セブン 鉄の支配力 ヒットを作る勝者の流儀 2014.06.16 Vol.83 1/2 2014-07-01 21:53:02
日経ビジネスの特集記事 Vol.83
セブン 鉄の支配力 ヒットを作る勝者の流儀 2014.06.16 Vol.83 1/2 2014-07-01 21:53:02
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
今週号の特集記事のテーマは
イトーヨーカ堂、そごう・西武、ヨークベニマル、デニーズ、ロフト……。グループの深部で進む「セブン化」は、次のヒットを生む土壌となる。セブンという日本最強の小売グループの本質に迫る
です。
PART 1 抗えぬ強者の論理
まず、下の図表をご覧ください。
どの商品も一度は目にしたものばかりでしょう。
ナショナルブランドでもプライベートブランドでもセブン-イレブンの年間販売数量は膨大です。
個別商品を見ると、プライベートブランドのほうが多いですね!
ナショナルブランド、プライベートブランド毎に、上位3位までの商品と販売数量を抜き出してみます。
ナショナルブランド
プライベートブランド
ナショナルブランドは嗜好品が上位を占め、プライベートブランドは食べ物が上位を独占しています。
プライベートブランドの4位は「弁当」で5億500万個もあります。昼食の定番や小腹がすいた時の軽食が並んでいることが分かります。
セブン-イレブン(以下、セブン)の「売る力日本一」を背景に、小売のセブンと、ハムメーカーの日本ハムの力関係が完全に逆転している事例をご紹介しましょう。
ハム業界1位の日本ハムは、これまではセブン専用の工場はありませんでした。2位の伊藤ハム、3位のプリマハムにはありました。
セブンにとって、ハムは単品のハムだけでなく、調理パンや軽食、総菜に使用するハムも必要です。
そこで、ハムメーカーに単品のハムだけでなく、その他の目的のためのハムを納入してもらっているのです。いや、納入させているといったほうが、的を射ているかもしれません。
メーカーは、セブンの要求を飲まないと、ナショナルブランドを店舗から撤去されるおそれがあるため、従わざるをえないのが実情です。
それは、ハム業界1位の日本ハムも例外ではありませんでした。
「セブンの売る力は日本一」だからです。セブンの実力を認めざるを得なかったのです。
ただし、セブン専用工場となると、セブン以外に製品を売ることができないリスクがあります。
この点について日本ハムはどのように考えた上で、工場建設を決断したのでしょうか?
本心を読めば、ナショナルブランド(NB)の納入にも大きな影響があるため、セブンの要求に抗えないのです。
プライベートブランドの(PB)場合、従来、製品にメーカー名と工場名を表示しなくてすんでいました。
今後、明示しなくてはならなくなりました。この措置は、メーカーにとって都合が悪いことになりそうです。
PBの製造を委託している企業が、競合企業に納入されていることを知ることになるからです。
ここでも力関係が物を言い、「あの企業には納入するな」という陰に陽に圧力をかける可能性が高いからです。
セブンに屈服したように見えても、メーカーが従わざるを得ないのは、
からです。
もう1件すごい話をご紹介しましょう。PBに関する話です。
通常、PBは1社に完成品を製造委託し、納入してもらいますね?
ところが、セブンは今まで行われていなかったことをメーカーに要求しました。非常に厳しい要求です。
ことの経緯は、次のとおりです。
セブンはPBでカップ麺の新製品の企画をしました。メーカーにとっては拒否すれば、NBもセブンに納入できなくなることを意味します。
明星食品に「麺」のみの納入を要求したのです。「明星食品の麺は素晴らしい品質である」とセブンも認めているのです。
しかし、スープやかやくは、麺ほどではないという判断を下しました。スープはアリアケジャパンから、かやくはセブン&アイホールディングス傘下のアイワイフーズから納入という具合です。
明星食品にとっては屈辱的であることは間違いないでしょう。
ここで、アリアケジャパンについて簡単に触れておきましょう。
テレビ東京で毎週木曜日午後10時から、放映されている『カンブリア宮殿』という番組があります。
ご覧になったことはありますか?
芥川賞作家の村上龍氏とタレントの小池栄子さんがMCを担当する経済番組です。
2014年6月5日(木)に放映された当番組で、アリアケジャパンが特集されました。
この番組を見るまで、アリアケジャパンの名称を見たことも聞いたこともありませんでした。今までは黒子に徹していたこともその理由でしょう。
この会社の凄さはこんなところにあります。
カンブリア宮殿で見た時のことをお話しましょう。
現在、アリアケジャパンは2万社以上と取引していて、味を数値化するだけでなく、製造を自動化したことで大幅なコスト削減ができたということでした。
この製造自動化工場は、今年80歳になる岡田 甲子男(おかだ・きねお)代表取締役会長が設計したそうです。
更に凄いと思ったのは、世界の三星シェフ・ロブションとコラボレーションした『金のビーフシチュー』がセブンで売られているということです。
ロブション曰く、「どんなに素晴らしい料理でも冷めてしまうと風味が落ちる。その点、『金のビーフシチュー』なら温めれば美味しいビーフシチューがいつでも自宅で食べられる」。
カップ麺の先駆者といえば、日清食品です。日清食品はNBだけでなく、PBも製造しています。
セブンに商品を供給している企業のトップ
わらべや日洋はセブンと取引したことで業績を大きく向上させました。
以上のような経緯を理解すると、セブンはもはやメーカーを完全に支配しています。
次の図表をご覧ください。セブンの圧倒的な強さが感じられるでしょう。
セブンの圧倒的な強さに、「恐怖」さえ覚える関係者もいるそうです。
PART 2 染み渡る「天声」
セブンでは2週間に1回開かれる「FC(フィールド・カウンセラー)会議」があります。
この会議には、「全国各地でコンビニ店舗のオーナーに経営指導するセブンイレブンの社員らが、約3000人も一堂に会する」(p. 033)大掛かりなもので、「全国に散らばる社員を、隔週で集めるためのコストは年間30億円にも
なる」(p. 033)ものです。
この会議に、「セブンイレブン1号店の開店から40年を超えた今も鈴木会長は欠かさず参加し、集まった社員に直接語りかける」(p. 033)。
鈴木敏文会長は今年82歳になるそうですが、これからも引退するまで参加するそうですから、凡人ではとても真似することさえできません。
鈴木敏文氏の象徴的な言葉
セブンが他のコンビニとどこが違うのか、という点について、元ローソンのFCオーナーの言葉がその秘密の一端を示しています。
次の文章を読むと、セブンは軍隊組織に似ていなくもない、と感じます。
鈴木会長が「戦略」を練り、FC(フィールド・カウンセラー)が戦略に基づき、「戦術」を店舗オーナーに伝え、店舗オーナーは「戦技」を活用し店舗経営する、というのが私の考え方です。
各部門が忠実に、徹底的に実行するということです。
その徹底度が他のコンビニとの差ではないか、と思います。
セブンの最大のリスクは、世代交代にあると言えそうです。
次回は、
PART 3 オムニに透ける2つの真意
他をお伝えします。
🔷編集後記
この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-07-01 21:53:02)のものです。加筆修正してあります。
日経ビジネスのこのオリジナルの記事が公開されてから、今年(2023年)で9年が経ちました。
コンビニ業界の現状と動向について調べてみました。
コンビニ業界の現状、ランキング、動向などを分析 業界動向サーチ 2023/02/28
下の図表を見ますと、店舗数は頭打ちになってきていることがよく分かりますね。47都道府県くまなく店舗を設置しているコンビニもあります。
大都市圏では、コンビニが軒を並べ、中には同じチェーン同士で数十メートルの間隔で競い合っているケースもあります。
1人のオーナーが複数店舗を経営していることがあります。自社店舗同士を競わせているのです。
もう国内は飽和状態になっています。そのため、成長が期待できる海外への出店が加速しています。
セブンの売上高とシェアが圧倒的であることがひと目でわかります。
売上高を比較すると、セブンは2位以下に大きく水を開けています。
売上高は1~2桁違います。