【歯科を通して見るパブリックヘルスの未来】
Teppei Tsukiyama のお誘いで、昨年に続き、Perio Health Institute Japanの"Next Vision Session"に登壇させていただいた。長年、敬慕する林英恵さんと石川善樹さんとともに。
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勇躍たる歯科医師と歯科衛生士の皆さんが集うこのコミュニティはすごい。
700名超の方々が、”超”未来志向で、歯科の新しい価値を創る、歯科の越境を試みる、そして同時多発的に新たなアクションを持ち場で起こす、そんなエネルギーに満ちている。
昨年の京都会合に続き、そのピュアな熱気に感銘を受けました。
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今年のセッションでは、ハーバード博士の林英恵さんから、「パブリックヘルス」の根本から。
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医療は「原則1対1」「体の中にアプローチする」「診断して白黒つける」世界観。
それに対し、パブリックヘルスは、
「1対大衆」「体の外にアプローチする」「グラデーションで見る」世界観。
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コロナ禍で改めて認識された主体的な”心身の健康”を築くには、思いつきではない根拠に基づくパブリックヘルス、個人の行動変容の裏側を探求することが不可欠になる。
”みんなの健康”をどう作るか、複合的な社会的・経済的要因をどう組み合わせて、行動の変化に結びつけていくか。
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僕もずっと主張してきた「病気になってからお金をかけるトラブルシューティング型医療から、病気になる前にお金をかける投資型医療へ」という考え方の実現にも、パブリックヘルスがキモ。家庭医や個人の主体的な心身マネジメントを組み合わせて、もっともっと、医療の価値が深まり、豊かになっていく未来を描きたい。
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次に、行動科学で著名な石川良樹さんからは、フィンランドの事例をもとに、みんなの行動を変容を正しく起こすための「ミッション」→「戦略」→「戦術」の具体的方法論が提案された。
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印象深かったのは、フィンランドの国民病であった心臓病と闘うため、彼の国では、「27歳の若者」を施策の責任者に任じたというエピソード。
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なぜなら、①心臓病との闘いには長期にわたってコミットするリーダーが必要なこと、②現行のアプローチや過去のしがらみに囚われない人材が必要なこと、を政府が分かっていたから。
この柔軟性と実践性の高さに、フィンランドの強さを思う。日本でも、この発想は大事だ。
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みんなの行動を”正しく”導いていくには、徹底した情報提供はもとより、プライドや愛郷心といった「感情」を揺さぶること、家族や地元のリーダーの支援を拡げること、民間企業とのコラボ、そして、地域の健康を守る職種=ここでは「保健師」のブランディングを的確に行うこと、それらのステップは大いに学びとなった。
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今回のコロナ禍でも、「口は命のライフライン」であることを皆なが再認識した。
口の健康は、糖尿病や認知症の発症とも密接に関係ある。
まさに全身の羅針盤のような役割を担っている「歯と口」。
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「口」の健康は、孤独の歯止めになると思うし、その悪化は「格差」として表れる。そう考えている。
イノベーションが、この分野で、どんどん生まれることを期待するし、応援したい。