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意匠法改正でデザイナーは何に気をつけたらいいのか

2020年4月に、意匠権に関わる法律「意匠法」が改正されます。

今回の意匠法改正では、UIに関わる部分が大きく変更されます。いろいろ学ぶ機会がありインプットしていく中で、特にWebやスマホアプリに関わるデザイナーに意匠法を知る、または調べるキッカケになればと思ったのと少しの願いを込めて書きました。


何が変わるのか

詳しくは特許庁のサイトで自ら確認して頂きたいが、UIに関わる点では、「画像」が保護対象に加わっています。画像という単語には違和感がありますが、この「画像」は、ソフトウェアやアプリ上のネットワークを通じて利用の都度提供される画像物品以外の場所にに投影される画像が対象となります。WebやスマホアプリのUIからプロジェクターなどで投影されるUIも対象になったことになります。

また、「画像」には、操作画像表示画像の2つが対象となります。操作画像は「操作の用に供される画像」で、検索や登録などの入力フォームやボタンなどのインプットUIとなり、表示画像は「機能を発揮した結果として表示される画像」で、検索結果の情報表示や測定結果のグラフなどのアウトプットのUIであるとされています。

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アメリカでは、今回の新意匠法に近い内容であると聞いています。

日本の新意匠法と近いアメリカではどうなっている?

新意匠法と同じ状況のアメリカでは、GoogleのMaterial DesignやAppleのHuman Interface Guideline、MicrosoftのFluent Design SystemなどPCやスマートフォンのOSを持つ3社の有名なデザインガイドラインが公開されていています。彼らのデザインガイドラインは、自分たちのブランディングだけでなく、デザイナーやエンジニアに広く利用してもらい、自社のプラットフォームにのるアプリたちのクオリティを一定以上に保つ役割やWeb上でのデファクトスタンダードを取りたいのではないか。と考えることができます。

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しかし、GAFMAだけでなくAirbnbAtlassianMailChimpMixpanelMongoDBZendeskなど多くの企業がデザインガイドラインを作り公開しています。(こちらのサイトにまとめられてます)
これらの企業は、自社のブランディングとして公開する意図はわかりますが、OSやデバイスの主導権争いはしていないので、デファクトスタンダードを取るのを意識しているのか。というと、ちょっと違うのではないかと思います。ブランディングやデザインのデファクトスタンダードの為だけに公開しているものなのでしょうか?

自分たちの意匠権を主張し守る為に公知にしているのではないか。と考えてみると納得がいきました。

公知とは

既に公開されている意匠や世の中に存在する意匠のことを公知の意匠といいます。意匠権は、この公知の意匠と同一または類似していると、新規性が失われていると判断され登録ができません。たとえ、自ら制作した独自の意匠であったとしても、公開したかどうかがポイントになってくるのです。

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なので、アメリカのいくつかの企業では、資産であるデザインを公開し公知にすることで意匠権を登録できないようにして守る戦略なのではと思ったのです。

(ちなみに、今回の新意匠法の施行前は、既に世の中で使われているUIたちは公知となりますが、公開日等記録が必要だったりするので、詳細はお近くの弁理士さんにご相談ください。)

全体意匠と部分意匠

全体意匠とは「物品全体を対象」とした意匠であり、部分意匠とは「物品の一部分を対象」とした意匠になります。その名の通りですね。ただ気になるのが部分意匠はどの粒度になるのか。

意匠をAtomic Designで捉えてみる

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ボタンやアイコンなどデザインのトンマナに関心を持つAtom、そのAtomが2つ以上組み合わせ行動を阻害しない機能単位のMolecules、このあたりの粒度で意匠権が登録されると、汎用的過ぎて使えるものがなくなってしまい、作り辛くなっていくのではないか。と心配です。

部分意匠の集合体という扱いで、デザインシステムやガイドラインの意匠権が登録されたら、意匠権侵害の捉え方によりますが、守備範囲が広すぎて、これもまた、作り辛くなっていく感じがしてたまらないな…と思いました。

体験を守りたい場合はどうする?
プロダクトが生み出す体験は、機能とUIの複合になるので、機能の集合体であるシステムは特許権を、UIの集合体は意匠権を取得することで両面から守ることができるので、意匠も特許も両方見据える必要がありますね。

施行されたら意匠権の出願が殺到し陣取り合戦になる?

では、施行後はどうなるのでしょうか?4月を迎えないと実際はわからないですが、空想してみました。

意匠権が取得できれば、自分たちの意匠を競合から守る。ことになりますから、マネされたくない意匠はひとまず出願しよう。とまずは守りに入るのでは。と思いました。もし意匠権が取れたら、その意匠範囲は競合他社はデザインできなくなりますので、できなくする為に取得するというような陣取り合戦も考えられてしまいます。

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デザイン負債にもなりえる?

しかし、スタートアップなど事業のスピードが大事な企業にとっては出願は難易度が高くなります。なぜなら意匠権を取得するには新規性が必要な為、アプリやサービスをリリースする前に登録する必要があるからです。これでは出願〜審査〜登録されるまでリリースできず、時間が貴重なスタートアップには、取得すること自体がリスクなのではないか。と思います。

スタートアップや中小企業からするとマネされるのもリスクがあると思うのですが、WebやiOS・Androidアプリの場合、無理にオリジナルを考えなくていいのではないでしょうか。それは、些末なオリジナリティは手間が増えたり身動きが取りづらくなるリスクや知らない間に侵害していて損害賠償に発展といったリスク、これらデザイン負債が追加されることになるのではないでしょうか。

深津さんもこう書かれています。

スタートアップがリソースを注力すべきところは、生活やビジネスモデルや業界を再編するところです。そこ以外のパートは、業界標準があれば、すなおに業界標準に寄せるのがオススメです。

Webやスマホアプリに関わるなら、やはりGoogleやAppleのガイドラインは大事ですし偉大ですね!ガイドライン通りなら侵害することもないですし。
(過去の損害賠償額を調べてみると巨額なので侵害しないようにするのも大事ですね)

とはいえ、守られるべき意匠もありますので、本当に必要なものか。今一度、検討しながら適切に出願されることを願っています。

デザイン投資できる大企業はぜひオープンに

デザイナーを多く抱える大企業には、陣取り合戦するのではなく、自社の為にもデザインガイドラインやデザインシステムを公開し合い公知にし再利用され広がっていくと、日本のデザイン業界にとって良い影響を与え、デザインのリーディングカンパニーとして認知されるのではないでしょうか。TinderUIのように名称がついてUIデザイン界隈で呼ばれたらこれ以上ないですよね!

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イチデザイナーとしては、意匠権を取り合う未来は来てほしくないですし、日本全体の開発のスピードが落ちるようなことは避けてほしいと思います。日本のUIデザインの未来の為にもGoogle、Apple、Microsoftのようにオープンに・公知にして欲しいと思います。

(出願が殺到すると特許庁がパンクする可能性があるので、出願は適切なものを計画的に。)


まだまだ学び中なので、詳しい方がいたらぜひnoteに書いてください。

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