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戦争を学ぶ

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戦争を学びたい人のためのマガジンです。軍事学のテーマを中心に、戦略、戦術、兵站、戦史などに関する記事を収録します。
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#外交

なぜ大国の脅しが失敗するのか?: Coercion, Survival, and War(2015)の紹介

国力に優れた大国は、自国の要求を他国に押し付けやすくなるというイメージがありますが、実際…

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武内和人
8か月前
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どうすれば戦争のエスカレーションを抑制できるのかを考察した先駆的研究War(1977)の…

アメリカの政治学者リチャード・スモーク(Richard Smoke)は歴史上の戦争の過程を分析するこ…

武内和人
9か月前
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複数国が参加する連合作戦は外交交渉と不可分の関係にある:1943年のカサブランカ会談…

1943年1月14日、フランス領モロッコで開催されたカサブランカ会談は、第二次世界大戦で同盟関…

武内和人
9か月前
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なぜ戦間期の英国はドイツとの対立を避け、宥和に動いたのか? The Ultimate Enemy(19…

1933年にアドルフ・ヒトラーが新政権を発足させてから、ドイツは将来の戦争を見据え、軍備を積…

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武内和人
10か月前
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論文紹介 なぜソ連は1979年にアフガニスタンに侵攻したのか?

1979年12月、ソ連は国境に集結させた部隊をアフガニスタンの領域に侵攻させ、アメリカを含めた…

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武内和人
10か月前
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メモ なぜ中国はベトナム戦争に介入したのか?

1965年、中国は北ベトナムに戦闘支援部隊を派遣することを決定しました。当時、北ベトナムはソ…

武内和人
1年前
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論文紹介 戦争のエスカレーションから抜け出せない指導者の心理を読み解く

研究者は戦争に関する意思決定過程を考えるとき、その戦争を即座に中断したとしても取り戻せない埋没費用(sunk cost)の大きさが重要であることを指摘しています。心理的アプローチで戦争の原因を考察する研究が進展したことによって認識されるようになった知見であり、例えば以下の論文は成功の見込みが乏しいにもかかわらず、指導者が戦争をエスカレートさせる理由を説明したものです。 Taliaferro, J. W. (1998). Quagmires in the periphery:

パレスチナとイスラエルとの間で続く暴力の応酬に迫ったThe Israeli–Palestinian Con…

イスラエル人とパレスチナ人の対立には歴史があり、オスマン帝国の時代にまでさかのぼることが…

武内和人
1年前
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論文紹介 弱者のエスカレーションも戦略として合理性があるかもしれない

国際政治では強者が弱者に対して主導権を握っているというイメージがあります。そのため、ある…

武内和人
1年前
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劣勢であっても戦い続けることが一つの戦略になる理由 Who Wins?(2012)の紹介

戦争の歴史では、敵に対して圧倒的な軍事力を持つ大国であっても、戦略的に敗北した事例があり…

武内和人
1年前
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戦争が政治的交渉の延長であることを理論的に分析している論文リスト

プロイセンの軍人カール・フォン・クラウゼヴィッツの理論によれば、戦争は政治的交渉の延長で…

武内和人
1年前
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論文紹介 戦況の変化が交戦国の交渉行動に及ぼす影響を分析する

戦争が始まると、交戦国は相互に武力を用いて争いますが、そこでは交渉も進められています。し…

武内和人
1年前
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論文紹介 戦争において国家は敵国とどのように外交を進めるのか?

戦争は他の手段をもって行われる政治的交渉の継続であるといわれていますが、実際に交戦国がど…

武内和人
1年前
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論文紹介 国際紛争で中途半端に妥協すると再発のリスクが高まる

交戦国の指導者が直面する外交上の難題の一つは、どのような条件の下で戦争を終わらせることが最適なのかを見極めることです。敵国の指導者と合意をまとめ、形式的に戦争を終わらせることができたとしても、将来的に戦争が再び勃発するリスクがあります。平和を回復した後で敵国は軍備を再建し、作戦の準備を整え、再び戦いを挑む可能性があるので、どのような条件で和平を成立させるかは、将来の世代の安全に関わる重大な問題です。Maozのような研究者は、徹底的に敵を打ち負かした後でなければ、戦争が再発する