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「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか 2014.09.08 2/3 2014-09-13 14:45:36
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか 2014.09.08 2/3 2014-09-13 14:45:36
CONTENTS
PART 1 「失敗」を糧に捲土重来を期す
PART 2 経営者が陥る5つの「罠」
PART 3 新たなリスクに立ち向かう
第2回は、
PART 2 経営者が陥る5つの「罠」の前半
を取り上げます。
今週の特集記事のテーマは
成功は偶然の産物だが、失敗は同じことをすれば
繰り返す。
「暴走」「執着」「隠蔽」「忘却」「慢心」。
過去の事例を振り返り、五つの「敗軍」の法則を
導き出した。
次への一步を踏み出す時ほど、冷静な判断が必要。
今こそ、過去の失敗に学び、前進する時だ
です。
『日経ビジネス』に、長寿コラム「敗軍の将、兵を語る」があります。
「敗軍の将、兵を語らず」という言葉がありますが、あえて敗軍の将に兵を
語らせるという趣向のコラムになっています。
約四十年にわたる連載の中から導き出されたのが、「暴走」「執着」「隠蔽」「忘却」「慢心」の五つの「罠」でした。
これら五つの「罠」の詳細はPART2でご紹介します。
PART 2 経営者が陥る5つの「罠」
日経ビジネスが「経営者が陥る5つの『罠』」と名付けたのは、
法則1「暴走」
法則2「執着」
法則3「隠蔽」
法則4「忘却」
法則5「慢心」
です。
この5つに共通するものは、人の心の問題です。結局、最後は人の問題であることが分かります。
どんなに完璧に構築されているように見えるシステム(仕組み)でも、そのシステムを運用する人によって問題は必ず発生します。
人間は実に弱いものだ、とつくづく思います。
過去の敗軍史
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「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか
2014.09.08
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「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか
2014.09.08
今回は、経営者が陥る5つの罠のうち3つを取り上げ、次回に残りの2つを取り上げます。ご了承ください。
法則1「暴走」
大王製紙元会長の井川意高(もとたか)氏(創業家の三代目)が、子会社から巨額の資金を引き出し、カジノで使い、特別背任で逮捕された事件は、記憶に新しいことです。
何しろ、子会社から引き出した額は100億円を超えていたのですから、庶民からすれば開いた口が塞がりません。
創業家ということで、独裁を許し、周囲の人たちは何も言えなかったという状況は、アンデルセン童話の『はだかの王様』そのものです。
以前、他のブログに書きましたが、マネックスグループ株式会社代表取締役社長CEOの松本大さんは、
「『はだかの王様』はマネージメントの本なのです」
と述べています。
(『私の仕事術』 松本大 講談社+α文庫 p. 169)
戦う取締役会 プロ経営者を育てる「社外の目」の中で、松本大さんについて書いています。
その一部を抜粋します。
松本氏は、世界最強と言われる投資銀行、米ゴールドマン・サックスで、最年少でしかもアジア人として初めてパートナー(共同経営者)となった後、マネックス証券を立ち上げました。
松本氏が、出資してくれたゴールドマン・サックスの関係者に「私に望むことは?」と尋ねたところ返ってきた答えが驚くべきことでした。
「あなたをクビにできる人物をそばに置きなさい」
CEO (最高経営責任者)は強大な権限を持ち、独裁者になりかねない危険性があるので、そうならないための仕組みが必要だ、と言ったのです。
2014.08.25
大王製紙元会長の井川意高氏
意高氏がカジノにのめり込むようになったのは、2008年頃から。遊興費の借り入れは2010年5月に始まる。以降、子会社7社から26回にわたって、総額106億8000万円を引き出した。それは社内メールの告発によって問題が発覚する2011年9月まで続く。
気づいた時には、ほぼすべてのカネがカジノで散財されていた。
2014.09.08 p. 033
ちょっと考えられないことですね。
子会社の経営者も株主代表訴訟の対象となることまでは、考えなかったのでしょうか?
事件を調査した第三者による特別調査委員会は、「井川親子に絶対的に服従する企業風土が背景にある」と結論づけた。暴走するトップを抑えるブレーキがなかったわけだ。
2014.09.08 p. 033
では、どうして絶対服従だったのでしょうか?
特別調査委員会は、井川親子に服従する雰囲気が生まれたのは、「2人が成功した経営者だったから」と分析する。
2014.09.08 p. 033
高雄(意高氏の父親)氏は、「業界大手に育てた立役者であり」、意高氏は「家庭紙ブランド『エリエール』を育てた功労者」である、ということです。
本人も不幸ですが、従業員も不幸ですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1695166375498-mnAEvp73bj.png)
大王製紙四国本社(中)、
「カジノ騒動」を起こした大王製紙の
井川意高・元会長の父親で顧問の井川高雄氏(右)
(写真=左:共同通信、中:時事通信フォト、
右:村田 和聡、背景:共同通信)
「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか
2014.09.08
破滅と対立の歴史
●大王製紙の「カジノ騒動」を巡る主な動き
![](https://assets.st-note.com/img/1695165943082-kb9t510l17.png)
2014.09.08
今、手元に『東大から刑務所へ』(堀江貴文 井川意高 共著 幻冬舎新書 2017年9月30日 第1刷発行)があります。
この本は、堀江貴文氏と井川意高氏の対談集です。
「はじめに」に井川氏がカジノにのめりこむようになった経緯が語られています。その一部を抜粋します。具体的で生々しい過去の経緯を語っています。
幼少期から10代にかけての私は、創業家2代目の父から鉄拳制裁も含めたスパルタ教育を受け、厳しく育てられた。
東大法学部を卒業し、大王製紙に入社してからの私は、創業家の人間だからといって仕事に甘えや妥協を見せたつもりはない。むしろ創業家の人間だからこそ、厳しく自らを律しながら真剣に仕事に打ち込んできたつもりだ。27歳のときには、売上高200億円で赤字70億円の子会社に放りこまれて途方に暮れたこともある。あのときは岩盤に爪を立てる思いで必死に仕事に食らいつき、赤字体質の子会社の経営を立て直すことができた。
初めてカジノに出かけたのは、30代前半だった96~97年ことだったと思う。友人家族らと出かけたオーストラリア・ゴールドコーストでのカジノは、ほんの余興程度の軽い遊びだった。それから10年間、年に数回出かけるカジノでの時間もまた、私にとって人生を棒に振るほどの意味あいはなかった。
私の人生が一挙に奈落へと転がり始めたのは、2007年に大王製紙社長に就任してからだ。「ジャンケット」と呼ばれる者のエスコートに乗じてカジノのVIPルームに出入りするようになってから、私の賭け金は常軌を逸した金額へと跳ね上がっていった。
バカラ一張りで3000万円。板子一枚下は地獄。あるときは目の前に20億円相当のチップを山積みし、狂乱の鉄火場でバカラを戦い続けたこともある。あるときは12億、15億という天文学的な勝ちも経験した。
限られた者だけが入ることができるVIPルームの入り口は、私にとって地獄の釜の蓋だったのだと思う。勝ったり負けたりで動かした賭け金の総額はいつしか100億円、1000億円どころか、延べで「兆」の単位にまで達していたらしい。
(中略)
ファミリーが株を所有している子会社から億単位のカネを秘密裏に毎週借り続けた。その種銭を元手に、鉄火場で戦い続けた。だが鉄火場の業火は、情け容赦なく私のカネを炙り、熔かし続けた。そしていつしか、私の負け金総額は106億8000万円にまで到達していたのだ。
もはや「カネの沼」は底なしの様相を呈していた。万事休す。2011年11月、私は会社法の特別背任容疑で東京地検特捜部に逮捕される。裁判では懲役4年の実刑判決が確定した。大王製紙創業家3代目として生まれながら、こうして私は鉄火場からムショへ叩き落されてしまったのだ。
pp. 4-6
読まれてどう思いましたか? エリートとみられた一人の人物が奈落の底へ落ちた動機と経緯を知ると、これは人間の性、宿命なのかもしれません。
しかし、誰にでも可能性があるわけではありません。莫大な金が簡単に手に入る一部の人だけのことでしょう。
しかし、これで一件落着とはなりませんでした。
なんと出所後、会長となり、再度カジノへ向かうことになったそうです。
私はその経緯を知りませんでした。最近のことでした。
次の書籍の中で自ら語っています。この書籍は読んでいません。
『熔ける 再び そして会社も失った』(井川意高 幻冬舎 2022年6月27日)
カジノで106億8000万円を失い、会長辞任、獄中へ。
そして懲役4年の刑期満了後に、再びカジノへ。リベンジの舞台は韓国ソウルの「ウォーカーヒル」
3000万円が9億円にまで増えるマジックモーメント(奇跡の時間)を迎える。
果たして、負けを取り戻す夢物語か、破滅への一里塚か。
ギャンブラー井川意高によるバカラ放蕩記。
しかしその裏ではギャンブルよりも血がたぎる、現会長佐光一派による井川家排除のクーデターが実行されていた。
「大王製紙から井川家を排除し、自らの地位を盤石とするために、佐光は300億円も無駄金を上乗せして会社に損害を与えた。『他人のカネ300億円で買った社長の座』は、さぞかし温く心地良いことであろう。これこそ特別背任ではないか。しかも、私の金額の3倍である。有罪とすれば懲役12年だ。」(本文より)
懲りないですね。カジノでの負けはカジノで取り返す、ということなのでしょうか?
法則2「執着」
事例として取り上げられているのは、半導体大手エルピーダメモリです。
2012年に会社更生法の適用を申請し、現在は、米国の同業大手、マイクロン・テクノロジーの子会社として事業を続けています。
エルピーダの場合、3つの執着が敗因となった、と日経ビジネスは断定しています。
1つ目は、パソコンなどに使う記憶媒体、DRAM専業メーカーへの執着だ。パソコンからスマートフォンへとインターネット接続機器の主役が交代する中、パソコン需要の減少でDRAM価格は急落。
2つ目がメーンバンクを持とうとしなかったこと。投資案件ごとに付き合う金融機関を変えた方が、より有利な条件で調達できるという判断からだ。
3つ目が、営業や資金調達など、主要な業務のすべてを坂本(幸雄社長、当時)氏1人で担おうとしたこと。
2014.09.08 p. 036
一つのことに執着するというのも、人間の性です。個人だけで済めば良いのですが、企業や組織となると崩壊し、大きな損害をこうむります。
![](https://assets.st-note.com/img/1695203173663-7nIc5ydpsR.png)
坂本幸雄社長(当時、左)
(写真=朝日新聞社)
「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか
2014.09.08
暴走はなかったが……
最初の敗軍の法則である「暴走」こそなかったが、自らの判断に固執したことで、経営再建に必要な手をすぐに打つことができなかった。
2014.09.08 p. 036
法則3「隠蔽」
「嘘の上塗り」という言葉があります。
一度嘘をつくと、その嘘を取り繕うために、さらに嘘をつくことです。
すると最後は行き詰まります。
隠蔽も全く同じです。
一旦隠蔽工作をすると、発覚を恐れ隠蔽を重ねます。どんなにうまく隠蔽したように見えても、どこからかその事実が漏れます。発覚するのは時間の問題です。
ここでも人間の弱さが表れると言えます。
北海道旅客鉄道(JR北海道)の度重なる隠蔽に呆れた人が、多かったと思います。老朽化した枕木を交換せずに、交換したことにしました。手抜きをしたのです。
そうした不正がはびこり、重大事故を引き起こしました。しかも繰り返されれました。救いようがありません。
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「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか
2014.09.08
![](https://assets.st-note.com/img/1695205522128-H0pFQvIelR.png)
2011年5月に炎上した特急車両(右)
「敗軍」の法則 なぜ、リーダーは失敗を繰り返すのか
2014.09.08
関係者の皆に倫理観が欠如していたのです。
隠蔽体質の組織には不正がはびこり、真実の上に、嘘が何層にも塗り固められる。やがて辻褄が合わなくなり、重大事故、内部告発、関係者の自殺、調査報道などを経て、恥辱にまみれた真実が、白日の下にさらされる。これが隠蔽に手を染めた企業の多くがたどる道だ。
2014.09.08 p. 037
経営陣が本業に専心する意志が欠落していました。本業にテコ入れしようとはしなかったのでしょう。
JR北海道では特に、2000年代に入った頃から、経営陣が鉄道事業にあまり関心を示さなくなっていた。代わりに不動産賃貸業やホテル業などの副業に力を入れるようになった。本業である鉄道事業収入は減少傾向にあり、副業での成長を目指したのだ。
衰退する既存事業に代わって、新規事業で成長を目指すJR北海道の戦略自体は間違っていない。だが、鉄道事業をおろそかにしてまで、副業に力を入れてしまった。これでは、鉄道事業を行うことがJR会社法で定められている特殊法人として、本末転倒だ。
2014.09.08
「ハインリッヒの法則」があります。これは経験則です。
1:29:300で表されますが、1つの重大事故が発生する背後には、29件のかすり傷程度の事故があり、その背後には300件のひやりとした経験がある、というものです。
慣れてくると、初心を忘れて手抜きをするようになります。
人間は楽な道を選びやすいため、そうなってしまうのでしょう。人間の性とは実に、悲しいものです。
次回は、
PART2 経営者が陥る5つの『罠』のうち、法則4「忘却」と法則5「慢心」
PART3 新たなリスクに立ち向かう
をお伝えします。
🔷編集後記
この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-09-13 14:45:36)のことでした。
今回、大幅に加筆修正しました。
日経ビジネスは、「暴走」「執着」「隠蔽」「忘却」「慢心」の五つの敗軍の法則を取り上げていますが、これらに付け加えるならば、「傲慢」「驕り」です。
権力を持つと、必ずと言っていいほどに「権力必腐|《けんりょくひっぷ》」(権力を持つと必ず腐敗する)に陥ります。人間の弱さでもあります。
自己を律することができなくなります。周りからちやほやされるだけでなく、周囲にイエスマンばかりを配置することで反対意見をシャットアウトしてしまいます。裸の王様です。
企業のトップになる(あがり)と、自分が見えなくなり、自分を律することができなくなり歯止めが利かなくなるのか、あるいは自分は全能の神と思い込むのか、それとも反対するものがいなくなり、独裁者と化すのか。
晩節を汚すことのないようにしてほしいですね。
尚、「敗軍の将、兵を語る」は現在は連載されていません。
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