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戦争を学ぶ

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戦争を学びたい人のためのマガジンです。軍事学のテーマを中心に、戦略、戦術、兵站、戦史などに関する記事を収録します。
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#書評

殺戮や破壊ではなく、精神的な衝撃の軍事的な重要性を強調したThe Human Face of War(…

イギリス陸軍軍人ジム・ストー(Jim Storr)は戦闘における奇襲の意義を改めて確認し、その効…

武内和人
1年前
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砲艦外交を戦略として読み解くGunboat Diplomacy, 1919-1991(1994)の紹介

イギリスの研究者ジェームズ・ケーブル(James Cable, 1920-2001)は外交官として勤務した経験…

武内和人
1年前
21

いかに国家は戦費を調達するのか? How States Pay for Wars(2016)の紹介

戦争を遂行する能力を構築するためには、財政的な裏付けが必要です。軍隊を構成する人員、武器…

武内和人
1年前
35

第一次世界大戦の太平洋戦線を記したThe Neglected War(1995)の紹介

第一次世界大戦(1914~1918)はその名の通り世界規模で遂行された戦争でしたが、その歴史はヨ…

武内和人
1年前
17

アジア太平洋の戦争史で兵站の意義を考えるMilitary Logistics and Strategic Perform…

その国の軍隊が与えられた任務を達成できるかどうかは、産業動員や兵站支援の成否によって大き…

武内和人
2年前
24

戦間期における米国の対日戦構想の変遷を辿る『オレンジ計画』の紹介

アメリカは1941年に第二次世界大戦に参戦し、日本との戦闘を開始する前から、日本との戦争を想…

武内和人
2年前
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感情に囚われる指導者の外交を分析したEmotional Choices(2018)の紹介

政治学では軍事的に劣勢な国家の指導者は、外交交渉により不利な立場を受け入れざるを得なくなると考えられていますが、それは外交交渉が決裂し、戦争状態に移行したときに支払わなければならないコストが、相手国よりも大きくなると予想されるためです。 しかし、現実の世界では軍事的に極めて不利な状態であるにもかかわらず、頑なに譲歩しようとしない指導者も存在します。これは国家の指導者の政策選択を説明する上で「合理的選択アプローチ」に限界があることを示しています。この課題に取り組むために、近年

なぜ戦争で民間人が攻撃されるのか?『戦争で民間人を標的にする』(2008)の紹介

国際法では戦時であろうとも軍隊が敵国の民間人を意図的、計画的に攻撃し、殺傷することは容認…

武内和人
2年前
44

戦争の原因を探ることの難しさを論じた『戦争の原因』(2010)の紹介

ジャック・レヴィ(Jack S. Levy)とウィリアム・トンプソン(William R. Thompson)は戦争の…

武内和人
2年前
91

航空戦力だけでは戦略的効果を見込めない『勝利のための爆撃』の紹介

第一次世界大戦が終結した後に、イタリアの戦略思想家ジュリオ・ドゥーエは、将来戦の結果を決…

武内和人
2年前
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エスカレーションとは何か、どのような戦略が考えられるのか?『エスカレーション論』…

20世紀のアメリカの研究者で、軍事学における核戦略理論の発展に貢献した研究者にハーマン・カ…

武内和人
2年前
21

なぜ一部の交戦国は絶望的な戦況でも戦争を続けるのか? 『戦争と懲罰』の紹介

戦略の原則として、戦争は可能な限り早期に終わらせる方が有利です。戦争を遂行するための支出…

武内和人
2年前
24

平和を回復する戦略を考察した『すべての戦争は終わらなければならない』の紹介

戦争を終わらせることは、始めることよりもはるかに難しい仕事です。交戦国の間で繰り広げられ…

武内和人
3年前
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独ソ戦を新たな研究成果で見直した『モスクワのための戦い』の紹介

1941年6月22日、ドイツがソ連に対する大規模な攻勢をとったことで、独ソ戦(1941~1945)が勃発しました。ドイツ軍の快進撃を受けて、ソ連軍の部隊は各地で退却を強いられ、主要都市を次々と奪われました。ソ連軍がドイツ軍に対して初めて本格的な反攻を開始した戦闘が1941年10月に始まったモスクワの戦いであり、これは後の独ソ戦の展開を左右する画期的な戦闘だったと考えられています。 すでにモスクワの戦いに関する研究は数多く行われていますが、David Stahelがケンブリッ