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【読書感想】白石一文『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』

2017.04.06 読了。

白石一文『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』

もう少し、あと数ページで読み終わる。
あと数ページで長い長い思惟の旅が終わる。

あとちょっとなのに。
あとちょっとで、真理に手が届きそうなのに。

届きそうで届かない。

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下巻に突入した頃だった。
社会経済、セックス観、社会思想、宗教思想、癌など、幅の広すぎる主人公の思考に付いていくのに疲れた頃、ぽーんとある想いが降ってきた。

これは、大きな愛の話なのだ、と。

私の中のミリセカンドが変化した瞬間だった。
事実、下巻には『累犯障害者』の引用文があり、障害者福祉の観点も加わっていく。

ここからは物語の核心に触れる。ネタバレを望まない方はここからは読まないで下さい。

カワバタが、富裕層が自分達の利益を貧困層に与えることを何故しないのか、と富裕層に対し半ば無茶苦茶な理論をぶつけるところがある。カワバタも、自分では何も動かない。私は、人を批判する前に自分で実践してみろよ、と思いながら読んだ。カワバタ自身もそのことは充分わかっていながら、人を責めずにはいられない。

カワバタが監禁され暴行を受けるシーンで、カワバタなりの「社会的弱者への救済」を私は見た。救済の実践を見た。
大きな世界は小さな世界と繋がっている。たくさんの命はひとりひとりの命で形成されている。
拷問を受けながらも頑なに口を割らなかった川端に、人間の為すべきことの原点が見えた。

世界中の弱き者を助けられなかった人生に嘆くんじゃなくて、1人でも救うことができた人生に胸を張る。私はそれでいいんじゃないかと思う。

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#片山恭一  さんの解説が素晴らしい

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