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【天空のブランコ-等覚寺の紫さん】

まちにも寿命があるのなら、「まちを看取る」というのもひとつの方法かもしれない。
そんなことを考えた。
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かつて、山伏の修行の場だった名残りを残す、苅田町の等覚寺(とかくじ)。
それを「まちにいちばん近い天空」と名付けた人は、移り住んで5年になる、関西出身の余村紫(ゆかり)さん。
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「生きる_働く」とネット検索して見い出したこのまちに初めて来て、「桃源郷を見つけたようで一目惚れした」そうだ。
確かに決して大げさではない。“天空の桃源郷”という趣の静かで優しい場所だ。
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紫さんが単身、地域おこし協力隊としてやってきたこの集落は10軒17人。
みんな素敵な人だが、必ずしも人口を増やすことや外から人が移ってくることを望むわけでもない。
それが現実。
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「人を呼び込む」とか「まちを残す」とか、そんな次元を超えた住民の方々の価値観。
人口の増減を勝ち負けのように捉える、ある種の“合理的”な価値観は、都市に住んでいる人間の傲慢なのかもしれない。
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まちの方々は、時の流れの中で、起こりゆく未来を、どんな未来だとしても、「受け容れる」。だから「今の暮らしを、一日一日を、大切に重ねたい」。
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この町に惚れ込んだからこそ、紫さんはジレンマに突き当たる。
心中、美しいこの町だからこそ「残したい」「引き継ぎたい」という思いがある。
だから、麓のまちから通ってきてくれる人を少しでも増やそうと、カフェを運営したり、そば打ち仲間をつくったり、そして絶品の味噌を販売したり。
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でも、住んでいる方々が望まないことまでしてはならない。
すべては叶わない。
だから、じわっと、ゆるやかな、ファンづくり、コミュニティづくりを手掛ける。
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紫さん、等覚寺が好きだからこそ、前のめりや、思いもかけぬ中傷や、意図せずして他人に嫌な思いをさせることもあったという。それが一番辛かったと。
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「守りたいけど守れない。守れないけど守りたい。」
そんな紫さんの行ったり来たりの思いが、
絶景の中の真新しいブランコに投影されているようだ。
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成功すればやっかみがある。目立てば中傷もある。
それはどこの人間社会でも起こり得る、自然なこと。
そんな中で少しでも「信頼」という貯金を積み上げて、周りの住民の方々に教えを請い、自分の正義だけを振りかざさずに、そして楽しんで暮らす。
当事者として実践し続ける。
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関西からやってきた紫さん、
もう、
この地に暮らし続けると「覚悟」した。
覚悟したらば、必ず道が開けると信じて。
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ブランコと紫さんがなぜかオーバーラップした。
止まったブランコに、少しずつ体重をかけながら、動きを徐々に大きくしていく。
いつも行ったり来たり。
体を放り出すように、でも、ブランコからは絶対に離れない。
遠くの絶景を見ながら。
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「等覚寺で元気なばあちゃんになる!」
紫さんの挑戦が、その足どりが、きっと、全国あちこちの地域の役に立つと確信する。
心から応援したい。

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