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日経ビジネスのインタビュー バックナンバー Vol.080 2013.8.5
日経ビジネスのインタビュー バックナンバー Vol.080 2013.8.5
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松井 道夫(まつい・みちお)氏
1953年、長野県生まれ。76年一橋大学経済学部卒業後、日本郵船に入社。87年に義父の経営する松井証券に入社し、95年、代表取締役社長に就任。98年に日本初の本格的インターネット株取引を開始した。株式委託手数料の引き下げをはじめとする「日本版ビッグバン」を牽引した1人として「証券界の革命児」と称される。その後も次々と斬新なサービスや商品を打ち出し、業界の牽引役となった。2001年東証1部に上場を果たす。趣味は油絵。
見えないサービスを重視 2013.8.5
松井道夫(まつい・みちお)氏
[松井証券社長]
今や、個人投資家の売買のうち約9割がインターネット経由だけど、その取引の中心を占めるのはデイトレーダー層なんです。
松井証券には過去、オンライン証券事業を始めた直後にシステムダウンを起こした苦い経験があります。数十分でしたが、その間の数万件の取引を修復するために、社員が交代で徹夜作業になりながら1つずつ帳簿をチェックしたのです。
それでも全部解決するのに半年間かかりましたよ。
トラブルを起こした年は、ちょうど創業80周年。自分が受け継いだ「老舗の松井」はここでつぶれるかもと、本気で思いました。システムトラブルは会社の生死に関わる問題だと、身をもって感じたのです。
私はシステムの話をする際、よく生物学の理論の1つである「リービッヒの最小律」を例えにします。顧客から受けた注文を桶の中に張られる水、それを制御するシステムを木の桶の1枚1枚の側板に見立てた場合、ほかの板がどんなに長くても、短い1枚の板から水はザーッと漏れてしまいます。
つまりこういうことです。どんなにサーバーを増強したり、最新の設備を導入したりしても、ほかの要素が欠けていればシステムは機能しない。要はバランスの問題なんです。
システムはどんなにメンテナンスをこまめにやろうが100%完璧にすることはできないのですよ。だから、トラブルが起こった際の問い合わせや苦情の受け皿となるサポートセンターがセットで必要になるのです。
社員が100人程度なのに、コールセンターのスタッフは150人です。社員よりもオペレーターの数が多いのです。
今年1月から一部の信用取引で返済期限が当日なら、手数料ゼロ、金利・貸株料もゼロとした「1日信用取引」をスタートさせました。
そのうち、経営体力のないオンライン証券から廃業するでしょうね。
時間はかかるかもしれませんが、「安かろう、悪かろう」のレベルから消費者も「やっぱり質だよね」という流れになると思います。
日経ビジネス(2013.8.5号)が公表した、「2013年版アフターサービスランキング」の証券会社部門で、多くの強豪を抑え、堂々の1位となりました。
5つの項目別評価のすべてで、1位を獲得しました。
5つの項目とは、
「問い合わせ先の分かりやすさ」
「担当者の応対の丁寧さ」
「対応等に要した時間」
「解決策等の適切さ」
「かかった料金や費用」
です。
「2013年版アフターサービスランキング」の概要は日経ビジネスの特集記事の2013年版 アフターサービスランキング 2013.8.5に掲載しましたので、ぜひ、ご覧ください。
🔷 編集後記
この元記事をアメブロに投稿したのは、10年前のことです(2014-02-13 23:17:59)。そして、オリジナル記事は11年前のものです。
読み直してみますと、「こんなことも書いていたのだな」「この個所に関心があったのだな」ということが思い出され、当時の自分の心境に思いを馳せています。
それだけ歳をとったのだと実感しています。
編集長インタビューの記事を読み返してみると、当時の経営者の心意気・信念・余裕・揺るぎない自信といったものが伝わってきます。
月日が経ち、自分だけでなく身の回りにも、環境にも変化があります。
しかし、経営に限らず、物事の本質は変わらないものです。
私はシステムの話をする際、よく生物学の理論の1つである「リービッヒの最小律」を例えにします。顧客から受けた注文を桶の中に張られる水、それを制御するシステムを木の桶の1枚1枚の側板に見立てた場合、ほかの板がどんなに長くても、短い1枚の板から水はザーッと漏れてしまいます。
つまりこういうことです。どんなにサーバーを増強したり、最新の設備を導入したりしても、ほかの要素が欠けていればシステムは機能しない。要はバランスの問題なんです。
🔴「私はシステムの話をする際、よく生物学の理論の1つである『リービッヒの最小律』を例えにします」
リービッヒの最小律(または最小要素の法則)は、植物の成長において、最も不足している栄養素が、その植物の成長を制限するという法則です。これは、植物が成長するためには多くの異なる栄養素が必要で、それらの栄養素がすべて適切なバランスで存在しなければならないという考え方に基づいています。
この法則は、木の桶に見立てて説明することがよくあります。桶の側面は各栄養素を、水は植物の成長を象徴しています。桶の各板(栄養素)が全て高ければ、たくさんの水(成長)を保持できます。しかし、一つでも短い板があると、そこから水が漏れ、桶が保持できる水の量(植物の成長)はその短い板(最も不足している栄養素)に制限されます。
したがって、植物の成長を最大化するためには、すべての栄養素が適切な量で存在することが重要であり、最も少ない栄養素が成長を制限するというのがリービッヒの最小律の主旨です。この法則は、農業や園芸、環境科学などの分野で広く利用されています。
私がこの理論を知ったのは当時が初めてのことです。とても理解しやすい優れた理論で、思わずその場で唸った記憶があります。
「蟻の一穴」にも通底する例えです。ほんの小さな穴から漏れ出すと、いずれ一気に中身が溢れ出してしまうということです。
私の例えでは適切ではないかもしれませんが、ある事件が発生した時、初動捜査の段階で、捜査員が小さな異変に気づき、それを突破口として物証にたどり着き、被疑者を特定し逮捕に至ったというケースです。
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✴️ もう少し、インタビューの内容をご紹介します。
うちは他社と違ってコールセンターにものすごくお金をかけてきましたから。10年以上やってきた実績もあります。好不況にかかわらず、です。
社員が100人程度なのに、コールセンターのスタッフは150人です。社員よりもオペレーターの数の方が多いのです。
(中略)
まさにコストセンターです。でも長い目で見たら、やっぱりアベノミクス相場のようにどかっと注文が来た際、対応できるようにしておかなきゃダメですよ。
(中略)
手数料がいくら安くたって、しょっちゅうシステムトラブルを起こし、電話をかけてもつながらない。そんな状態が続いたら顧客だってバカじゃないから本当に大切なのは何か、気づきますよ。みんな複数の証券会社に口座を持っているんだから。各社の対応の差が明確に分かります。
松井証券は日本で最初にネット証券を立ち上げました。もともとは実店舗の証券会社でしたが、松井氏が義父の会社の後継者となってから、「これからはネット証券だ」と会社を作り直しました。
当時としては異例なことでしたが、株式などの売買手数料値下げを業界初で行いました。売買手数料は証券会社の儲けですから、ここに手を付けるということは自ら収益を圧迫させることを敢えてしたのです。
証券界の改革をスタートさせたと言っても過言ではありません。
当時、米国内では手数料の値下げ競争が激化していました。
松井氏はいずれの日にか、日本でも同じことが起きると読んでいたのでしょう。
今でこそ、SBI証券や楽天証券にサービスなどで先を越された感がありますが、松井証券の「蛮勇」がなかったら現在の証券界はどうなっていたか分かりません。個人投資家が増えた遠因となったと私は考えています。
松井証券は証券界のタブーに挑戦したのです。
<Ameba blog (Ameblo) に投稿した当時の解説記事 2014-02-12 23:30:14>に触れてみます。
⭐️「はじめに」に書きましたように、携帯やスマホ版のサイトは、2007年1月から2013年7月まで毎週掲載してきました。
1ページに1カ月分(4回から5回)をまとめて掲載しています。
オリジナルの「編集長インタビュー」から特に印象に残った言葉を、ご紹介する形式を採っていますので、1週ごとの量は少なめです。
このため1カ月分のインタビュー内容を1ページに取りまとめています。
このブログでは、この形式を採用せず、毎週1回「編集長インタビュー」から一部を抜粋し、ご紹介していきます。
ブログの可能性を引き出せるように、いろいろな試みをしていきたい、と考えています。
例えば、互いのブログを紹介しあう「相互リンク」はその1つでしょうし、コメントやトラックバックもそうでしょう。
さらに、携帯やスマホ版のサイトでは、特に携帯ではデータ処理量が少ないために、表示できなかった画像データも、ブログ版では意識せずに扱うことができます。
掲載した記事に、私のコメントを追加することを考えています。
特に制約は設けず、自由に書いていきたい、と思っています。
インタビュイー(インタビューされる人)に関連した事柄や、業界の動向など書きたいことはたくさんあります。
たくさんのコメントをいただけると、とても嬉しいです。批判的なことでも構いません。
あなたがご存知の情報で公開することに問題がなければ、ぜひコメントをお書きください。お待ちしています。
『日経ビジネス』について付け加えることがあります。2つあります。
1つは、発行日付です。
普通、週刊誌の発行日付は発売日よりも1週間先の日付になっていますね。
今朝 (2013年8月1日) の新聞に掲載されていた、『週刊新潮』も『週刊文春』も8月8日号となっていました。これが普通ですね。
ところが、『日経ビジネス』は、毎週金曜日に指定した場所(主に自宅)に届けられ、発行日は翌週月曜日になっています。
つまり、最新号は8月2日に届き、8月5日号ということになります。
日経ビジネス編集部は、『日経ビジネス』の最新のホットな情報をできるだけ早く伝えたい、という方針を徹底しているからではないか、と考えられます。
もう1つは、サイトとの連動と独自コンテンツの配信です。
日経ビジネスオンライン (現在は日経ビジネス電子版)というサイトがあり、雑誌で掲載できなかったその後の進展に関する記事やサイト独自の記事を配信しています。
有料のスマホやタブレット、PCで閲覧できる独自配信の記事があります。
いろいろとお話してきましたが、当ブログは『日経ビジネス』の「編集長インタビュー」から特に印象に残った言葉をご紹介するブログです。
これからよろしくお願いします。
1回の投稿ごとに1カ月分にまとめたインタビューの概要を掲載します。
2007年1月8日号からスタートし、2013年7月までの6年7カ月分のバックナンバーだけで79件あります。
途中、数件記事が抜けている個所があります。
データを消失してしまったため現時点では再現できませんが、日経ビジネス電子版では「2011年10月から最新号まで」のバックナンバーが閲覧できるようですので、抜けている個所に該当する部分が見つかれば、追記します。
⭐ 『日経ビジネス』の電子版セット(雑誌+電子版)を「らくらく購読コース」で2022年9月12日号 No.2157 から定期購読をスタートしました。
⭐「日経ビジネス 電子版使い方ガイド」(全24ページ)を見ると
「雑誌『日経ビジネス』のバックナンバーの閲覧について」で、
閲覧できるのは2011年10月から最新号と書かれています。
そのため、2008年8月18日、25日分の記事は確認できません。
しかも紙の雑誌は、はるか昔に処分しています。
『日経ビジネス』の記事を再投稿することにした経緯
再編集して再投稿することにした理由は、次のとおりです。
自分が当時どんな記事に興味があり、どのような考え方をしていたのかを知りたいと思ったからです。
当時の自分を振り返ることで、当時と現在で考え方は変わったか否か、あるいは成長しているかを確認したいと思いました。
記事データは当然古くなっていますが、本質的な部分は必ずあるはずで、しかも普遍性があります。その個所を再度学んでみたかったのです。
さらに言えば、『日経ビジネス』のバックナンバーをご紹介することで、この記事に目を通していただいたあなたに何らかの有益なヒントを提供することができるかもしれない、と考えたからです。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」だからでもあります。
(プロフィールから)
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