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戦争を学ぶ

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戦争を学びたい人のためのマガジンです。軍事学のテーマを中心に、戦略、戦術、兵站、戦史などに関する記事を収録します。
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#政治

論文紹介 ネットワーク分析で国際テロ組織の構造を分析すると何が分かるか?

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件以降、多くの研究者が国際テロ組織の調査研…

武内和人
1か月前
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ポスト冷戦時代に「テーラード抑止」を提唱したDeterrence in the Second Nuclear Age…

ソ連の崩壊と共に冷戦構造が崩れると、国際システムの状況は冷戦期のそれとは大きく異なるもの…

武内和人
3か月前
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核の時代における防衛知識人の働きを記したThe Wizards of Armageddon(1983)の紹介

フレッド・カプラン(Fred Kaplan)はアメリカの防衛問題を専門とするジャーナリストであり、…

武内和人
4か月前
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メモ なぜヒトラーは降伏しなかったのか

イアン・カーショー『ナチ・ドイツの終焉』(宮下嶺夫訳、白水社、2021年)は外交によって戦争…

武内和人
4か月前
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ポスト冷戦の「第四世代戦争論」は現代戦にどのような視座を与えたのか

アメリカの軍事著述家ウィリアム・リンド(William Lind)は戦争様相の変遷に独自の時代区分を…

武内和人
6か月前
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どうすれば戦禍で犠牲となった文民の数を推計することができるのか

戦争の歴史で文民が軍人から区別され、法的保護の対象と位置付けられるようになったのは比較的…

武内和人
7か月前
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論文紹介 冷戦終結が世界的な内戦の増加の原因だったわけではない

1991年にソビエト連邦が崩壊し、冷戦構造がなくなったことによって、世界では途上国を中心に内戦が増加したといわれることがあります。また、その原因については、途上国の民族的、宗教的な対立が激化したことが取り上げられることがありますが、このような見方の妥当性については複数の研究者から疑問視されてきました。 FearonとLaitin(2003)の論文もそのような疑問を投げかけた研究の一つでした。ポスト冷戦の国際システムが構造的に変化したことで世界的に武力紛争が増加したのではなく

どうすれば戦争のエスカレーションを抑制できるのかを考察した先駆的研究War(1977)の…

アメリカの政治学者リチャード・スモーク(Richard Smoke)は歴史上の戦争の過程を分析するこ…

武内和人
9か月前
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論文紹介 なぜソ連は1979年にアフガニスタンに侵攻したのか?

1979年12月、ソ連は国境に集結させた部隊をアフガニスタンの領域に侵攻させ、アメリカを含めた…

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武内和人
10か月前
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メモ 2021年のクーデターで一変したミャンマーの政治情勢

東南アジアのミャンマーでは2021年2月1日に軍部がクーデターによって権力を掌握しました。しか…

武内和人
1年前
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論文紹介 なぜ英国は1982年のフォークランド侵攻を予見できなかったのか?

1982年4月1日、イギリスが統治する大西洋の離島フォークランド諸島にアルゼンチン軍の部隊が上…

武内和人
1年前
23

メモ クーデターを警戒する国家の指導者は、軍隊の能力を低下させる傾向にある

非民主的な政治体制の指導者は、合法的な手段で地位を追われることはあまりありませんが、その…

武内和人
1年前
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パレスチナとイスラエルとの間で続く暴力の応酬に迫ったThe Israeli–Palestinian Con…

イスラエル人とパレスチナ人の対立には歴史があり、オスマン帝国の時代にまでさかのぼることが…

武内和人
1年前
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論文紹介 ジョンソン政権のベトナム政策と国内におけるエリートの統制

国際関係論の理論では、その国の政治体制のタイプが対外政策の選択に重要な影響を及ぼすと考えられています。つまり、政治体制のタイプが民主主義に近づくほど、指導者は選挙を通じて説明責任を問われやすくなるため、武力行使に慎重な態度をとりやすくなると考えられます。ところが、政治行動論の研究では、そもそも有権者が対外政策について知識を持っているわけではないことが指摘されています。これは政治的に大きな意味を持ちます。 というのは、ほとんどの有権者は政治知識を補うために、エリートの見解を手