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稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 第3章 自らを慎む 才能を私物化してはならない 第9回




稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 第3章 自らを慎む 才能を私物化してはならない 第9回

はじめに

経営の神様といえば、パナソニック(旧松下電器産業)の創業者、松下幸之助氏ですが、もうひとりの経営の神様といえば稲盛和夫氏と私は考えています。
本著『「成功」と「失敗」の法則』が出版されたのは、今から15年前の2008年9月24日のことです。
平成20年9月24日第1刷発行
致知出版社


実を言いますと、この本をいつ購入したのか覚えていません。そればかりか、積読つんどくでつい最近まで読んでいませんでした。
たまたま、捜し物をしていた時、この本に気づき、手に取り読んでみることにしました。
読み出すと、腹落ちすることばかりが書かれていました。
今までにも、稲盛和夫氏の著作を何冊か読んだことがあります。
例えば、下記のような本です。


これらの著作物に共通することは、稲盛氏の一貫した考え方である、「人間を磨く」ことを絶え間なく続ける、ということです。
これは生涯を通じて行うことです。ですから一朝一夕で結果が出るものではありません。

成功と失敗は、生き方、考え方に基づく選択によるもの


稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則

第1章 人生の目的

第2章 思いの力

第3章 自らを慎む

第4章 道をひらくもの

章立ての順序でエッセンスをお伝えしていきます。
特に印象に残った言葉を抜粋します。
稲盛氏の言葉の真意をじっくり考えてみましょう。


第3章 自らを慎む

才能を私物化してはならない


常に自分を慎み、戒める

 私は、『南洲翁遺訓なんしゅうおういくん』を自分の机のそばに置き、ことあるごとにひも解いています。その中に、
 「己れを愛するのは善からぬことの第一なり。修行の出来ぬも、事の成らぬも、過ちを改むることの出来ぬも、功にほこ驕謾きょうまんの生ずるも、皆自ら愛するが為ならば、決して己れを愛せぬもの也」
 という一節があります。
 これは、「自分を愛すること、つまり自分さえよければ人はどうでもいいというようなことは、最もよくないことである。修行ができないのも、事業が成功しないのも、間違いを改めることのできないのも、また自分の功績におごる心を持ってしまうのも、みんな自分を愛することから生じるのであり、決してそういう利己的な思いを持ってはならない」という意味です。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 
pp. 70-71


 事業を始める人の中で成功し続ける人が少ないのは、自分を愛する心が起こり、驕り高ぶることが多くなり、過信に陥るからであり、真の成功を成し遂げるためには、自分を慎み、自分を戒めることが大切であるというのです。
 このように、西郷隆盛は、成功するためにも、さらにその成功を持続するためにも、常に謙虚でなければならないと説いています。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  
p. 72 



満は損を招き、謙は益を受く

 私は、昭和三十四(一九五九)年に京セラをつくっていただいて以来、従業員のため、支援してくださる方々のため、さらにはお客様のため、ひたすら仕事に打ち込んできました。

 その結果、京セラは大発展を遂げ、やがて昭和四十六(一九七一)年に上場を果たすことができました。創業後わずか十二年という早い上場をとらえて、マスコミや周囲の方々が、私に賞賛の言葉を投げかけてくれました。

 実はそのころ、私にも、西郷が言うように、成功に驕り高ぶり、傲慢ごうまんに陥りそうなときがありました。
 「自分が中心になってつくった会社、自分の技術をベースにして創業した会社、自分が夜もろくろく寝ないで経営してきた会社ではないか」__そのような思いが私の頭をよぎったのです。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp. 72-73


 私は、経営者として、京セラという企業を成功に導いたかもしれないが、それは、天がたまたま自分という存在に、「世のため人のために使いなさい」と経営の才を授けてくれたからであり、その才能を自分のためにだけ使うようなことがあってはならない。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  
p. 74


 もし、自分に才能が与えられているなら、それは従業員のため、お客様のため、そして社会のために使わなくてはならない。そのためには、これまでの成功に驕ることなく、もっと謙虚に、さらに懸命に努力を重ねなければならない。このことに、気がついたのです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  
p. 74


 中国の古典『書経しょきょう』に、「満は損を招き、謙は益を受く」という言葉があります。古来、満ち足りて驕り高ぶる者は大きな損失を被り、一方、常に謙虚に、「相手に善かれかし」と考えている者は、素晴らしい幸運を勝ち取る。これは、まさに時代を超えた世の道理であり、それは二十一世紀の今日も決して変わることはないはずです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  
p. 75


 現代の社会の混迷は、この謙虚さを忘れ、自分だけよければいいという利己的な思いを、多くの人々が持つようになったからだと私は考えています。私たちは、まずは自分自身がいまあることを感謝し、「謙虚でありたい」と常に願い、さらにひたむきに努力を重ねるよう努めていかなければならないと思います。
 そうすることで、個人として、いままで以上に素晴らしい人生を送ることができるに違いありません。また同時に、それは混迷を深める社会を、少しでもよきものにすることでもあると、私は固く信じています。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp. 75-76

✒ 編集後記

『「成功」と「失敗」の法則』は、稲盛和夫氏から私たちへの熱いメッセージです。稲盛氏自身が、人間として、経営者として、数多の成功体験、失敗体験を通じて身につけた不変の法則のエッセンスを述べた書籍です。

頭で考えただけでなく、実践を通じて身につけたものです。

稲盛氏の他の書籍には「利他」「敬天愛人」などの言葉が頻繁に出てきます。どれでも良いので、一度手にとってページをめくってみてください。
何かヒントが得られるかもしれません。

🔷「真の成功を成し遂げるためには、自分を慎み、自分を戒めることが大切である」

この言葉は、自分を律することがいかに難しいことであるかを語っている、と私は考えています。

自分の人生を振り返ってみても、時流に翻弄され、自分を見失っていた時期があったと実感しています。

自戒や謙虚という言葉は、2023年においては「古い」と感じられるかもしれません。ですが、その本質は、稲盛氏が述べているように時代が変わろうと普遍であろうと思います。

「書経」が出てきました。懐かしく感じました。
高校時代、漢文の時間に漢文の先生に四書五経「大学・中庸・論語・孟子 / 詩経・書経・易経・春秋・礼記」を教えていただいたことを懐かしく思い出しています。

50年くらい前のことです。

Bing AIに質問してみました。

中国にはこうした優れた古典があるのに、為政者の傲慢さが目に余ります。為政者たる者は、四書五経のような古典を再度熟読玩味し、内政・外交を行なって欲しいと思います。

日本の権力者も傲慢で、良い手本になる人は極めて少ないですが。
「権力必腐」(権力を持つと必ず腐敗する、作家・高杉良氏のノンフィクションのタイトル)となることは、古今東西変わりません。

稲盛氏の言葉は、私たちの心にストレートに飛び込んできます。
頭で理解できても、腹落ちするという状態に至るには少しの時間を要します。
私は、世間一般で言うほどの立派な人間ではないからです。

稲盛氏が説く言葉は説得力があり、圧倒する力を持っています。
頭で理解するのではなく、心で理解することが大切であると考えています。

稲盛氏の考え方や生き方には、何か宗教的なものを感じるかもしれません。
稲盛氏は実際に仏門に入った経験があります。

詳しくは次のウェブサイトをご覧ください。


更に付け加えるならば、中村天風の影響も受けています。
次の稲盛和夫 オフィシャルサイトに中村天風の言葉の引用が掲載されています。

1982年(50歳)

経営方針発表で中村天風氏の言葉「新しき計画の成就はただ不屈不撓の一心にあり、 さらばひたむきにただ想え、気高く強く一筋に」をスローガンに引用する

稲盛和夫 オフィシャルサイト




日経ビジネス(2022.09.12号)で稲盛和夫氏を特集していました。

この記事の内容を3回にわたってnoteに投稿しましたので、お時間がありましたら、ご覧ください。


<著者略歴 『「成功」と「失敗」の法則』から>

昭和7年、鹿児島県生まれ。
鹿児島大学工学部卒業。
34年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。
社長、会長を経て、平成9年より名誉会長を務める。
昭和59年には第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。
平成13年より最高顧問。
このほか、昭和59年に稲盛財団設立、「京都賞」を創設。
毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。
また、若手経営者のために経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。
主な著書に『人生と経営』『何のために生きるのか』(ともに致知出版社)、『実学・経営問答 人を生かす』(日本経済新聞出版社)、『人生の王道』(日経BP社)、『生き方』(サンマーク出版)、『成功への情熱』(PHP研究所)などがある。 

著者略歴補足 (日経ビジネス 2022年9月26日号)

2022年8月、90歳で逝去。
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