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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.28
大人の流儀
伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。
時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。
帯に自筆で「ちゃんとした大人になりたければこの本を読みなさい」と記しています。
ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。
「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から
伊集院 静の言葉 1 (82)
人間の死というものは残ったものに大きなものを与えます。特に親しい人の死はどこかに自分の力が足らずに死なせてしまったと悔やんでる人は多いはずです。私もずっとその気持ちは消えません。それに親しい人の死は思わぬ時によみがえって人を狼狽させます。死んでしまっているのだから片付いてもよさそうですが、死ですら片付かないのですから困ったものです。
「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から
伊集院 静の言葉 2 (83)
六十歳を過ぎて仕事中心の暮らしになってつまらぬ生き方になったと深夜思うこともあります。けどいつかどこかで狂ったように大遊びをしてやろうとは思っているんです。わかったような生き方はつまらないですからね。そのためにヘソクリをためているんですが、ヘソクリ程度の現金じゃ、大遊びにはなりませんでしょうね。
「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から
伊集院 静の言葉 3 (84)
親しい方を亡くされて戸惑っている方は多いでしょう。私の経験では、時間が解決してくれます。だから生き続ける。そうすれば亡くなった人の笑顔を見る時が必ずきます。最後に、数年前に観た映画でのチェチェンの老婆のせりふを紹介します。
「あなたはまだ若いから知らないでしょうが、哀しみにも終わりがあるのよ」
出典元
『大人の流儀 1』
2011年3月18日第1刷発行
2011年7月14日第11刷発行
講談社
✒ 編集後記
『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。
伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。
伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。
🔷 『大人の流儀 1』の最後の章「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」についてお伝えします。
今回で最後になります。
「あなたはまだ若いから知らないでしょうが、哀しみにも終わりがあるのよ」
私は若くないですが、哀しみはまだ完全に終わっていません。
今年(2022年)8月8日で、妻が亡くなって丸7年になります。
「もう7年になるのか」という感情と、妻が息を引き取った瞬間が昨日のことのように思い出され、見守るだけで何もできなかった無念さが交錯します。
たぶんこの気持ちは、私が認知症になり、物事を認識したり判断することができなくなったり、病気や事故で死の直前になるまで変わらないのではないかと思っています。
🔶 『大人の流儀 1』は今回で終了となります。次回からは『大人の流儀 2』(表紙の表示は「続」)を扱います。ご期待下さい!
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🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。
<著者略歴 『大人の流儀』から>
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。
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