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悪意 vs 企業 カスハラ、炎上・・・ 揺らぐ性善説 2023.03.27 2/3
日経ビジネスの特集記事 86
悪意 vs 企業 カスハラ、炎上・・・ 揺らぐ性善説 2023.03.27 2/3
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
CONTENTS
PART 1 スシロー「ペロペロ事件」が映し出すSNSで正義感は反転 暴走する消費者
PART 2 「三方よし」はもう限界 もろくも崩れる性善説 カスハラにあらがう術
組織にも巣食う悪意の処方箋
PART 3 悪意の予兆を見逃すな 犯罪、不正に迷惑行為 テックで挑む「防衛術」
木村花さんの母 「その投稿は優しいですか?」
PART 4 日本人は「いじわる」気質? ”愛情ホルモン” の功罪 悪意を昇華させるには
第2回は
組織にも巣食う悪意の処方箋
PART 3 悪意の予兆を見逃すな 犯罪、不正に迷惑行為 テックで挑む「防衛術」
を取り上げます。
今週の特集記事のテーマは
利便性を追い求めてきた私たちの社会システムが「悪意」を増長させている。人と人とを結ぶSNS(交流サイト)は悪意を拡散・増幅する装置としても機能する。不透明感の強い社会に渦巻く負の感情は、個人や企業のささいなミスを見逃さない。怒りの対象を「悪」と断定した人々は、容赦ない暴言や嘲笑で“生贄(いけにえ)”を攻撃する。歯止めが利かない悪意の暴走は、個人や企業、社会すら壊死(えし)させる猛毒と言えるだろう。性善説を信じるのは大切だ。だが、降りかかる火の粉からステークホルダーを守らねばならない。
(『日経ビジネス』 2023.03.27 号 p. 009)
です。
ここ数年で目立った社会現象の1つに、スマホを使った違法行為をネット上に流して面白がる人たちが出現したことです。
まったく悪事という自覚がないのです。それどころか、目立ちたくて英雄気取りになっているのです。しかし、一旦ネット上に投稿された画像、動画、テキストは拡散され、消去することが困難になります。
しかも、事業者からすると「迷惑行為」であり、「立派な犯罪」です。
どうしてこのようなことが平然と行われるようになったのでしょうか?
はたから見れば明らかに悪事をはたらいていると考えられるのにもかかわらず、本人たちに全くその自覚がないことが問題です。
ただし、メディアに取り上げられるそうした「事件」だけでなく、企業や組織にも「悪意」は広がっています。
今回取り上げる内容に関し、『日経ビジネス』は、もはや性善説では立ちいかなくなったと指摘しています。
性悪説に基づいた対策を講じなくてはならないのでしょうか?
そしそうであれば、悲しいことです。
組織にも巣食う悪意の処方箋
PART 2では「外部から企業に向けられる悪意」に焦点を当てた。だが、悪意は企業内部にもはびこる。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 018
退職者が引き起こした事件は他人事ではありません。対岸の火事と考えてはいけません。
計測器などを手掛ける共立電気計器(東京・目黒)の元従業員が1月、不正アクセス禁止法違反容疑などで逮捕された。この男は2022年6月に会社のサーバーに不正接続し技術情報などを削除したとされ、復旧コストは約660万円に上ったという。報道によれば、男は人間関係の悪化を理由に21年12月で退社していた。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 018
退職者との関係構築を怠ると、後々大きな禍根を残すことにもなりかねません。
大きな "ツケ" を支払うリスク
組織内で醸成された悪感情への適切な対応を欠いた企業は、後に大きな “ツケ” を支払うリスクを抱える。従業員の声に耳を傾け、悪意の発生を抑制する仕組みづくりが求められているのだ。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 018
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アルムナイ(卒業生)ネットワークを築く会社は増えている。三井住友海上火災保険や野村証券などが、ハッカズークのシステムを利用している。同社執行役員アルムナイ事業責任者の實重遊氏は、「退職者を『裏切り者』扱いしてはいけない」と説く。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 018
従業員のストレスを可視化する試み
「従業員のストレスの可視化」に取り組む企業もある。服の修繕や保育園の運営を手掛けるビック・ママ(仙台市)だ。同社はアンケートシステム「マインドウェザー」を開発し20年に導入。職場環境に関する意見を毎週、従業員から集めている。まず、勤務中の気分を「晴れ(=良い)」から「雷雨(=悪い)」まで5段階で問う。「あなたがもっと幸せになるために、何か手助けできることはありますか?」など記述回答の設問もある。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 019
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「マインドウェザー」の解説
従業員が職場での気分や会社への意見を寄せられるシステム「マインドウェザー」の画面。衣服修繕など各地の小規模な現場にいる従業員一人ひとりの声に気づくことができる
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 019
「マインドウェザー」が一定の成果を挙げたことから、外販することにしたそうです。社内で実績を積んだことで、改良を重ね、外販できるまでになったのです。
守井氏は、ある従業員が在職時や退職後に、同僚や会社に対して悪質な行為に及んでいた過去を明かす。「マインドウェザーにそうしたトラブルの前兆が浮かび上がる」と言い、従業員のストレスや悩みの早期ケアにつなげたい考えだ。
マインドウェザーは20年6月から外販を始めた。現在は14社が導入。同システムの22年の売上高は約1500万円、アカウント数は6000~7000だ。守井氏は「今後3年でアカウント数を10万まで増やす」と話す。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 019
*守井氏: ビック・ママ代表取締役の守井嘉朗氏
日経ビジネスは次のようにまとめています。
内部で生まれた悪意は外部のそれと比べて分かりにくい。企業は目を凝らして悪い芽を早期発見し、摘み取る努力が欠かせない。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 019
PART 3 悪意の予兆を見逃すな 犯罪、不正に迷惑行為 テックで挑む「防衛術」
テクノロジーの進化を活用
悪意ある行動を早期に察知できれば、トラブル発生による被害を最小化できる。テクノロジー進化によって“悪意検出”の精度は上がり、利便性も高まってきた。プライバシーにも目くばせしつつ、悪意から個人や企業を守る「防衛戦」は続く。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 020
無人店舗決済システム「ANA FESTA GO」のケース
日本の玄関口、羽田空港の第2ターミナルの地下1階。鉄道の改札口近くにある土産物店「ANA FESTA GO」は無人店舗決済システムのTOUCH TO GO(東京・港)の技術を導入している。同技術を採用した無人店舗は日本各地に30店舗以上あるといい、2023年度中には約100店舗まで拡大する見通しだ。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 020
無人店舗決済システムのTOUCH TO GOの技術には2つの側面があります。
⓵ 万引き防止
⓶ 消費者の利便性
人目のない店舗では万引きなどの犯罪リスクが懸念される。現に、導入を検討している企業からは、盗難に関するリスクを心配する声が多いという。だが、実際に無人店舗を運営する事業者からは、「既存の有人店舗よりも万引きなどの発生率は低下しているという声を多く聞く」(TOUCH TO GOの阿久津智紀社長)。それを可能たらしめているのが、店舗の無人運営ができるように整備された様々なテクノロジーだ。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 020
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TOUCH TO GOのシステム。
店舗の無人化を実現するための
カメラやセンサーは、万引きなどの
防犯リスクを下げるという
副産物も生む
(写真=共同通信)
上の画像を見ると、天井に数多くのカメラやセンサーが設置されていることが分かります。これらによって顧客が商品にタッチし、買い物かごに入れると金額が集計される仕組みとなっているそうです。
さらに、防犯カメラも設置されているそうです。
来店客が手に取った商品が会計時にレジに自動表示されたのは、店内にある無数のカメラやセンサーが利用客の動きを捕捉しているためだ。手に取った商品をこっそりとバッグなどに隠しても、買い物かごに入れていても一緒。未会計のまま店舗を出ようとすれば、出口ゲートは開かない。天井のカメラやセンサーは目立つように設置しており、盗難を抑止する効果もある。
揺らぐ性善説
2023.03.27 pp. 020-021
加えて、店内には別途、有人店舗と同様の防犯カメラも設置している。もし会計を済ませずにゲートを強行突破する来店客がいても、何を盗んだかは無数のカメラとセンサーが把握し、「犯人」の容貌や体格などは防犯カメラが記録する。有人店舗の場合は、万引きされても証拠が残らない場合が少なくない。常時監視している無人店舗なら映像を使って警察などへの被害説明がしやすい。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 021
犯罪の温床となるのは店内だけではありません。トイレの中もそうです。
犯罪の温床となるトイレの“目”
外部の視線を遮断した個室空間という構造上、迷惑行為や犯罪など悪意の温床になりやすいのがトイレだ。誰もが往来できる売り場とは異なり、排せつのための空間であるがゆえに、防犯カメラの設置は「プライバシーの侵害」という課題を抱える。
カメラに頼らず、トイレ内で何が起きているのかを即座に察知する方法はないものか。三協エアテック(大阪市)が見いだした答えは、骨格分析というアプローチだった。
「骨格分析」という新規のアプローチ
骨格分析という耳慣れないアプローチが導入された現場
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「Xeye(エックスアイ)」は、
天井のセンサーで骨格の動きを追う。
右は「破壊行為」の分析例。
様々な行動パターンを、AI(人工知能)を
使って学習させることで精度を高めている
(写真=左:PIXTA)
「骨格分析」とは何か?
例えば骨格モデルが一定期間、床に倒れて動かない場合は「急病人が発生した」と判定する。この他、長時間の居座りや破壊行為、便器外への排せつなど、不審な行動を検知した際に、管理者が持つタブレットに異常を通知する。トイレ内にはアナウンスを流し、迷惑行為や犯罪の抑止を狙う。
骨格の分析はセンサーデバイスの内部で処理されるため、映像として記録が残らない。「骨格だけでは個人の特定が難しいため、個人情報保護法的に問題はないことを弁護士にも確認している」(三協エアテック開発部部長の古橋憲治氏)という。
一方で、何時何分に異常を検知したというログは保存される。トイレの外に設置されている防犯カメラの映像と突き合わせれば、ある程度は個人の特定ができる。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 021
不審な行動と異常の検知という2つの機能
現状、骨格分析の精度は70~80%程度だという。AI(人工知能)の基本的な技術である姿勢推定を活用し、大量のデータを学習させて、将来は90%以上の正確性を目指す。目下の課題は行動パターンの分析だ。
「迷惑行為は非常に多岐にわたる。ちょっとした落書き行為を骨格の動きだけでどこまで捕捉できるかは難しい。服をかける、便座を拭くなど正常な行為を『異常』と判定しないようにする必要もある。想像力を働かせて色々な行動パターンを学習させながら、できるだけ精度を上げていきたい」と古橋氏は展望を語る。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 022
*古橋氏: 三協エアテック開発部部長の古橋憲治氏
デバイスは低価格で簡単に取り付けられる
デバイスはWi-Fiと電源に接続できれば作動するため、照明のように簡単に取り付けられる。駅のトイレ全室に設置すれば、「最終電車が通過した後も、トイレに誰か残っているかが骨格ですぐに分かる」(古橋氏)。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 022
BioQRとは? 「不正転売」防ぐ顔認証+QR
22年夏、1日で数万人を動員した大型音楽フェスが開催された。「会場はさぞや大混乱……」かと思いきや、予想外の光景が広がっていた。行列がほとんど見られない。来場客は流れるように入場ゲートへ進み、瞬く間に会場に吸い込まれていった──。
入場ゲートを通過するスピードは、交通系ICカードのSuica(スイカ)で改札を通り抜ける感覚に近い。iPadに顔を向け、QRコードをかざせば本人確認は終了。おまけに体温測定までできる。「BioQR」と名付けたこの生体認証技術を開発したのはplayground(プレイグラウンド、東京・千代田)。社長の伊藤圭史氏は「人が歩く速さよりも、処理速度のほうが圧倒的に速い」と言い切る。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 022
BioQR の精度はどの程度なのかが気になりますね。
チケット購入時に登録した顔写真と照合することで、購入者以外の入場を防ぐ。BioQRは「不正転売防止」の切り札として生み出された技術だ。顔認証の精度は高く、実際に転売チケットで入場を試みた人が、何人もはじかれていた。BioQRは、顔とQRコードの2つだけで本人確認ができる。QRコードは入場に必要な情報のみ記録しており、顔情報は含まれない。iPadは顔を照合するだけで機器に顔情報は保存されない。つまり、仮にiPadが盗まれても何の情報も流出しない。「iPadには入場可否を判定するための計算方法しか入っていないからだ」(伊藤氏)
揺らぐ性善説
2023.03.27 pp. 022-023
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iPadに顔を向けてQRコードを
かざすだけで本人確認が完了する。
QRコードは紙にプリントアウトしてもよく、
スマホを持たない高齢者や
幼い子どもでも利用できる。
このシステムを導入した大型音楽フェス
では入場がスムーズで、
待機列がほとんど発生しなかった
BioQRが「究極のセキュリティー」となり得る理由
顔認証端末の紛失や盗難による情報流出を防ぐため、BioQRでは生体情報を暗号化して保存するのではなく、そもそも生体情報を保存しないという「究極のセキュリティー」(伊藤氏)に挑んだ。
認証処理はiPad単独で完結するため、オフラインで利用できる。iPadのCPU(中央演算処理装置)に依存するので、「iPadが進化するほど、認識速度も上がる」(伊藤氏)という。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 023
「BioQRの精度は99.9%」が意味することとは?
目指す顔認証の精度は99.9%だという。逆に言えば、1000人のうち1人ぐらい似ている顔であれば、入場させてもいいという考え方に立っている。なぜか。「イベントは性善説で運営すべし。(本人かどうか)怪しいぐらいだと、別に入場させていい。スムーズに入場できるほうが大事だし、本人じゃない場合にほとんどブロックできる技術であれば、不正転売する気はなくなるはずだ」(伊藤氏)
より重要だと考えているのは、明らかな本人を誤認して入場を拒否するミスを撲滅すること。そのために認証の精度を磨く。結果、本人拒否率は0.015%まで低下した。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 023
BioQRのもう一つの利点
BioQRは紙に印刷したQRコードでも認識できるため、老若男女問わず利用できる。北海道旭川市に本拠地を置くバレーボールチーム「ヴォレアス北海道」でも導入済みで、50代以上のファンも含め、ほぼ全員が顔認証で入場するまで定着した。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 024
替え玉受検をAIで監視
受験シーズンになると、数は少ないですが、替え玉受験が発覚することがあります。今までは試験会場で、試験官が見回り、顔写真と本人を照合し、受験者が本人であることを確認するという作業が必要でした。
人間ですから、どんなに慎重に作業を行っても、見落としは皆無ではありません。
このような状況はあまり変化していないと推測されます。
会場や試験官の費用がかかるということから、最近ではウェブテストが主流になってきたようです。
ただし、替え玉受験はなくならないそうです。
そこで新たに登場したのが、AI監視型ウェブテストと呼ばれるものです。
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新型コロナウイルス禍を機に、企業が採用選考で課す適性検査はウェブテストが主流になった。就職希望者は時間や場所を問わず適性検査を受検でき、企業は会場費などのコストが抑えられる。しかし、試験官が不在のため、不正受検を見抜くのが難しいという課題が顕在化した。
解決策として急速に普及しているのが「AI監視型」のウェブテストだ。ヒューマネージ(東京・千代田)が提供する「TG-WEB eye」は21年6月の本格サービス開始から1年足らずで導入企業数が100社を突破した。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 024
AI監視型ウェブテストとはどのようなものなのか
AI監視という名の通り、パソコン内蔵のカメラで受検中の様子を映し出し、AIを使って監視する。いわゆる「AI試験官」が替え玉受検やカンニング、複数人受検など、不自然な行為を検知すると、企業の採用担当者に報告がいくシステムだ。不正をしたかどうかの判断は、最終的に採用担当者に委ねられている。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 024
日経ビジネスの記者の体験談が書かれています。
記者も試しに受検してみた。まずは写真撮影を求められ、テストがAIによって監視されている旨のメッセージが表示された。
「カメラに顔が映るようにまっすぐ座ってください」「途中で席を立たないようにしてください」といった注意事項を確認すると、試験が始まる。受検中は常にカメラが起動しているため、「気を抜けない」という緊張感を覚えた。実際、このウェブテストを実施した企業では、真面目に回答する受検生がほとんどだったという。
「見られていること自体が、不正行為の抑止につながっている」(ヒューマネージ アセスメントソリューション事業部部長の吉原智仁氏)
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 024
監視という言葉のイメージからプライバシーが明らかになってしまうのではないか、という懸念がありますが、その点はどう対処しているのかが気になりますね。
「監視」といえばプライバシーへの配慮が課題となるが、採用試験の場合はそもそも試験官がおり、本人確認は当たり前だ。企業の内定者にAI監視型ウェブテストについて聞くと、「不正対策がなされていて安心した」などの好意的な声が多かったという。
「偽って入社できたとしても、将来自分が苦労する。真面目に受検した人が損をしない、公平、公正な選考を実現したい」(吉原氏)。新たな受検方式として、今後さらに広がる可能性を秘めている。
揺らぐ性善説
2023.03.27 pp. 024-025
このシステムを一言で言えば、現行犯を取り押さえるためのものと考えることができます。
では、こうした不正を未然に防ぐためのシステムはないのでしょうか?
思い出されるのは2022年7月に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件です。
不審な行動をしていた人物を特定し、未然に事件発生を防ぐことができなかったのかということです。
犯行前に不審者を検知
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22年7月、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で発生した安倍晋三元首相の銃 撃事件。「DEFENDER-X(ディフェンダーエックス)」というツールで犯行時の映像を事後解析すると、群衆を映した映像の中でただ一人、赤い枠で囲まれた人物がいた。逮捕された男だ。発砲前の動きから不審者として目星を付けたのだ。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 025
「赤く判定された人物が犯行に及ぶとは限らない。ただ、大きな事件が起きた後に現場の映像を解析すると、高確率で犯人を特定できている」(エルシスジャパン取締役営業部統括部長の小畑修一氏)という。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 025
このシステムは、事件発生後の映像解析を行なうという、事後処理であって、リアルタイムで状況を把握し、事件を未然に防ぐという使い方が現時点ではできていないということになります。
もちろん、プライバシーに介入する可能性があり、デリケートな取り扱いとなることは間違いありません。
街中の監視カメラを例にとれば、通行人の行動を逐一監視し、不審な行動がないか四六時中チェックし、映像に記録している可能性があります。
使い方によっては、顔や身体的特徴を捉え、個人を特定することができるかもしれません。ある特定の人物だけの情報を収集しようとすればできないことはない、とも考えられます。
技術の進化で防げる悪意は増えてきた半面、個人情報を保護する視点が欠かせなくなった。悪意の増幅が社会問題となる昨今、企業は難しいバランス感覚が問われている。
揺らぐ性善説
2023.03.27 p. 025
次回は
木村花さんの母 「その投稿は優しいですか?」
PART 4 日本人は「いじわる」気質? ”愛情ホルモン” の功罪 悪意を昇華させるには
をお伝えします。
🔷 編集後記
「悪意 vs 企業」というテーマで取り上げていますが、ここには大きな問題が横たわっています。プライバシーの取り扱い方や、被害を未然に防ぐためにはどうしたらよいのかという点です。
非常にデリケートな問題であるため、一歩踏み込んだ扱いをしたくても、踏みとどまらなくてはならないというジレンマに陥ることがあります。
トレードオフ(二者択一、二律背反)に頭を悩まされることもあるでしょう。あちらが立てば、こちらが立たずということです。
事件を未然に防ぐためのシステム開発が行われても、そのシステムが採用されるとは限りません。プライバシーの侵害に抵触する恐れがあるからです。
日本社会は、どちらかと言えば性善説で成り立ってきたと言えます。
ところが、社会が変容し、人心にも変化が起き、性悪説に則った方針を採らざるを得ない時代になってきていると感じています。
その理由の一つとして、近所づきあいが希薄になってきたことが言えます。
昔ならば、最近どうも様子がおかしいということに気づいて、ある程度対策を講じることができたと思われることがありました。
ところが、現代では、お互いに隣近所にどんな人が住んでいるのかさえも知らないというケースは特段珍しいことではありません。
事件が起きて初めて、その人物が隣近所にいたことを知るということがあります。
プライバシーの介入はどこまでなら許されるのかというのは、非常にむずかしい問題であり、また時代とともに変化していくものでもある、と私は考えています。
日経ビジネスはビジネス週刊誌です。日経ビジネスを発行しているのは日経BP社です。日本経済新聞社の子会社です。
日経ビジネスは、日経BP社の記者が独自の取材を敢行し、記事にしています。親会社の日本経済新聞ではしがらみがあり、そこまで書けない事実でも取り上げることがしばしばあります。
私論ですが、日経ビジネスは日本経済新聞をライバル視しているのではないかとさえ思っています。
もちろん、雑誌と新聞とでは、同一のテーマでも取り扱い方が異なるという点はあるかもしれません。
新聞と比べ、雑誌では一つのテーマを深掘りし、ページを割くことが出来るという点で優位性があると考えています。
🔴情報源はできるだけ多く持つ
海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。まず信頼性の高い文献に当たってみることが必要になります。
日本の国立国会図書館のウェブサイトや米国の議会図書館のウェブサイトに当たってみるのも良いかもしれません。
もちろん、ロイターやブルームバーグなどの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。
あるいは『日経ビジネス』や『東洋経済』、『ダイヤモンド』、『プレジデント』などの雑誌やウェブ版から情報収集することもできます。これらの雑誌やウェブ版の購読をお勧めします。
あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPTやBardに質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。
ロイター
ブルームバーグ
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