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Spitfire Solo Strings とBohemian Violin/Celloの雑記

簡単なデモがあります。聴きたい方は後半まで飛ばしてください。


初めに

DTMあるかるかもなのですが、手持ちの音源だと質感が気になるので良さげな音源も試してみたい・・・。インターネットで情報を探るのですが、案外音源の情報って少ないなーって思うことがあり、結局博打覚悟で買って試すなんて事が結構あります。
だったら、自分でレビュー書いてみるかー。って思いつきでちょっと書いてみようと思います。



音源の概略

Spitfire Solo Strings

クラシック音源で有名なSpitfire audioが販売しているkontact用弦楽器単体音源ライブラリのセットでバイオリン(ポジション別3種類)、ビオラ、チェロ、コントラバスのセット音源になります。
販売ページにて定価$399

Bohemian Violin/Cello

Virharmonicが販売しているバイオリン、チェロ単体のUVI用音源ライブラリ。4月頃に追加パッチ、ビオラ音源も販売する予定だとか。
販売ページにて定価$239

結論をいうと、どちらもいい音源です。すごく
ただし、お互い音源の特色、使い勝手が大きく異なります。

結構クセがあったり、ジャンルの向き不向きがあるかなぁなんて思う事があります。


両方に共通するする事


・聴いた感じの音の良さ
・ビブラート、スピカート、ピチカートなどの一通りの奏法が出来る。
・ラウンドロビン対応(同じ音を連続させたりした時に自然に聴こえるようにする技術)
・メモリ結構食う。(1音源辺り1GB〜)

という感じで、機能的にはどちらもソロ演奏を打ち込むには十分な性能があります。
しかしこれだけでは説明出来ないことが多すぎるので、各音源毎に説明していきたいと思います。


Spitfire Solo Strings

クラシック系のDTMやってる人なら結構知ってそうなSpitfire audioのソロ音源。Labのフリー音源でお世話になる人も多いかも。

定価で見ると結構高めだけど、弦楽器4本分セットなので1本辺り$99と考えると下手に音源揃えるよりコスパはいい方なのかな?とも思います。
音源を使うにはNative Instrument社のサンプラーkontactが必要になります。

音源について

本音源を使いこなすにはノートの入力、ベロシティの他にMIDI CCの調整が必須となるため、中・上級者向けになるのかなと思います。

Spitfireのkontact音源全般に言えるのですが、ベロシティとは別に音の強弱をモジュレーション(CC1)で表現します
そのためリアルタイムで打ち込みを行う場合MIDIキーボードでは左手でモジュレーションホイール調整、右手でメロディ打ち込みという運用になるかと思います。

奏法・表現

標準ライブラリだけでもテヌートからスタッカート、スピカート、トレモロ奏法など幅広い演奏が可能です。
その他にメロディを滑らかに繋ぐレガート専用ライブラリや、マニアックな奏法一覧を収録しているため、細かならニュアンスに対応しやすいです。

マイク・リバーブ・その他質感

近・中・遠距離の3種類のマイク音量のバランス調整を行う事ができ、固定となりますが遠距離のマイクバランスでホールリバーブの質感を再現出来ます。
panなどの位置感は一般的なクラシック編成で固定されていますが、ステレオ間の調整が行えるのでモノラル化したり幅広い調整が可能になっています。
ラウンドロビンは任意に設定可能、スタッカート系の音の短い奏法に感じては8サンプル程度をランダムに持ってくるので、連打音が自然に聞こえやすいです。

メモリ使用量

大体標準ライブラリ、レガート専用ライブラリが1GB程度です、ソロを打ち込む場合は両方使うことが多いと思うので、1つ2GBぐらいを見ておくといいかもしれないです。

セール情報

spitfireは新作以外に関しては基本的に季節毎のセール(off30%〜)、突発的に短期間行われるThunderboltセール(対象品のみoff40%〜)が狙い目です。
執筆中にThunderboltセール来てました。欲しかった人は申し訳ない。
セール中のバンドルの値引き率も高い時が多いので、まとめて欲しい音源がある人はそちらも一考になるかと。


Bohemian Violin/Cello

Virharmonic社が提供しているバイオリンおよびチェロ音源。
その他弦楽器のフリー版サンプルもあるので、気になった方はそちらも参考にしてください。
現在アーリーアクセス版の様な販売をされており、アップデート毎に価格が上がったりします
各音源$239となっており、割高と感じるかもしれないです。
使用にはUVIのワークステーション(無償)が必要になります。

音源について

本音源は打ち込んだノートの情報から判断、処理を行い滑らかな演奏を可能にしているのが最大の魅力です。
ノートの長さ、ベロシティだけの打ち込みでも自然なビブラートのかかった演奏が行えるので初心者から上級者まで幅広く扱う事が出来ると思います。クレシエンド等にはMIDI CC11が必要。
MIDIキーボードでもリアルな演奏が可能ですが、早いフレーズでラグやリズムのズレが発生するので遅延設定を調整してあげる必要があります。

奏法・表現

BohemianViolinは演奏表現を変化させる場合、演奏用ノートの手前に奏法を指定するノートを入力を使用する方式を採用しています。
奏法としてスタッカート、ピチカートの他にビブラートのオフ、トリルなど速く弾く奏法に対応したキーなどがあります。
その他に演奏表現自体を変えるキーや弓の返しなど、実際の演奏に合わせた弓の配分を行うキーもあります。

celloに関してもほぼ同様ですが、音の繋ぎの滑らかさ具合を調整するパラメータがある事、ビブラートのオンオフを切り替えるキーが無いなど若干異なる部分もあります。

マイク・リバーブ・その他質感

BohemianViolin/Celloを聴いた感じ1マイク+内蔵リバーブとなっています。細かな距離感は使用者のmixの腕次第になると思います。
ラウンドロビンは2つ以上サンプルを利用していると公式説明にあります。

メモリ使用量

かなりメモリを消費します。violinが1つ3〜4GB程度、cello1つが2GB程度とかなり使用します。
そのため、読み込み、プロジェクトの保存にかなり時間が掛かります
自分がわかっている範囲で、ストレージ、メモリのクロック速度が大きく影響するので、使用する場合はSSDに入れておきましょう…。
(参考までに、うちのNVMe SSD、2666MHzのメモリでViolin一個当たり一分半ぐらいかかります。Celloはもっと早いです)

セール情報

2022/02/25現在、ラストアップデート&BohemianViola予約開始に伴うセールを行なっており、各音源$149となっています。Violaの販売開始が四月頃を目途にしているとメールで見た気がするので、若干余裕はあると思います。



音源比較

実際に聞いて貰った方が早いと思ったので、手前味噌ですがうみねこのなく頃にの"hope"という曲の前半部分を四重奏風にアレンジしてみました。

これがベースとなるアレンジで、イントロ部分をレガートに、Aメロはスタッカートとピチカートを用いた短い奏法で、Aメロ後のイントロは中低音をメロディとした編曲で作っています。
このデモはKontakt factry libraryのオーケストラ用ソロ音源を使用しています。

今回以下の条件で打ち込んでいます。
・ノートのタイミング、長さは32分音符区切りでクオンタイズ
・概ね同じ表現になるように音の長さ、奏法を統一
・エフェクトは内蔵リバーブ+センドリバーブのみ
・マスターはリミッターのみで-14LUFSあたりになるよう調整

Spitfire Solo Strings

violin×2、viola、cello

各楽器ごとに通常ライブラリ、レガート演奏用ライブラリの二つを使用しています。

1st Violin初期設定

レガート部分打ち込みは以下の画像の通りノート長さ、ベロシティ、ビブラート(CC1)、Dynamics(CC11)で調整しています。

1st Violin打ち込み

メモリ使用量は全体で7.5GB程度になりました。自分のように1楽器2ライブラリでなければもっと抑えれると思います。

プロジェクトメモリ使用量

BohemianViolin/Cello

violin×2、cello×2
Violaがまだ販売前の状態のため、celloの高音域を割り当てています。

バイオリンに関してはベロシティと減衰用のExpression(CC11)を使用し、短い音符処理にスタッカート、スピカートのキースイッチを入れています。

1st Violinイントロ部分

メモリ使用量に関しては10GB超えとかなり小編成にしては重く感じる量だと思います。一般的なPCのメモリスペックとしては16GB程度が多いと思うので、さらにピアノを入れた編成でMIXしたりすることを考えると、メモリの増設などハードウェア構成についても考える必要がありそうです。

プロジェクトメモリ使用量

私的考察

・メロディの表現と作業性
メロディの滑らかさに関してはBohemianViolinが非常に自然ではないかなと思います。
もちろんSpitfire Solo Stringsの方もMIDI CCの細かな調整で同程度の表現は十分に可能だと考えていますが、同程度の表現にかかる時間を考えたときにどちらを選ぶかは目的に応じて考えるべきとも思います。

・短い音符の処理
完全に予想外だったのですが、Aメロ部分のSpitfire Solo Stringsの音符処理が非常に自然に感じます。ラウンドロビンによる同じ音が連続した際のばらつきが自然に感じたのかもしれないです。
BohemianViolin/Celloはスタッカート等の音が長めにとられている、連打音が不自然に聞こえるという性質があるように感じたので、自由度は無いが使い方次第とも思います。
Aメロ後のイントロでは躍動感を出すためにBohemianCelloのスタッカートを使用しており、表現としてとしては良いと思うのですが、若干公平ではなかったなと感じています。

・その他の印象
好みもあると思うのですが、Spitfire Solo Stringsのマイクポジションごとのステレオ感で音の抜けがあるように感じました。裏を返すと、初期位置からPanを変えようとすると違和感を感じる可能性も高くなるので、どちらが良いかと言われると一概に言えないです。



最後に

長々とした文となってしまいましたが、どちらの音源も魅力的で実用的であることが伝われば幸いです。
これ以外にも同じ種類の音源はたくさんあります。それらを知るための一つのきっかけに出来れば良いなと思いこの文を締めくくらせていただきます。


たけやん(@takeyan999)

普段は時間があるときにDTMで作曲したりしています。よろしければ試聴だけでもしてみてください。



参考文献・その他メモ書き

バイオリンのデモがあります。早いフレーズで自分のデモとは違う質感表現をしてます。パラメータ関係で非常に参考になります。

'23.8.9追記:普通に公式でバイオリン販売ありましたので修正。

動画中盤にノートとベロシティを調整したときの挙動について説明しています。基本的にSpitfireSoloStringsはこれの拡張版なのでキースイッチなどさらに複雑になりますが、作り込みはより本格的に出来ます。

https://virharmonic.zendesk.com/hc/en-us/articles/360011024879-Included-Articulations

Bohemian Violinのノートリファレンス。DeepLとか使いながら中身呼んでね。

公式のMIDIキーボード打ち込みデモ。細かいニュアンス用のキースイッチが増えてるので81鍵盤ぐらい欲しくなるかもしれないです。


自分の曲になってしまうのですが、Bohemian Violinでやや早いフレーズを引いた場合のデモ代わりに。スウィング系統だと結構裏拍タイミングずれるのでティック単位で気に入る範囲に調整する必要があります。
あとは、スタッカート、スピカート、奏法なしの短いノートの使い分けで短い音の表現に幅を持たせると良さそうかなと思ってます。


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