【誰かの一部になりたい】

先日のことになりますが、友人のジャズシンガーSHIG さんがコロナを受け、オンラインライブをされるというので、ごく少人数で広々としたスタジオに。
CDも良かったけれど、生のSHIGさんは、別格の歌唱力。「力」といういうか、「色」。歌唱色だ。
まるで、CDが「絵本」なら、生歌は「飛び出す絵本」のように、迫力も驚きも奥行きもある。
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SHIGさんは昨年12月にデビューしたばかり。(ちなみに、デビュー日はNiziUと同じそうだ。)
福岡で歌を学び、福岡を中心にジャズやポップスを取り上げたライヴを精力的におこなって話題になり、ヤフオクドームで国家斉唱を担当するなど注目を集めた。
そして、世界的ジャズギタリストであるジャズギタリスト吉田次郎氏の目に留まり、デビュー。
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僕は素人だが、SHIGさんの歌の表情の広がりに驚いた。
その声の表情は、可憐さ、か弱さ、素直さ、誠実さ、豪快さ、そして、少しの恐さまで、いろとりどり。
一曲の中に、いろんな人生が埋め込まれているだ。
とても、心に響くライブだった。
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しかし、歌声以上にインパクトを受けたのは、その後の会話でのSHIGさんの言葉だった。
こんなやりとり。
「SHIGさんって、なんで、SHIGという名前なんですか?どんな意味なんですか?」
「えーっと、深い意味はないんです。」
「え?じゃあ、どうしてSHIGという名前に?」
「シンガーとしての名前、できるだけ無機質な名前にしたかっただけなんです。」
「無機質な名前?」
「そう、無機質な名前。何か意図することもなく、逆に言えば、縛られることもない名前。」
「そうなんですか…」
「私は、歌うことで、誰かの一部になりたいんです。」
「え?誰かの一部に?」
「はい、私の歌が、誰かの人生の一部、記憶の一部になること。だから、名前も無機質に。そして歌も、なるべく古い懐かしい歌を歌うようにしているんです。」
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確かに。
SHIGさんのデビューアルバムには、『逢いたくて逢いたくて』『人形の家』『アカシアの雨がやむとき』・・・なんて、昭和ど真ん中の曲が並び、それをjazzyに歌い上げている。
https://www.110107.com/s/oto/page/SHIG?ima=0000&oto=ROBO004
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僕は素人だが、アーティスト、ミュージシャンの方というのは、
「何かを伝えたい」「自分の思いを表現したい」という営みをされているのだと理解していた。
いわば、内なるものを、外に放出する活動。ベクトルは内→外へ。
そう思い込んでいた。
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しかし、SHIGさんは違う。
「誰かの一部になりたい。」と。
外から内へ。誰かの記憶や人生や生活のピースを埋めるように、自分の歌声を使ってほしい。
そんな、純粋に利他的、というか、聴く人に寄り添う、というか、自己犠牲的なスタンスの歌声。
声を出しながら、誰かの中に入っていく。
そんなアンビバレンスを形にしようとするSHIGさん。
そのポリシーと、人への想いと、抜群の技量。
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何か、スピリチュアルな力さえ感じるような、歌声でした。
皆さんもぜひ、聴いてみてください。
これからも応援していきます。

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