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【回想録 由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い 第52回】

🔷 「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(5)を掲載します。🔷

 『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』
(ハードカバー 四六版 モノクロ264ページ)
2016年1月25日 発行
著者   藤巻 隆
発行所  ブイツーソリューション

 ✍『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』(第52回)✍

「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(5)を掲載します。

入院

由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録(5)

入院 十七日目(八月六日 木曜日)

 十五時、主治医が回診。「昨夜、ドレーンチューブを自分で抜いてしまった」という話を聞いた。睡眠薬の影響か? 嫌な予感がした。

 十五時十五分、由美子の手を握ると強い力で握り返してきた。

 十五時五十分、「苦しい! 先生(主治医)を呼んで!」と叫んだ。

 意味不明の言葉を口走るようになった。

 「周りのゴミを片付けて」(十六時二十分)

 「タカシの運動した時間を止めて!」(十六時五十分)

 「狩りの結果を書いた? 何対何だった?」(十七時十分)

 明らかに頭が混乱している。

 十九時十分、ベテラン看護師(女性)にこうした言葉を発する理由を訊いた。

 看護師いわく「病気が進行すると、頭が混乱することが多いですね」。

 いよいよ覚悟しなくてはならない時が来た、と思った。


入院 十八日目(八月七日 金曜日)

 病室の天井を見つめることが多くなった。話しかけても返答しないことがある。意識が薄れつつあるのか? とても心配だ。

 十四時五十分、病室が変更になった。四〇六から四〇一へ。スタッフステーションの真横の病室だ。いつ急変しても、医療スタッフが素早く対応できるようにとの配慮だろう。

 十九時三十分頃、看護師から「簡易ベッドを用意しますので泊まれますが、どうしますか?」と訊かれる。

 「泊まります」と即答した。

 一旦帰宅し、二十時三十分頃、再度病室へ。可奈を帰宅させた。

 二十一時四十分、たんが詰まり、看護師二人で吸引。

 二十二時三十分、再度たんが詰まり、吸引。息苦しそうだ。

 モニターを見ると、心拍数は一二五前後を行きつ戻りつしている。

 二十三時三十三分、心拍数は一六〇に達した。

 『入院日誌 あれやこれ』を書いていたことを知る。とても目を通す心境にはなれない。

 看護師から「休まれたほうがいいですよ」と声をかけられたが、とても寝る気になれない。それでも「十二時になったら休みます」と答えた。

 簡易ベッドに横になったが、由美子の様子が気になり眠れない。そのまま明け方まで目が冴えて起きていた。一睡もできなかった。

 喉で呼吸するようになった。相当苦しそうだ。これ以上、由美子に「頑張れ」とはとても言えない。もう充分に頑張った。

(PP.118-122)



➳ 編集後記

第52回は「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(5)を書きました。

当時の状況を振り返ると、涙を堪えるのがつらくなります。

次回は、入院最後の日誌になります。この日誌で、一番つらく、哀しい場面を記述しています。








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