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記録ずくめの最強メーカー 黒霧島  5000日戦争 老舗蔵元の「反常識」経営 2014.11.10 1/3 2014-11-12  21:02:08


<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 5000日戦争 老舗蔵元の「反常識」経営 2014.11.10 1/3 2014-11-12 21:02:08



CONTENTS

PART 1 記録ずくめの全国制覇 こんな会社、見たことない

PART 2 完全ドキュメント 創業80年目の一念発起
「黒霧島」、全国制覇への5000日

第1章 1996年春 3代目、就任
第2章 1998年夏 黒霧島、誕生
第3章 2001年夏 決戦、福岡
第4章 2004年秋 生産革新
第5章 2006年夏 大型投資
第6章 2011年春そして首都圏へ

PART 3 クロキリ戦略を大企業のグローバル化に応用する



第1回は、

PART 1 記録ずくめの全国制覇 こんな会社、見たことない

PART 2 完全ドキュメント 創業80年目の一念発起
「黒霧島」、全国制覇への5000日

第1章 1996年春 3代目、就任


を取り上げます。


今週の特集記事のテーマは

1998年の発売以来、「焼酎500年史」に例がない
快進撃を見せ、その結果、霧島酒造は2012年、
売上高で三和酒類を抜き日本一に躍り出た。
その成長力や収益力は名だたる大企業すら圧倒し、
今や同社は、1990年大後半以降のデフレ下で
最も事業拡大に成功した最強国内製造業の一社と
言っていい。
老舗蔵元の戦略には、業界の常識を否定し自社に
最適化した、多くの最新経営理論が盛り込まれていた
(『日経ビジネス』 2014.11.10 号 p. 026)

です。



『日経ビジネス』 2014.11.10 号 表紙


今特集記事は「黒霧島」という焼酎の老舗蔵元、霧島酒造の経営戦略等にスポットを当てています。

「黒霧島」という同社を代表する焼酎の話が、多く出てきますが、決して酒類の話だけではありません。

そこは、『日経ビジネス』ですから、ビジネスの観点から分析し、霧島酒造の驚くべき経営の秘密を余すところなく描いています。

私事になりますが、酒はほとんど飲みません。
洋酒、日本酒、ワインは今では全く飲みませんし、ビールも年に数回ほどです。

以前は、ワインを就寝前にワイングラスに3分の1位注いで、飲んでいたことがありましたが、現在では全く飲んでいません。

焼酎は、30代後半から40代後半頃まで、会社の付き合いの席で、飲んでいたことがあります。

下町のナポレオンという愛称がついた「いいちこ」は、飲みやすかったという記憶があります。

そのような状況でしたので、アルコール類については、詳しくありません。ですから、『黒霧島』という名の焼酎は知りませんでした。

ちなみに、タバコも吸いません。59年間一度も直接吸ったことはありません。

副流煙、つまり受動喫煙はかなりしました。
受動喫煙の方が悪影響が大であるそうですが……。
現在では、周囲に喫煙者がいないので、受動喫煙に悩まされることはありません。

あなたは「黒霧島」をご存じですか? 飲んだことはありますか?

前口上はこれくらいにして本題をスタートしましょう!


PART 1 記録ずくめの全国制覇 こんな会社、見たことない


最初に、霧島酒造の歴史を振り返ってみましょう。
再来年で100周年を迎える老舗蔵元です。

大正5(1916)年から宮崎県都城市で芋焼酎の製造を開始し、再来年で創業100周年を迎える老舗蔵元。だが、90年代後半までは、マイナーな中小蔵元の一つだった。

歴史が変わったのは黒霧島の発売からだ。

その大ヒットにより霧島酒造は麦焼酎「いいちこ」で業界の王者に君臨していた三和酒類を販売量で逆転。一躍、全国区の知名度を持つ酒造会社となった。 

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営
 
2014.11.10 p. 028 


『日経ビジネス』は霧島酒造について、下記のような感想を書いています。
『日経ビジネス』がこれほどまでに強調するケースは滅多になく、特筆すべきことだ、と思っています。

霧島酒造が実現した全国制覇は、
日本の産業史に刻まれるべき歴史的快挙――。
本誌はそう考える。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 028
 


『日経ビジネス』は、霧島酒造に着目すべき点を4つ挙げています。

成長力 デフレ下で売上高7倍

事業展開力 14年間で全国一の銘柄に

収益力 中小製造業の4.5倍

革新力 業界勢力図を一変

成長力 デフレ下で売上高7倍

帝国データバンクに調査を依頼すると、「15年前の売上高が80億円以上で、かつ現在の事業規模が当時の7倍以上」という条件をクリアしたのは
92社だけだった。

これは、帝国データバンクが業績を把握する全国約145万社の0.006%でしかない。

霧島酒造のように、独立系でM&A(合併・買収)を実施せず7倍以上の成長を遂げた製造業は、ノーベル物理学賞の中村修二氏がかつて所属した日亜化学工業1社しかない

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 pp. 028-029
 


「成長力」一つとっても、霧島酒造は凄い会社であることが分かります。


事業展開力 14年間で全国一の銘柄に

事業展開速度も速い。黒霧島の発売から14年目に会社の売上高で焼酎業界の首位を奪取。翌年には全国9地区すべてで10%以上のシェアを確保した。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 029
 


収益力 中小製造業の4.5倍

収益力も突出する。日銀の全国企業短期経済観測調査(日銀短観 注:藤巻隆)によると、トヨタ自動車やキャノンを含む国内大企業(製造業)の売上高経常利益率(過去10年平均)は約5%。

霧島酒造は14%に上り、大企業の収益力を3倍近く上回る

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 029
 


革新力 業界勢力図を一変

黒霧島の普及は、焼酎市場全体にも大きなインパクトを与えている。その最たるものが原料別の焼酎消費量への影響だ。

15年前に「麦」は「芋」を3倍ちかく上回ったが、現在は芋が麦を逆転。最大の要因は黒霧島のヒットだ。霧島酒造たった1社で、焼酎業界の勢力図を塗り替えたとも言える

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 029
 

このパートでは、霧島酒造の概要をお伝えしました。

次のパートでは、全国制覇への5000日を完全ドキュメントでお伝えします。

私は、黒霧島という焼酎そのものより、霧島酒造の経営の秘密にとても興味を持ちました。


以上4件、
記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10


PART 2 完全ドキュメント 創業80年目の一念発起 「黒霧島」、全国制覇への5000日


第1章 1996年春 3代目、就任

このパートでは、3代目就任から霧島酒造が変貌した経緯からお伝えしていきます。

再来年で100周年を迎える同社が、創業者イズムを否定してまで改革に乗り出した経緯に注視して、ご覧ください。

一朝一夕では改革はできませんが、トップの高い志と、最後までやり抜く強い意思は、不可欠だったでしょう。


第1章 1996年春 3代目、就任

PART 1では霧島酒造の概要をご覧頂きました。

『日経ビジネス』はここからは全国制覇への5000日をドキュメントで伝えています。

ドキュメントにとても興味がありますので、ワクワクしながら読みました。そんな気持ちをお伝え出来たらよいのですが。

霧島酒造は大きな危機に見舞われました。

1996年4月3日。霧島酒造2代目社長の江夏順吉が腹膜炎で急逝した。享年80歳。

突然の父の死に、息子の順行と拓三は顔を見合わせ絶望に打ちひしがれた。

5日後に臨時株主総会が開かれ、順行が社長。

拓三が専務に慌ただしく就任。経営の全責任を40代の兄弟が背負うことになった。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 030
 


いつか、その日が来るとは漠然と考えてはいたでしょうが、いざ、その日が来るとなかなか決断できないものです。後継の二人の兄弟は強い決意で臨んだことでしょう。

先代の順吉さんの経営姿勢を知ることが重要だ、と思います。後継の二人が先代の経営を否定することになったからです。『日経ビジネス』は、経緯を
このように明かしています。

順吉が社長を受け継いだのは戦後4年目の49年だ。旧東京帝国大(現東京大学)で応用化学を学んだ秀才が実践したのは、品質最優先の経営だった。

大の機械好きとあって、芋の蒸し釜や蒸留機は自ら作り、焼酎の品質の改善に没頭した。

ただその一方で、営業力の強化などには関心が薄かった。「良いものを作れば、おのずと売れる」が信念

販促やマーケティングに興味がなく、それが2度の焼酎ブームに乗り遅れる遠因となってしまう。

地元の宮崎県内では焼酎市場の6割近いシェアを握った。ただ、営業力が脆弱な分、知名度の低い県外での販売量は一向に伸びない。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 pp. 030-031
 


先代の順吉さんは研究者あるいは、職人気質の経営者だったのです。

順行さんが3代目に就任して決断したことは、先代の経営姿勢を否定することでした。

ただ否定しただけではなく、トレードオフ(二律背反)でもなく、相反することを両立させることでした。

そんなことが可能なのか、と思いますよね?

熟慮の末、順行がまず打ち出したのが品質を維持しつつも宮崎の外に戦いの場を求めることだった。

霧島酒造は80年もの歴史を持つ老舗だ。

それでも順行は、父が貫いた経営を思い切って否定し、転換した。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 031
 


否定しただけではなかったことは、次の解説を読むと納得できます。決して拙速ではなかったのです。

直ちに県外での営業力強化などに乗り出さず、まず県外市場で勝てる新商品づくりに経営資源を徹底集中することを決めたのだ。

「今のうちの商品力では、県外に出ても白波やいいちこには勝てない」と考えたからだ。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 031
 


では、どのようなコンセプトで商品化しようとしたのでしょうか?

それはアルコール類に興味が無い人でも、皆、そのブランドを知っている「あの商品」のような焼酎だったのです。

順行は新商品開発に会社の命運を賭けることを決めた。頭にあったのは、ビール業界の構図一変させたアサヒビールの「スーパードライ」のような商品だった。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 032
 


後で分かりますが、「スーパードライ」の販売戦略を手本にしたようなところがあったことに気づきます。

『日経ビジネス』取材班は、「全国制覇を支えた戦術」として6つ挙げています。

1つ目は、「弱者の戦略」で一点突破です。

拠点展開と市場調査・商品開発を同時並行的に進め時間を節約する戦略の方が生き残りの確率は高まるように映る。だが同社はリスク覚悟で、商品開発に資源を集中した。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 031 


上図の解説を掲載しています。

2つの選択肢 集中か分散か

先代の方針を転換し、県外での営業力強化を決めた霧島酒造には、大別して2つの選択肢があった。一つは、既存商品を武器に営業エリアをとりあえず拡大し、同時に県外市場で勝てる戦略商品を開発することもう一つが、まず戦略商品を開発することだ。本文中にもあるように、当時の同社には、酒税引き上げと県外勢力の攻勢の前に何より時間がなかった。そんな状況を踏まえると、拠点展開と市場調査・商品開発を同時並行的に進め時間を節約する戦略の方が生き残りの確率は高まるように映る。だが同社はリスク覚悟で、商品開発に資源を集中した

これは、弱者が強者に勝つ上で経営資源を集中することの重要性を説くランチェスターの法則の応用とも言える。同法則は戦争での空中戦を有利にするための戦略。仮に、霧島酒造が焦りから、市場調査や商品開発、拠点展開を同時並行で進めていたら、いずれもが中途半端になり、後の快進撃は幻となった可能性が高い。

記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10 p. 032 



下図をご覧ください。
九州焼酎戦争の様子が伝わってきます。

1996年当時、「いいちこ」の売上高は
「霧島」を5倍以上も上回る
焼酎業界の絶対王者。
「白波」や「二階堂」にもシェアで見劣りし、
霧島酒造は苦戦を強いられた
記録ずくめの最強メーカー 黒霧島 
 5000日戦争 
老舗蔵元の「反常識」経営 
2014.11.10


次回は

PART 2 完全ドキュメント 創業80年目の一念発起
「黒霧島」、全国制覇への5000日

第2章 1998年夏 黒霧島、誕生
第3章 2001年夏 決戦、福岡
第4章 2004年秋 生産革新

をお伝えします。



🔷編集後記

この特集記事(元記事)が公開されたのは、10年前のことで、アメブロでも10年前(2014-11-12 21:02:08)のことでした。

大幅に加筆修正しました。

この記事を読むまで、黒霧島についての知識は皆無でした。
しかも名称から先入観で地酒かと思いました。まさか焼酎だったとは!

黒霧島に次いで赤霧島も発売しています。黒の次は赤。そしてさらになんと白霧島まであるとは。

私は下戸なので黒霧島も赤霧島も飲んだことがありません。もちろん白霧島も。

若いころは上司に連れられて飲み屋に行き、ビールの他に下町のナポレオン「いいちこ」を飲んだ記憶があります。レモン割りやウーロン茶割りであれば悪酔いはしなかったようです。

酒類の販売数量を調べてみました。

この図表を見る限り、
第1位 ビール
第2位 リキュール
第3位 焼酎(連続式蒸留焼酎+単式蒸留焼酎)
第4位 発泡酒
第5位 清酒
となりました。

酒のしおり(令和2年3月)国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2020/pdf/041.pdf


リキュールが想定外に多いことに驚きました。

混成酒の「リキュール」は、フルーツや香草・薬草、花などで風味を付けた蒸留酒を指します。さらに砂糖などの甘味料も加えられており、日本で昔から馴染みのある梅酒も、リキュールの1種。

リキュールの人気おすすめ銘柄23選。 
美味しい飲み方/カクテルを紹介
 


フルーツなどで風味が付いていて飲みやすいから人気があるのでしょうか?
おしゃれという面もあるかもしれませんね。


焼酎メーカーの売上高ランキング

全国の焼酎メーカー売上ランキングTOP3、3位オエノングループ、2位三和酒類、1位は?

1位 霧島酒造 623億3500万円(前年比1.0%増)

2位 三和酒類 429億6300万円(前年比0.1%増)

3位 オエノングループ 393億5700万円(前年比0.8%増)

全国の焼酎メーカー売上ランキングTOP3、3位オエノングループ、2位三和酒類、1位は? 2021.08.29 DIME から

霧島酒造が9年連続でトップだそうです。


(6,514 文字)


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