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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 第84回

大人の流儀

 伊集院 静氏の『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院氏はこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

『大人の流儀3 別れる力』をご紹介します。

 ご存知のように、伊集院氏は小説家(直木賞作家)で、さらに作詞家でもありますが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。


大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 第84回

第3章 正義っぽいのを振りかざすな


「学者の常識と大人の良識は違う」から

伊集院 静の言葉 1 (249)

 ”Oぐ羅” は古いつき合いである。
 昔、競輪に馬鹿遊びをしていた頃、一週間の ”旅打ち” (バクチだけの旅ですな)の帰りは必ずここに寄った。
「どうでしたか?」
 私はうつむいて、酒を、とだけ言った。
「生きて帰ってこられたんです。それだけで十分ですよ」
「そうですよ。元気に帰って来られただけで私たちは嬉しいんです」
 女将さんの言葉が救いだった。
__銀座にも家族はあるんだ……。
 その女将さんが、この春、先立たれた。
 銀座に女将さんのいる店は数あるが、あんなにやさしい女将さんは他になかった。
 長く連れ添った妻に先立たれた男の哀しみは思わぬ時にやって来る。それは他人にはわかりえない。
 それでも踏ん張って生きるしかない。    

大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 


「なぜアメリカが正義なんだ」から

伊集院 静の言葉 2 (250)

 震災で花見を自粛という声が上がった時にも書いたが、花見というものの本来の意味は、今、生きていることを祝っての宴で、それは同時に亡くなった人へのレクイエムと感謝を込めた宴でもある。
 今年は日本全国、北の人への想いも込めて飲んだ方がイイ。
 酒が飲める人はどんどん外に出て飲みなさい。そのほうが景気も上向く。
 景気というものは、悪い、悪いと口にすると本当に悪くなる。これは人気と似ている。人のがすべてをこしらえているだけで、実体はわかってない。大恐慌なんてのが、そのいい例だ。    

                        大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 
                             



「なぜアメリカが正義なんだ」から

伊集院 静の言葉 3 (251)

 アテネは市民が皆政治家もどきになった時、何もかもが崩れた。政治家とは国を平気でこわす職業なのである。
 同じように役人が増えても国は傾く。昔の中国がそうである。役人が増え、好き勝手をすれば千年かけて築いたものは一夜で滅亡する。それが今の日本の政治家も役人もわからない。当たり前だ。当人たちが自分の足元をかえようなど微塵みじんも思っていない。
 議員の数を減らす。公務員の数を、給与を是正する。言うのは口だけでやりはしない。
 政治家がこれほどバカで無能とは知らなんだとマスコミが言い、今は国民までがそう口にする風潮が蔓延している。
 その政治家を選んだのは国民ではないか。 

                          人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 
                               


⭐出典元

『大人の流儀 3 別れる力』

2012年12月10日第1刷発行
講談社


表紙カバーに書かれている言葉です。

人は別れる。
そして本物の大人になる。


✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます


🔷「長く連れ添った妻に先立たれた男の哀しみは思わぬ時にやって来る。それは他人にはわかりえない。それでも踏ん張って生きるしかない」

この言葉はすごく実感できます。
私たちが結婚したのは1991年4月29日のことでした。
そして、妻が帰らぬ人となったのは2015年8月8日でした。
私の還暦が過ぎてから、わずか1ヵ月と8日後のことでした。
妻は私より8歳年下でした。
結婚25周年にあと8ヵ月余りのことでした。

私たちは24年余りの結婚生活の中で、楽しいこと、嬉しいこと、辛いこと、哀しいことを数多く共有してきました。
しかし、思い出の場面に浸り続けることはできません。
どんなに哀しくても「踏ん張って生きるしかない」のです。


🔶『大人の流儀3 別れる力』について『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』の中で言及しています。

伊集院静と城山三郎
『別れる力 大人の流儀3』
私が伊集院静さんに興味を持ったのは、彼の先妻が女優の夏目雅子さんであったこともありますが、『いねむり先生』という題名の小説を読み、不思議な感覚を味わい、また『大人の流儀』という辛口のエッセーを読んだからです。 

由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い p. 212


夏目雅子さんのプロフィール



🔶伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。


⭐ 原典のご紹介



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藤巻 隆
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