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私たちのやり方

 戦後の代表的な知識人である加藤周一さんの『知識人』という文章を読みました。加藤さんは、日本の知識人は大衆からも、政界・官界・財界の指導層からも孤立していると述べています。日本では知識人が働く場が少ないのです。そもそも日本では理屈で説明して相手を説得する文化がありません。英語やフランス語やドイツ語が堪能で、海外の数多くの大学で教えてきた加藤さんは、その気になれば海外に活動の拠点を移すことが出来ます。そうしないのは、日本の知識人との間に、外国の知識人との間には考えられない連帯の意識があるからだそうです。加藤さんが(そして私も)日本人であり、我々の間には、日本人としての共通の問題があるからです。加藤さんは更に続けて「客観的に振り返って見た場合にも日本の知識人の中で暮らすことの良さはあると思う。その良さを言葉で表すことは難しい。おそらく一種の善意のあり方、当たりの柔らかさ、またはそこまでいうといくらか言い過ぎになるかと思われるが、まだ失われていない幸福に対する一種の感覚ということになることかもしれない。」と書きます。
 
 一方で私は、YouTubeで「白熱教室」で著名なハーバード大学のマイケル・サンデル教授の動画を見ました。その中で教授は、「共同体主義の考え方は、日本の伝統的な〝助け合い〟や〝共同体の絆〟の精神と深い関係がある。東日本大震災は日本の歴史上で類を見ない大きな災害として記憶されています。大規模な災害が他の国で発生した場合、通常は略奪や暴動が起きます。例えば、2005年にアメリカがハリケーン・カトリーナという大災害に見舞われました。その深刻な影響は物理的な破壊だけではなく、社会的な混乱としても現れました。特に、災害の後に目撃された無法地帯の状況による略奪行為は多くの人々を震撼させました。それに対して、2011年に発生した東日本大震災の際の日本人の行動は、多くの外国人にとって驚きのものでした。大多数の日本人は冷静に行動し、助け合いの精神により、社会的な混乱を最小限に抑えました。特に災害時によく見られる強盗や災害を利用した不正な価格設定といった行為は、日本では非常に少なかったと報告されています。この事実は、日本の社会的な絆や文化の強さを改めて世界に示すことになりました。日本人が日常的に見せる秩序正しい行動や共同体意識、互いに対する責任感を持つ態度には、外国人でも深い感銘を受ける人が少なくありません。東日本大震災の時も自分の困難な状況を乗り越え、他人を思いやる姿勢を見せていたのです。このような話を聞くと、日本人の高い道徳観や協調性、そして互いに対する思いやりの心がいかに深く根付いているかを感じることが出来ます。他者の感情や立場をきちんと理解し、自分の行動が他者にどんな影響を及ぼすかを常に意識することは、日本人の文化や性格に深く根付いている特徴と言えるでしょう。実はこの特徴は、日本人同士の間だけではなく、海外の人々との関係に於いても顕著に表れます。」と述べています。
 
 このサンデル教授の観察は、加藤周一さんが、〝幸福に対する一種の感覚〟と呼んだものだと私は思います。この感覚・文化は継承すべきものだと考えます。この数十年の新自由主義的〝改革〟は、汲むべき点はありましたが総じて日本人には合わなかったように思います。私達には私達の〝改革〟のやり方があるのです。


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