肩関節疾患での痛みや機能は筋力や可動域に左右される?されない?

DMNのアプローチを行う時に大切なのは、

セラピスト主体ではなくクライアント主体という考え。


DNMではアプローチの多くが2〜3分、箇所によっては5〜20分待つ場合もあります。

効果が出ればそれでOKなのですが、「もしかしたら何も変わらないんじゃないか?」と多少の恐怖感があるのも事実。

「人によって効果に差がある」

「効果が出ないことがあるのは何故か」

といったことに関してはDNMの講習で説明があります。
詳しくは以下のリンクから確認ください。

詳しくはこちら


受講した人もそうでない人も、

「理屈はわかってるけど怖いものは怖い!」といった方ももしかしたらいるかもしれません。

私は正直そうでした。

私はDNMメイン講習を6日間(1日で2日分の計12日分)で一気にコンプリートしたため、最初の頃は「待つ」ということに恐怖感を覚えていました。

それは慣れていなかったからで、
受講から1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月と時間が経つにつれて「待つ」ことに慣れてきます。

しかし今でも「待つ」ことにやや抵抗感がある部位があります。(少しだけですよ笑)


肩関節周囲の痛みです。


腰痛や膝痛、股関節(鼠径部)痛は効果が出やすい印象ですが、

「腱板損傷」や「インピンジメント症候群」と診断された方の介入では中々劇的な改善を得られないことが多いように感じます。

私だけでしょうか?

肩の痛みの回復には問題があり、約40%の人が12ヶ月後も痛みが持続している。
約50%が18ヶ月での機能の回復が不完全だった。
Experimental Pain Responses Support Peripheral and Central Sensitization in Patients with Unilateral Shoulder Pain.

どうやら私だけではなかったようです。


介入時に悩むことは
「スキンストレッチだけで足りるかな?」

「痛みがあるから動かすのは良くない気がするけどエクササイズとか行ったほうが良いのかな...」
といったこと。

私はDNMをベースにしていますが、DNMのアプローチ(スキンストレッチやコントラクトリラックス、ポジショナルリラクゼーション)以外も行います。

勘違いされやすいですが、
DNMで介入時に大切にされてることは
「優しくすること」「痛くしない」などです。

アプローチ方法は上記の3つだけというこだわりはありません。

もしエクササイズなどで筋力の向上や他動的なストレッチで可動域の拡大を促した方が効果があるのであれば、それらを採用します。

※ここで言う効果は「患者様の満足度が高くなること」と定義づけておきます。

ということで!このnoteでは

痛み・機能(生活動作に関する)と筋力低下や可動域制限の関係性について

考えていきます。


DNMをベースにしている方はもちろん、介入時になかなか改善が見られないことで落ち込んでしまう方の手助けになればと思います。


私が臨床実習や新卒で入職した頃に肩関節周囲炎、腱板損傷、インピンジメント症候群に対しては
「肩の外旋筋のエクササイズが有効」

「肩後面や胸部の硬さをとるようなストレッチを行うといいかも」

と指導されていました。
その施設によって、レベルの差はあると思いますが私はそんな感じです。

しかし新人ながら、
「とりあえず肩にはこうしとけ!」
みたいな根拠のない指導に対しては生意気にもあまり耳を貸さなかったのです。よくわからないですし。

DNMを学ぶ前の自分のアプローチ方法はリリース系(組織間リリースやポジショナルリリース)だったり、痛みの出ない位置で止めて待つといったものでした。

その時は痛みを与えないということには注意していましたが、軽度の痛みは見逃していましたし、それ以外の快・不快の感覚を尋ねることはしていませんでした。


しかし改善しない時ももちろんあるわけで、

そんな時は「とりあえずで肩関節外旋エクササイズやろうかな?」と思うことも。

それぐらい、エクササイズによる筋力強化や可動域練習は有効な方法だと諸先輩方に教えられてきました。

(これは被害妄想ですが、改善しないと「そんな触れる程度の介入で治るわけないじゃん(笑)」と先輩や同期に思われているんではないかと思ってしまうこともありました。)


◆結論

結論から言うと、

肩関節周囲の筋力・ROMの低下と患者が訴える痛みや機能への影響に関しては

関連性があまり無さそうです


肩峰下インピンジメント症候群(SIS)と診断された方を対象とした以下のような報告があります。

◆SIS患者における肩甲骨安定化エクササイズの有効性

この研究では、肩峰下インピンジメント症候群(SIS)の患者の痛み、肩の可動域、筋力、関節の位置覚、肩甲骨の運動障害、および生活の質に対するストレッチ、強化運動、および肩甲骨安定化運動のSISの患者に対する有効性を調査しました。。

平均年齢51(24-71)歳の27人の女性と13人の男性がこの研究に含まれました。すべての患者は、単純な乱数表に従って2つのグループに分けられました。
グループIはストレッチと強化のエクササイズ、グループIIにはストレッチと強化のエクササイズにプラスして肩甲骨の安定化エクササイズが追加されました。

痛みの重症度、肩のROM、筋力、関節の位置覚、外側肩甲骨スライドテスト(LSST)、西オンタリオ回旋腱板(WORC)インデックスは、治療の前後に評価されました。患者は週に3回、6週間のリハビリテーションプログラムを完了しました。

結果は、すべての測定値が治療後に両方のグループで統計的に改善したことを示しました。また、筋力、関節の位置覚、肩甲骨の運動障害の改善は、グループIIで有意に異なっていました。

結論: SISの治療では、ストレッチと強化のエクササイズにプラスして肩甲骨の安定化エクササイズを行うことで筋力を高め、関節位置覚を発達させ、肩甲骨の運動障害を減らすのにより効果的です。

The effectiveness of scapular stabilization exercise in the patients with subacromial impingement syndrome.15 August 2011

この結果を見るとストレッチと筋力強化だけを行うよりも、肩甲骨の安定化エクササイズを追加した方が

・筋力の向上
・関節位置感覚
・肩甲骨の運動障害
の改善に効果があると結論付けています。


しかし、それ以外の項目である
・痛みの重症度
・肩のROM
・生活の質
に関しては有意差がありませんでした。

筋力が向上しても痛み、生活の質(機能)といった部分は大きな差が生まれなかったということは

筋力と痛み・生活の質との関連性は低いのでは?ということが考えられます。


他にも以下のような報告もあります。

◆「痛みの訴えは日常生活での機能に影響を与えるが、筋力とROMは日常生活に影響しない」

この研究の目的は、第一にSIS患者の肩関節上腕関節および肩甲胸郭関節の筋力と外転および内旋ROMの障害を調査することでした。第二に患者が報告した肩の機能に対するこれらの障害の影響を調査することです。

専門家による検査(筋力は外転・外旋・伸展および水平伸展、ROMは外転および内旋)の前に、SPADI(肩の痛みや肩の機能を数値化したもの)の人口統計と運動恐怖症(TSK-11)に関する質問票を収集し検査を実施。

評価では障害がすべての障害テストで見られた。(肩甲上腕関節の強さと外転ROMの障害(29〜33%の欠損)が最も顕著であり、肩甲胸郭関節の強さと内旋ROMの障害(8〜18%の欠損)はそれほど顕著ではありませんでした。)
痛みの変数はSPADIとSPADI-Fスコアに大きな影響を与えましたが、筋力とROMは影響しませんでした。

かなりの筋力とROM障害がSISの患者で発見されました。
痛みだけが患者から報告された機能に有意に影響し、可動域や筋力の障害は影響しませんでした。

SPADIスコアは、SIS患者で観察された外旋と外転の実質的な強度とROM障害を反映していないため、これらの障害の補足評価が重要であるように思われます。
Glenohumeral and scapulothoracic strength impairments exists in patients with subacromial impingement, but these are not reflected in the shoulder pain and disability index. 17 July 2017

まだまだ他にも評価は必要と記載していますが、
今の段階では痛みと機能(SPADI:洗髪や着衣などの日常生活に関わる動作)は密接に関係しているが、機能に筋力・可動域は大きくは影響していなかったと結論づけています。

「可動域の制限がなくても生活動作を行う上で非常に困難(痛みがあるから)」

「可動域の制限はあるが生活する上では特に問題はない(痛みがないから)」

といった感じでしょうか。

その人の生活によっても差があるので一概には言えませんが、まずは痛みを減らすことを目標にする方が患者の期待に応えることが出来そうです。

では

・結局のところ、肩の痛みをとる有効な方法はあるの?

ということが気になります。

私はDNMを学ぶ以前に筋バランスの修正といった考えを採用していました。

姿勢を参考にしつつ筋バランスを整える。
近頃話題だった骨盤矯正も表現を変えれば筋バランスを整えるということにもなりますよね。(腸腰筋や大腿直筋の影響によって寛骨が前傾・骨盤下制が促されるなど)

確かに効果がある場合もあります。でも効果がない場合もありました。

これは次回以降のnoteにて書こうかなと思います。


追記:今回の記事は他の2名の方のnoteを読んでみるとさらに理解が深まる内容かと思います。ぜひご覧ください。

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