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論文紹介 本当に大規模戦争が起こるリスクは小さくなっているのか?

1945年に第二次世界大戦が終結してからは、世界で同じような大規模戦争が起こりにくくなり、より平和な時代に移行したという見方があります。核兵器が登場したことで全面戦争の費用が耐え難いものになったこと、戦後に世界経済の一体化が進んで経済的な相互依存が強化されたこと、そして戦争を好まない一般の有権者が政治に参加できる民主主義の国が増加したことなどが、平和の維持に寄与していると考えられています。

しかし、コロラド大学のコンピューター科学者Aaron Clauset准教授はそのような解釈に反対しています。彼の統計分析によれば、第二次世界大戦に匹敵する大規模戦争のリスクは1945年を境にして変化したとは認められません。

Clauset, A. (2018). Trends and fluctuations in the severity of interstate wars. Science Advances, 4(2). DOI: 10.1126/sciadv.aao3580

著者は第二次世界大戦が終結してから、全世界で大規模戦争のリスクが軽減されたと主張するためには、統計的な根拠が欠かせないと主張しています。Correlates of Warのデータセットで19世紀から21世紀の初頭までに国家間で戦争が起きた頻度と、犠牲者の数で表される戦争の規模を考慮に入れて分析すると、現代の世界は必ずしも大規模戦争のリスクが小さくなっているとはいえないことが分かりました。

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