することになった」

 「経産省―NEDOはこの予算(年間200億円弱:注 藤巻)を産業技術総合研究所つくばセンターのスーパークリーンルーム(SCR)を中心に投下し、研究拠点の整備を図っていたのだが、同時期にIMEC、SEMATECHといった欧米の研究開発拠点はこの数倍の予算が投じられていたつくばでは「日本企業だけ」を集めて研究開発をしていたのに対し、欧米の研究機関では世界中から半導体企業が集まっていたことが規模の違いの根本的な理由だった」

  「1980年代に50%を超えるシェアを獲得して世界を席巻していた日本の半導体業界の競争力の源泉は「超LSI技術研究組合」はじめデバイスー装置メーカーが共同で研究する体制(アメリカでは独禁法上の観点からその手の共同研究を推奨していなかった)及びその結果としての製造技術レベルの高さと、民生品中心の開発体制にあった

アメリカはそんな日本の半導体産業の競争力の源泉について詳細に分析し、日米半導体協定を通じて日本の半導体業界の手足を縛った


次の証言が<ポイント>

 「当時の経産省―業界の決断は『撤退戦と割り切り、戦線を大幅に縮小して、これまでのPJの研究成果で世界でシェアを取れそうな領域に注力して世界にオープンな研究開発PJ(プロジェクト:注 藤巻)を企画する』というものだった。具体的には『EUVマスクブランクス検査装置及びレジスト』と『次世代メモリ及びそれを使ったコンピューティング』に絞りこんで予算を投じ、前者にはTSMCやサムスンと言った企業の参画も認めた。そして結果的にこれは上手くいった」

  「前者に関しては国内のレーザーテック社JSR社等が世界シェアのほとんどを取り、少なくとも装置―材料分野で半導体の最先端領域の日本企業の存在感を維持することには成功した。なおレーザーテックの株価はこの10年で250倍になっている

 
 負け続けた半導体業界だったが、日本の強みを活かして巻き返しを図れるのではと宇佐美氏は最後に語っています。

  「ようやく日本の強みというものを活かして、世界と協業出来る体制が整えられるというものだし、実際経産省もそういう体制を取っている

  

🔶 「国策に売りなし」という格言が生きていることを証明する1例です。

 レーザーテックが強い銘柄である理由がわかりました。

 レーザーテックについて言及していた個所を見つけたことが今回投稿するきっかけになりました。

  

<出典元>


<関連したサイト>


 

🔴 画像は写真ACから拝借しました。


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藤巻 隆
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