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【回想録 由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い 第8回
🔷 「由美子が遺してくれた大切なもの」のうち「決して忘れることのできない思い出」の前半を掲載します。 🔷
タイトルは『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』
(ハードカバー 四六版 モノクロ264ページ)です。
2016年1月25日 発行
著者 藤巻 隆
発行所 ブイツーソリューション
✍『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』(第8回)✍
「由美子が遺してくれた大切なもの」のうち「決して忘れることのできない思い出」の前半を掲載します。
由美子が遺してくれた大切なもの(1)
決して忘れることのできない思い出 前半
宮部みゆきさんの『火車』に次の一節があります。
「死者は生者のなかに足跡を残していく。
人間は痕跡をつけずに生きてゆくことはできない。脱ぎ捨てた上着に体温が残っているように。櫛の目の間に髪の毛がはさまっているように。どこかに何かが残っている」
(『火車』 新潮文庫 平成十年二月一日発行 平成十一年一月三十日 十一刷 二六五ページ)
病室で、由美子がベッドで、長時間同じ体勢でいたため、お尻が床ずれを起こしたことがありました。とても痛がり、お尻の下にクッションを敷いてあげたのですが、それでもつらいらしく、体勢を変えて欲しくて、私に声をかけました。
「看護師さんのやっているところを見て、同じようにしてくれないかな」
もちろん、私は一般人ですから、医療スタッフのようにうまくやれるはずがありません。それでも、なんとか由美子を抱き起こし、少しでも痛みが和らぐように由美子を少し持ち上げ、由美子の身体の位置をずらしました。持ち上げた時の由美子の重みが両腕に残っています。うなじから漂う、芳香が鼻腔に残っています。
由美子が入院した日(二〇一五年七月二十一日)から毎日、私は面会の最終時刻、午後八時になると、由美子のベッドの横に立ち、由美子の目の高さに視線を合わせるため中腰になり、由美子の左手を両手で優しく握りました。由美子の手の柔らかさと温もりが両手に伝わってきました。
今でも、由美子の左手の柔らかく、温もりのある感触が両手に残っています。由美子の元を去りがたく、両足は鉛をつけたかのように重く感じられ、歩くのがつらかったことを思い出します。退室する前に、「明日も、また来るからね!」と声をかけることを忘れませんでした。そして、病室を後にしました。
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由美子が遺してくれたもの
由美子が遺してくれたものは、
「いつまでも心に残る、非常に多くの思い出」
です。
この本を書こうと思い立ったのは、
由美子との「決して忘れることのできない思い出」を、書き残そうと思ったからです。
由美子がいてくれたから、私は安心して、家事一切を由美子に任せることができました。由美子は外で仕事をしながら、きちんとやってくれました。私が文句を挟む余地はまったくありません。由美子がいてくれたから、私は頑張ることができました。由美子がいなくなって、これから先、どうしたら良いのか、途方に暮れています。
(PP.28-30)
次回に続きます。
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➳ 編集後記
第8回は「由美子が遺してくれた大切なもの」のうち「決して忘れることのできない思い出」の前半を書きました。
このシーンを思い出すと涙が自然に流れてきます・・・。
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