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盛田昭夫 『21世紀へ』(015)


盛田昭夫 『21世紀へ』(015)

盛田さんは、
「会社は “儲ける” ための団体」
と定義しています。

会社は利益を追求する組織です。

利益を出さないと、給与を支払うことも、設備投資も、株主に配当することもできません。

ただし、損益計算書上の利益とキャッシュ・フローは異なります。

「勘定合って銭足らず」という言葉があるように、最終的にキャッシュが足りなくなると倒産します。

黒字倒産です。

貸借対照表は、決算時の財産状態を表し、損益計算書は決算期間における収支を表したものに過ぎません。

それらの欠点を補うためのものが、キャッシュ・フロー計算書です。

キャッシュフロー計算書は、決算期における営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローという3つのキャッシュ・フローを±して表したものにすぎません。

現時点の状況を示すものではありません。
その意味においては貸借対照表も損益計算書も同じです。

決算終了後、あるいは決算処理中に、つまり新会計年度に入ってから業績が急激に悪化することがあります。

それには2つの要因があります。内的要因外的要因です。

この問題についてはこれ以上踏み込みませんが、こうした重要なポイントがあることを理解しておく必要があります。

自社の業績を深く理解している社員は、決して多くありません。

経営トップが予告なく事業の売却を発表し、テレビ報道で初めて、その事実を知る社員もいます。

青天の霹靂です。

内部の人間のほうが会社の実態を正しく把握していない、実情を詳しく知らないということは、よくある話です。

自分が所属する部署しか知らないので、全社の事情に疎いためです。

部分最適を全体最適と勘違いしてしまうからです。

盛田さんが、
「会社は潰れる可能性を例外なく持っているのだ」
という言葉を実感しています。

私が勤務した会社2社が倒産したからです。
1社はリストラされたあとで、もう1社は在職中に倒産しました。

2社ともに、在職中は経理担当者でしたので、倒産は予見できていました。倒産するのは時間の問題と認識していました。

もちろん、他言することはできませんでしたが。

物事には必ず、予兆というものがあります。
普段からアンテナを張り、情報感度を高めておく必要がある、とつくづく思います。

ことが起こってからでは手遅れになります。

プロアクティブ(可能性のあることをすべて洗い出し、対策を考え、前もって準備しておくこと)な対応を心がけましょう!

一言で言えば、泥縄式ではダメだということです。

リアクティブ(ことが起こってから反応・対応すること)では遅いということです。


『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック

目次

はじめに

第1章 経営の原則

第2章 人材の条件

第3章 マーケットの創造

第4章 国際化への試練

第5章 経済活性化の原理

第6章 日米関係への提言

第7章 変革への勇気

第8章 日本国家への期待

第9章 新世界経済秩序の構築

あとがき



第2章 人材の条件

「こんな社員は願い下げだ」(1966年)から


会社とはあくまでも “儲ける” ための団体である

 会社とはあくまでも “儲ける” ための団体である。血みどろの戦いの場である。本当の戦争にも慰安はある。次の戦闘の士気を鼓舞するための手段だ。会社の福祉施設の意義も、あくまで次の活力を生むためのものでなければならない。それを “楽しみ” 自体に目的を持たれては、たまったものではない。

21世紀へ 盛田昭夫 043 pp. 74-75 



この “儲け” の精神を忘れたとき、すべてのサラリーマンは、失格者として進歩から見放されるであろう

 口うるさいほどにいいたいのは、会社とは “欲” と二人連れの、儲けるための団体である。この “儲け” の精神を忘れたとき、すべてのサラリーマンは、失格者として進歩から見放されるであろう。

21世紀へ 盛田昭夫 044 p. 75


「新入社員への手紙」(1967年)から


会社いうところは、いちばん簡単にいうと、潰れる可能性のある組織だということだ

 会社いうところは、いちばん簡単にいうと、潰れる可能性のある組織だということだ。入ったばかりのときから縁起でもないというかもしれないが、君が入った会社でも、いつ潰れるかわからないのだ。こんなに大きな、立派な工場もある会社がまさか――と思うかもしれないが、それでもやはり会社は潰れる可能性を例外なく持っているのだ。

21世紀へ 盛田昭夫 045 p. 77



盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田さんが、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという悲痛な気持ちが伝わってくる本です。

盛田さんの「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることの多くが当たっています。
盛田さんの慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

本書をアマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられることでしょう。



🔴「会社とはあくまでも “儲ける” ための団体である」「会社いうところは、いちばん簡単にいうと、潰れる可能性のある組織だということだ」

会社は慈善団体ではありません。その意味で盛田さんが「 “儲ける” ための団体」という表現は適切だと思います。会社が儲からなくては、設備投資ができず、社員への給与も上げることができません。当たり前のことです。

それでも、「利益追求が第一の目的」というのはおかしいと考える人がいるとしたら、毎期赤字続きの会社で働きたいと思いますか、とお訊きしたいです。

私は30年以上にわたるサラリーマン生活で、2度の倒産を経験しています。正確に言いますと、1度は退社後に倒産しました。

ですが、在職中からこのまま推移すれば間違いなく倒産に至ると確信していました。経理担当をしていましたので、内情に精通していたからです。

ですから、「会社は潰れる可能性のある組織だ」という指摘は痛いほど分かります。



盛田さんは、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンでもありました。表現がダサい? 古い?



⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。

ここ数十年で業態を変えてきたことは、世の中の変化に素早く対応できることを示しています。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで9年前(2014-07-10 20:47:46)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1  



ソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元



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