大前研一 名言集 『ロウアーミドルの衝撃』(18)
『ロウアーミドルの衝撃』(18)
「自分のことを中流」と考える日本人が、かつて多く存在しました。私自身もその一人でした。
しかし、いまや上流と下流だけといった二極分化の様相を呈しています。
派遣社員の首切り、正社員の激減、給与、賞与の大幅削減など従業員には逆風が吹き荒れています。
そうした現況を踏まえて、ロウアーミドル(中流以下)という概念を示しつつ、生き抜く指針を提示している本が『ロウアーミドルの衝撃』(発売日 : 2006/1/26)です。
現実から逃避せず、現実を直視し、少しでも明るい未来像を描けるようになりたいものです。
現在、行政が進めているIT化の最大の問題は、全国の各地方自治体がコンピュータシステムを別個に作っていることである
不都合を強いられるのは、コンピュータシステムがバラバラに導入されているために互換性がなく、コンピュータ同士の対話ができないことが原因だ
IT化=効率化という錯覚に陥りがちだが、実態は無用な道路などを造る公共工事と同じなのだ
公務員や農業団体、漁業団体などの第一次産業従事者、規制で守られている業界団体などは、ノイジー・マイノリティーで、会社で言えば優先株主のような存在としてさまざまな優遇措置を受けているのだ
その優遇措置の最たるものは、「身分が保障されている」ことである
➳ 編集後記
ロウアーミドル(中流以下)という概念を示しつつ、生き抜く指針を提示している本が『ロウアーミドルの衝撃』です。
🔶 大前氏は自分で考え出したことを自ら実践し、検証しています。仮説と検証を繰り返す行動の人です。
Think before you leap.(翔ぶ前に考えよ)という諺がありますが、Leap before you think.(考える前に翔べ)もあります。
あれこれ考えて、難しそうだからとか面倒くさそうだからやめようでは成長しません。
まず、やってみるという姿勢が大切です。
大前研一氏は、常に物事の本質を述べています。洞察力が素晴らしいと思います。私は、ハウツーものは、その内容がすぐに陳腐化するので読みません。
➔ 大前氏の今回の言葉も、私たちが忘れがちな重要なことに気づかせてくれます。
🔷 全国の自治体のコンピュータシステムが機能していないのは、
「コンピュータシステムを別個に作っていること」
がその原因ですが、それだけではなく、自治体内部にシステムが分かっていない人たちが多いことも原因です。
さらに言えば、提供者側(自治体)の論理で、自分たちが使いやすいシステムを設計し、利用者側(私たち)の論理で設計されていないからです。
役所に共通する点としては、1人でできることを3人で行う所内システムが存在し、人員削減を実施できない仕組みもあるからです。
役所に行くといつもそう感じます。
民間に任せれば、もっと効率的で効果的なサービスが提供できるはずなのに、といつも不満が残ります。
顧客(利用者)第一主義の視点が欠けているからです。
🔶 2020年のマイナンバーによる「特別定額給付金」の申請の際に、時間と手間がかかったことを私たちは経験済みですね。
⭐ 参考になるデータは下記のサイトでご確認ください。
「5年後の自治体システム標準化」に生煮え感、過去の失敗を繰り返すな 2021.02.25
この記事を読みますと、呆れ返ってしまうことが書かれています。
「例えば、国民1人ひとりに10万円を配布する特別定額給付金のオンライン申請では、政府のシステムと自治体のシステムをスムーズに連携できず、紙による目視で住民情報を確認する自治体もあった。このとき以降、連携がうまくいかない要因の1つに、約1700の自治体がそれぞれ独自仕様の情報システムを開発・運用している点があるのでは――との認識が政府内で広がった」
大前氏は本書で16年前に指摘していました。この記事は1年前のものですが、政府の認識の遅れ、ずれがいかに酷いものか分かります。
大前氏の指摘は20年くらい先のことを指し示していることに、いつも驚かされます。大前氏はずば抜けて優秀な頭脳の持ち主だと感じます。
それだけではありません。仮説を立て、3現主義(現場・現物・現実)に基づき、現場に足を運び、現物を見て、現実を認識し検証していることです。
こうした労をいとわないことが、大前氏の主張が説得力を持っている理由です。
この他に関連した注目点を見てみましょう。
「政府が標準化・共通化の対象としているのは、住民基本台帳や各種地方税、各種保険、児童手当、就学など、法律に基づき自治体が実施する17の事務である。政府はこの17分野に関わるシステムについて、標準仕様への準拠を義務付ける方針だ」
「標準仕様の策定に当たっては、『利用者の利便性向上』と『行政運営の簡素化・効率化』に立ち返った業務プロセス改革(BPR)を徹底する。BPRを通じ、システムのみならず業務プロセスの標準化も進める」
「今回のBPR(業務プロセス改革 注:藤巻)が「利用者の利便性向上」を重視するならば、国と自治体との役割分担の見直しを含め、デジタル時代に見合った改革が求められる」
「参考にできる例がある。メガバンクはこれまで全国に支店を配置し、顧客への窓口サービスから帳票処理などの事務作業までこなしていた。それが近年は金融DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として支店の作業の一部を事務センターに集約したほか、顧客向け金融サービスの多くを単一のスマートフォンアプリから利用できるようにした。この結果、支店は投資コンサルティングなど実店舗を生かした顧客サービスの提供へと役割をシフトしている」
ただ一筋縄では改革は進みません。その理由は現行システムが電話やFAX、紙ベースで行うことが前提になっているからです。
「現行法を基にシステムを構築した結果、単に紙がデジタルに置き換わっただけで、効率が悪く、使い勝手も高まらないケースは多い。紙や電話、ファクスを排除できず、ITから紙、紙からITと行き来して効率が上がらない」
しかしながら、改革は待ったなしです。
⭐ 出典元: 日経XTECK 2021.02.25
大前氏は1995年の都知事選に敗戦後、『大前研一 敗戦記』を上梓しました。
🖊 大前氏の著作を読むと、いつも知的刺激を受けます。
数十年前に出版された本であっても、大前氏の先見の明や慧眼に驚かされます。
『企業参謀』(1985/10/8 講談社)という本に出会ったとき、日本にもこんなに凄い人がいるのか、と驚嘆、感嘆したものです。
それ以降、大前氏の著作を数多く読みました。
『企業参謀』が好評であったため、『続・企業参謀』( 1986/2/7 講談社)が出版され、その後合本版『企業参謀―戦略的思考とはなにか』(1999/11/9 プレジデント社)も出版されました。
🔶 大前氏は経営コンサルタントとしても超一流でしたが、アドバイスするだけの人ではありませんでした。自ら実践する人です。有言実行の人です。起業し、東京証券取引所に上場しています。現在は代表取締役会長です。
大前氏の本には、ものの見方、考え方を理解する上で重要な部分が多くあります。大前氏の真意を深く考えなくてはなりませんね。
この元記事は8年前にAmebaブログで書きました(2014-06-22 22:07:58)。「新・大前研一名言集(改)」はかなりの量になりました。私にとっては、いわばレガシィです。
その記事を再編集しました。
✑ 大前研一氏の略歴
大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本の経営コンサルタント、起業家。マサチューセッツ工科大学博士。マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長[1]、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授[1]、高麗大学名誉客員教授[1]、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役[1]、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長[1]等を務める。 (Wikipedia から)
大前研一氏の略歴補足
大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。
その後、世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。
都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。
大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。
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