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【読書感想】白石一文『彼が通る不思議なコースを私も』

2018/08/05 初めて読む本、読了。

白石一文『彼が通る不思議なコースを私も』

白石さんの本は2冊目。『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』の半端ない情報量の多さが好きです。ほんと詰め込む詰め込む。この小説もそんな感じでした。作風なのかな。

ざっと粗筋を書くと、学習障害児の教育に熱意を持って取り組む頭脳明晰な小学校教師の林太郎と、ひょんな事から林太郎に出会い新入社員期に結婚する霧子の物語。

先述した通り、白石一文さんの小説はテーマをひとつに絞らずに、あれこれ詰め込み過ぎるくらいに詰める。

この小説も、夫婦の壮大なラブストーリーとも読めるし、教育業界に一石を投じる社会派な作品とも読めるし、人にはない特殊で希有な能力を持ってしまった人の話にも読める。女性のキャリア設計の要素もある。私が気付いていないだけで、他の要素もあると思う。私はこの小説を、発達障害や虐待で悩んだり苦しんでいる子供を何とかしたいとする若い教師の奮闘記として読みました。よく分からないところは深く考えなかった。

感想は、何を書いてもネタばれになるし、でもこの作品はネタばれしたくないので、心を打たれた文章を引用して終わります。

霧子が教師としての目標を林太郎に訊ねるシーンでの林太郎の言葉。長いので中略したり要約したりしてます。 

「大人と同じように、子供だって絶望する。そんな場面で、いま我慢してれば明るい未来が待ってるとか、夢や希望だけは捨てちゃいけないって言っても彼らは耳を傾けてはくれない」 

「一日一日、一時間一時間を生き抜こうって思える気持ちを維持するために必要なのは、自分が好きだって思えることなんだ」 

「だから、僕はどんな事があっても子供たちが自分の事を嫌いにならないように、すごくすごく好きでいられるようにしてあげたいんだ。誰かを負かすことでしか自信をつけられないような、こういう馬鹿馬鹿しい教育をやりつづけた結果、負けた方だけでなくて、勝った方まで自分の事を好きでいられなくなってる」

林太郎の言葉を、日本中の子供が自分のことを愛せるように、と願いながらスマホで打った。私も生きるために自分の事を好きでいようと思う。好きでいるのは言うほど簡単じゃないんだよなぁ。

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