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Wish Rabbitの物語 〜願いをかなえる7羽のウサギ〜 【企画づくりのスタンス】


とおくとおく
どのぐらいとおくか分からない宇宙のどこか
星々を自由に飛び回る
7羽のウサギたちがいました

そのウサギたちは
しっぽのカタチに特徴があります
性格はバラバラですが
いつも一緒に遊びまわっている7羽

愛をふりまくラブラビット
優しい光のトゥインクルラビット、
星屑のメロディ奏でるソングラビット
いたずら大好きマジックラビット
仲良しだいすきリングラビット
恥ずかしがりやのスノーラビット
星々を駆けるスターラビット

宇宙のなかでも
めったに出会うことはできず
7羽のウサギたちを見つけると
願いが叶うという言い伝えもあるようです

そんな噂からついた名前が
「Wish Rabbit」

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なんのこっちゃの物語ですよね。

コレ、私が作ったオブジェ作品に伴うストーリーです。経緯を説明しないと意味不明になりそうだ。

これは、10年近く前に行政の公募で採用された作品です。その名も「御堂筋イルミネーション写真撮影スポットデザインコンペ」というマニアックの極みのような公募。

なぜ、私は7羽のウサギたちの物語を思い描き、そのオブジェを製作するに至ったのか・・・大したドラマはありませんが、意図などご一読いただけると幸いです。

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御堂筋イルミネーションとは?


大阪にお住まいの方でなければイメージが難しいかもしれませんが、大阪の中央部分を走る大きな幹線道路の「御堂筋」と呼ばれるエリアがあります。銀杏並木と近代建築の並ぶ大阪の観光スポットであり、中心地です。大阪でパレードの類が開催されるときには、だいたい御堂筋で行われます。

そんな御堂筋を使って10年ちょっと前から御堂筋イルミネーションというイベントがはじまりました。イルミネーション関連のイベントが世の中でも増えていた時代だと思います。

私が関わった9年前は一駅分ぐらいの距離だったのですが、現在は伸びに伸び、4駅にまたがる長大なイルミネーションになっています。冬場の大阪にお越しの際にはぜひご覧いただきたい。


Wish Rabbitを作るに至った、私のマインド


その御堂筋イルミネーションのエリア各所に設置する「写真撮影スポット」を募集するという主旨のコンペ。そこに採用された作品の一つが「Wish Rabbit」でした。

当時の私は半分社会人、半分学生という中途半端な立場でした。まだデザイン・アートの分野についての学びをはじめたばかりで、アウトプットの精度については今から思い返しても恥ずかしいものがあります。

しかし、よくよく思い返してみると「企画」をするにあたっての基本的な進め方やスタンス、大切にしているマインドはまったく変わっていませんでした。

ということから、私のスタンスを紹介するにあたっては良い事例だと思い、10年近く前の記録を引っ張り出してきたのです。


企画の経緯


さて、当時の背景からご説明しましょう。
実は約10年前、この大阪御堂筋の近辺では「御堂筋イルミネーション」と「光のルネサンス」という2つのイルミネーションイベントが開催されていました。主催が御堂筋イルミネーションは大阪府、光のルネサンスは大阪市と、なんだか二重行政の典型のようにも感じますね。

現在は「光の饗宴」という名称で府市合同のイベントとなっています。御堂筋イルミネーションも光のルネサンスもその名称や形態は残していますが、おそらく一体的に広報や運営が成されているはず。

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で、ここからが「大変個人的な印象」というコトを前提にお聞きいただきたいことなのですが、当時の私は「光のルネサンス」がキライでした。

率直に「ダサい」なぁと思っていたのです。当時流行りはじめたプロジェクションマッピングを活用していたりした点は刺激的でしたが、その他のイルミネーションがとにかくセンスがない。(あくまで個人の感想です。)

私は神戸出身でしたので「神戸ルミナリエ」というイルミネーションにも触れてきました。ソレと比較したときに、光のルネサンスの垢抜けなさたるや・・・という印象だったのです。(あくまで個人の感想です。2回目)

対して、御堂筋イルミネーションは単純な光の演出ではなく、御堂筋という場所の特性も活かしたステキな場だと感じていました。

普段から御堂筋近辺を通るような人でも余り意識して見てはいないようですが、御堂筋の銀杏の木は驚くほど背が高いのです。その樹形そのものを活かしたイルミネーションの演出や、周辺の近代建築の魅力をライトアップする演出など、同じようなエリアでこんなにも魅力が違うモノなのだなぁと思っていました。

しかし、当時の御堂筋イルミネーションは光のルネサンスの前座扱い、前説です。周りに聞いても「光のルネサンス」というイルミネーションのイベントは知っていても「御堂筋イルミネーション」という名称は全然知られていない。

「光のルネサンスの会場に行く道中も、なんだかキレイにライトアップされてるわぁ、光のルネサンスおもしろ~い」ぐらいの認知が多かったと感じています。御堂筋イルミネーションというイベントではなく、光のルネサンスの前座扱い。

基本的に光のルネサンスの会場を目指す方は淀屋橋という駅からまっすぐ会場の中之島エリアに向かいます。ということは、御堂筋イルミネーションの存在を知られていなければ、近代建築のライトアップなど、イベントの本質的な価値そのものには触れることなく来場者は帰宅の途についてしまっていたのです。

当事者でも何でもない私なのに、この状態に憤りを感じていました。なんで何も関係ないアンタがそんなプリプリ怒ってるの・・・と思われるのも当然でしょう。理由は今にしても分かりませんが「良いモノが良い評価をされていない」という状況が、きっとイヤだったんだと思います。

「なんで優れた演出をしている御堂筋イルミネーションが前座扱いで、イケてない光のルネサンスの方が注目されてんの!」と。(あくまで個人の感想です。3回目)

それが作品の応募に繋がったのだと、なんとなく記憶しています。


与件そのものが、少しズレている違和感


そもそものお題は、御堂筋イルミネーションのエリア数か所に、イルミネーションで作成した写真撮影スポットを作り、このエリアに来た人を楽しませるということを目的にしていたように記憶しています。

だから、採用者は私の他にも複数いましたし、複数の作品をエリア全体に点在させることで来場者を楽しませるという効果を狙ったものだったのでしょう。

しかし私は、そもそものお題・スタンスに疑問を感じました。

多くの人のなかで前座扱いでしかない状態の御堂筋イルミネーションが、単に写真撮影スポットを置いたからといって、正しく楽しんでもらえるのだろうか?と。そもそも御堂筋イルミネーションの価値とは「エリア全体を歩き回る」ことで、はじめて理解できるものなのではないだろうか。と。

そこで気付いたのです。「エリアを歩かせる仕掛け」が圧倒的に足りていないのではないかな?と。エリア全体はとても魅力的に仕上がっているが、その価値はエリア内を歩き回らないと理解できない。だから、一駅分余計に歩いてほしいはずなんです。でも、その仕掛けがなかった。

いまのビジネスシーンでもよくある場面です。「その与件は、本当に正しいのか」を疑うシーン。前提条件がズレていたり、手段と目的が入れ替わっていたり、目的の達成に向けて提示されている手段がそもそも違っていたりと、「お題」を提示されるビジネスでは頻繁にあるシーンだと思います。

この点については、「与件を疑うための作法」とも言える方法論を自分のなかで持っていますので、後日別の記事にしてみたいと思います。


エリアを歩かせる仕掛けとしてのWish Rabbit


さて、そこで立案した企画が最初に挙げた「Wish Rabbit」の物語でした。

御堂筋イルミネーションの会場内各所に7羽のウサギを点在させ、そこに「すべてのウサギを見つけると願いが叶う」というストーリーを併せて紹介することで、会場内を歩き回る「動機付け」に繋げるという狙いのものです。

そもそも、複数の写真撮影スポットがあったからと言って「じゃあ全部のスポットを回ろう」という動機には繋がらないでしょうし、御堂筋イルミネーションというイベントの認知自体が低い当時の状態では、会場すべてを回るつもりで来場している人も少ない。ならば、会場を歩く動機付けこそが必要なモノなんじゃないかという気付きが出発点でした。

ただ歩かせるだけなら他にも方策はあったでしょう。そして、歩いてさえもらえれば御堂筋という場の良さには気づいてもらえるはず。しかし、私はそこにもう一つ来場者の、参加者の「幸せ」を付け足したかったのです。

それが、「願いが叶う」という物語のメッセージです。

もちろん、誰が作ったのか分からないストーリーを信じる人なんていないでしょう。「願いが叶う」なんてワードそのものが、どこかの霊感商法の怪しい商材で使われるキーワードなのですから。

しかし、そのワードと世界観が来場する方の「最初の動機」としてさえ機能すればよいと思っていました。だって、歩き回ってさえもらえれば御堂筋の魅力には気付いてもらえるはずなのですから。(写真は当時の御堂筋イルミネーション)

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現実のアウトプット


で、物語を考えていくわけです。もともと妄想癖の固まりのような人間だった自分はどんどん7羽のウサギたちと、そこにまつわるストーリーのアウトラインを作り上げていきました。「設定資料」と言ってもよいかもしれません。普通は「オブジェ」に必要なものではありませんよね。

宇宙で遊んでいた7羽のウサギたちが、キラキラと美しい光の川を見つけ地球にやってくる。しばらくココで遊ぶことにしたようです。それが御堂筋イルミネーション。

実際の落とし込みは7体のウサギのオブジェをつくり、各ウサギを紹介するパネルを併せて展示するという形式を取りました。そのパネルには「7羽見つけると願いが叶う」というストーリーを表示し、あわせてQRコードによる誘導から7羽の活躍をイラストと物語で追うことのできるサイトへの誘導も図っていました。(現在は残っていません。)

余談ですが、当時Rallyみたいなサービスがあったら飛びついていただろうなぁ、もっと出来ることもたくさんあっただろうなぁと妄想します。(タマに一緒にお仕事させていただくRallyさんというモバイルスタンプラリーのサービスを紹介させていただきますね。)

予算はオブジェ自体の作成でパツパツになってしまい、企画自体に参加するための誘導は一切できませんでした。しかし、それでも当時エゴサのようなものをしていると、思った以上の方が楽しんでいてくれた様子が見て取れたのです。このときの嬉しさみたいなモノも今の原動力だなぁと思い返すと記憶が溢れてくるものですね。

当時はブログやmixiが最盛期の時代です。アメブロやexcite blogなど当時流行っていた媒体で楽しんでいただけている声を拾うことはできていました。全部真面目に探して足がパンパンになったというクレームも・・・

作品としてのクオリティや、動機付けを行う誘導力、企画としての必然性など、今から考えるとツッコミどころも満載なのですが、それはアウトプットの能力に関わる問題です。まだまだ駆け出し段階の自分にはこれが精いっぱいでした。しかし、根本的な発想やスタンスは、今でもまったく変わっていません。

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企画をつくるときに大切にしているプロセス


自分が企画づくりにあたって大切にしているプロセスを言語化すると以下の3つだと言えそうです。

・与件を一度は疑ってみる。
・より「ステキ」な状態が何であるのかを定義する。
・「ステキ」に辿り着く「ステキ」な実効策を検討する。

クリエイターや企画屋あるあるだと思うのですが、相手から提示された「与件」がそもそも違和感を覚えることも多いはず。そのまま鵜吞みにする方もいるのでしょうが、一度はその前提条件を疑ってみるようにしています。

「〇〇のために△△をする」という前提は本当に成立するのか?、もっと違う解釈やアプローチがあるのではないか?、ここを疑えるかどうかで、未来像の思い描き方が全く変化すると感じています。

そして、「どんな状態が理想像なんだろう」「理想像にある状態で人はどんな行動を取るんだろう」と、その場に関わる個人の行動を具体的にイメージしていきます。

ステキな状態を定義するとは、そこに関わる個人の行動を想定するということでもあります。行動がイメージできていない状態とは、ステキな状態が何なのか自分でイメージできていないということでもあるのです。

よって、その「理想的な個々人の行動」に繋げるためには何を実効策として行えばよいのかを検討していくという流れになります。そして、実効策自体がステキであることが理想像に繋げる道筋をより魅力的なモノにすると信じています。


理想像の解像度を高めることを恐れない


すべての企画、アイデアを生み出す行為に対して「よりステキになる未来」が何なのかを考えます。もちろん、「現実に落とし込む能力」は未だに満足できるレベルにないので、常に磨き続けようとするのでしょう。しかし、アウトプットの能力は如何に向上しても決して満足すること無いと思います。たぶん、一生満足しません。

だから、より「ステキな未来」をつくるために企画・アイデアを、これから先も延々と頭をこねくりまわして作っているのでしょう。理想像を思い描くことが第一歩。「現実を見ていない」と言われても理想像を語ることを恐れません。理想像の解像度を上げたうえでの共有こそが、ステキな未来へ繋がる道筋だと信じているから。だから私は、これからも「ステキ」を探してアイデアをこねくり回します。

その原点とも言えるWish Rabbitの物語を紹介させていただきました。決して世の中でバズったわけでも、名のあるクライアントの案件だったわけでも、専門家から高い評価を受けたわけでもありません。社会に残した爪痕なんて無いに等しい。アウトプットの精度も低い。

それでも、私のスタンスを紹介するにあたっては相応しいモノだと思います。おわり。

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