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戦争を学ぶ

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戦争を学びたい人のためのマガジンです。軍事学のテーマを中心に、戦略、戦術、兵站、戦史などに関する記事を収録します。
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2022年7月の記事一覧

論文紹介 戦力で劣る国を抑止できない3つの要因

現代の世界では、抑止戦略が戦争を防止し、平和を維持する基本的な手段となっています。しかし…

武内和人
2年前
40

欺騙の行い方を分析した軍事学の研究『計略(Strategem)』(1969)の紹介

古代中国で成立した軍事学の古典である『孫子』では「兵は詭道なり」と記されています。これは…

武内和人
2年前
42

ウクライナ軍がロシア軍に反撃するために取り組むべき戦術的課題は何か?

2022年2月24日以降、ウクライナ軍はロシアの軍事侵攻で大きな損害を被りましたが、依然として…

200
武内和人
2年前
12

勢力移行論を使って世界情勢の安定性を評価する:World Politics(1958)

国際政治学の研究領域では、各国の勢力関係の優劣が大きく変化することを勢力移行(power tran…

武内和人
2年前
23

論文紹介 軍隊に入った若者が忠実な国民になるとは限らない

兵役を国民の義務として、軍隊に入隊させたとしても、彼らの心に国民の自覚が芽生え、国家共同…

武内和人
2年前
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メモ ソ連軍は米軍の潜水艦発射弾道ミサイルをどう見ていたのか?

前回の記事(なぜ潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)が抑止に役立つと考えられているのか?)で、…

武内和人
2年前
17

論文紹介 フォークランド戦争で学ぶ戦闘と後方支援のバランス

フォークランド戦争(1982)でイギリスとアルゼンチンは南大西洋のフォークランド諸島の支配をめぐり戦いました。もともとフォークランド諸島は小規模なイギリス軍の守備隊に守られていましたが、アルゼンチン軍の攻撃で守備隊は降伏に追い込まれました。 不意を突かれたイギリスは本国から遠く離れたフォークランド諸島に戦闘部隊を展開する戦力投射能力の不足に苦しめられました。政府は軍部に早期奪回を求めたので、多くの部隊指揮官は後方支援の限界を乗り越えるために、さまざまな課題を即興的に解決しな

¥200

経済的相互依存と戦争の意外な関係を説明する『経済的相互依存と戦争』(2015)の紹介

国際政治学では貿易や投資を通じて経済的相互依存が強化された場合に、戦争のリスクにどのよう…

武内和人
2年前
21

第二次世界大戦の兵士の社会心理に迫る古典的な業績『アメリカ兵』(1949)の紹介

1945年8月、第二次世界大戦が終結を迎えると、アメリカ社会科学研究会議(Social Science Rese…

武内和人
2年前
19

戦略家に必要なものは合理性や独創性ではなく、不屈の精神である

プロイセンの軍人カール・フォン・クラウゼヴィッツの古典的著作『戦争論』の見解によれば、戦…

武内和人
2年前
25

論文紹介 なぜ戦術の研究で「武器」ではなく、「武器体系」に注目するのか?

軍事学の研究で武器体系(weapon system)という概念が使われ始めたのは1950年代のことであり…

武内和人
2年前
20

イラン・イラク戦争で学ぶ現代の海上護衛戦の課題『タンカー戦争』(1996)の紹介

イラン・イラク戦争(1980~1988)は海洋戦略の分野で多くの教訓を残した戦争でした。当時、こ…

武内和人
2年前
26

核戦力は通常戦力の代わりにならない『抑止か、防衛か』(1960)の紹介

核戦力と通常戦力はいずれも軍事力の要素ですが、それぞれの機能は大きく異なっています。核戦…

武内和人
2年前
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航空戦略家ドゥーエは空軍の所要兵力をどのように見積もっていたのか?

イタリアの軍人ジュリオ・ドゥーエ(1869~1930)は航空戦略の先駆者であり、今でも軍事学では広くその名が知られています。彼は航空機を陸海軍の補助として運用するのではなく、独立した空軍という軍種として運用することを主張し、敵の航空戦力を航空戦によって撃滅し、航空基地や生産拠点も破壊敵は飛行ができなくさせることを重視しました。 このようにして、敵国に対する制空権を獲得することに成功すれば、陸上戦、海上戦によらずとも、敵を屈服させることができるというのがドゥーエの戦略思想でし